ご紹介書籍
『みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史』史上最大のITプロジェクト「3度目の正直」
著者:日経コンピュータ、山端 宏実、岡部一詩、中田敦、大和田尚孝、谷島宣之
出版社:日経BP
IT業界に身を置くものであれば、みずほ銀行の勘定系システムの刷新・統合の話を聞いたことがあるでしょう。
19年間、35万人月、ピーク時には約8000人が参加したとも言われる巨大なシステム開発には、日本を代表するシステム開発大手4社を中心に約1000社が関わったとのこと。
ご自身または身近に関係者の方、関係企業の方もいらっしゃるかもしれません。
MINORIと命名されたこの新勘定系基幹システムは関係者の奮闘にも関わらずなかなか完成せず、完成まで400年と言われたスペインのサグラダ・ファミリア教会にちなみ「IT業界のサグラダ・ファミリア」と言われるほどになっていました。
(実際のサグラダ・ファミリア教会は3Dプリンタなどの技術革新により当初の予定より早く2026年頃に完成の予定)
本書では、困難を極めるシステムの刷新・統合、大規模障害がなぜ起きてしまったのか、現場の人たちは、何を考え、どう行動し、どう立て直してきたのかを仔細に取材した内容がまとめられています。
切り口としては次のような内容です。
- 組織のしがらみと新システムの全貌
- 参加ベンダー1000社におけるプロジェクト管理
- 1年がかりのシステム移行の準備と実行
- 重なってしまった30の不手際と再発防止策
みずほ銀行の事例に限らず、20年以上稼働している基幹系システムは老朽化によるリスクが急に高まると言われています。
世界的に、また日本でも1999年頃「2000年問題」に対応し数多くの基幹システムが刷新されました。
経済産業省はこれらのリスクを「2025年の壁」とし、複雑化・老朽化・ブラックボックスとなった既存システムが残存した場合の経済損失が心配されています。
本書で紹介されている数々の苦難は、人ごとではなく「2025年の壁」を迎える私たちへの警告です。
その壁を乗り越えるためのヒントとして本書をとらえると、「2025年の壁」も前向きな気持ちで対処できるかもしれません。
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