1.システム化も製品と同じ
サプライチェーンシステム化の成功例、有用性の話はあちらこちらで語られていますし、ここでは少し違った観点からシステム化の話をしましょう。
読者の皆さんは「イノベーションのジレンマ」という本をご存知でしょうか?私が他人に進める、ほぼ唯一の経営書です。メッセージは簡単。「お客様の要望を聞きすぎるな」
私が学生だった1980年代、ハードディスクなるものが出たばかりで、フロッピーディスクに比較して「膨大な」記憶量を誇っていました。直径は5インチで記憶容量は7MBくらいだったと思います。学生ではとても手が出ない価格でした。これが瞬く間に3.5インチになり2.5インチになり、容量は6桁も増えています。今では8TBがアキバの安売りでは1万円です。
8インチの改良にまい進した企業は5インチに乗り遅れて倒産、5インチの改良にまい進した企業は3.5インチに乗り遅れて倒産、彼は既存の製品にこだわりすぎると次世代が見えなくなると警告しました。
もっとも3.5インチの改良にまい進した企業は違う理由で生き残りましたが、2.5インチは逆にかなりの部分がSSDにとってかわられました。
売れている時は往々にして改善=売り上げ増と勘違いしてしまうものです。
2.適材適所
ソフトウエアを構築するのも似ている場所があります。改善=高機能化と勘違いし、お客様の言うことを聞きすぎるとかえって機能的に問題が出るということです。ハードもソフトも想定された使い方というものがあります。だからそれを超えてしまうと無理が来る。それに適した別の製品が一挙に入れ替わってしまうのです。サプライチェーンシステム構築であれもこれも、と無理に機能を詰め込むと結局使い勝手が悪い上に「これ、誰が使うんだ?」という話が決まってプロジェクト終了間際に出てきます。
毎日、毎週使うものはそこまで多機能でなくてもよい代わりに使い勝手を要求されます。だからパッケージソフトに「少し」追加開発して改善するのはアリでしょう。しかしながら、1年に1回しか使わないものを毎日運用する既製品に組み込むことは制約が多すぎてかえって不便になるケースが多いと感じます。特に機械学習系はR、Pythonなど多彩なライブラリがあるので、自由度を重視して外部で自由に作った方が使い勝手の良いものができるケースが多いと思います。せっかく高いシステムを買うのだから、といろいろ作り込もうとして自滅するプロジェクトを何度も見てきました。パッケージソフトは設計当初想定された範囲でしか使えないものです。
3.パッケージソフトは何も語らない
パッケージソフトはあくまでも汎用品です。標準的とソフトウエアメーカが考えたシナリオに沿って作られていますが、多様性を持たせるため選択肢がいろいろあります。
手作業を前提としたお客様の業務を入れた担当者が、たまたま知っている機能だけでなんとかしようとして業務が回らなくなり、作成に制約の多いアドオン機能で無理に機能追加して、管理が複雑になり運用がまわらなくなる、もしくはお客様の業務をシステム機能に無いから、という理由だけで削って実務に支障をきたして運用できなくなる、という経緯をたどったプロジェクトをいくつか見てきました。前者は冷凍輸送が必要だからと軽トラックに発電機と冷凍庫を積んで最大積載量を超えてしまうような話であり、後者は冷凍輸送は出来ないから溶けても我慢するのがグローバル標準だと主張するような話です。
パッケージに合わせればグローバル標準などという話は20年くらい前にはありましたが、今そんな時代遅れのことを言ったら嘲笑されるだけでしょう。
4.たかがパッケージ、されどパッケージ
パッケージソフトはツールです。業務標準ではありません。機能は時間がたてば時代遅れになります。
手持ちの機能を組み合わせてどうやって効果を素早く出すかは導入構想を作るコンサルタントの腕次第です。先を見据え、何が最適かを一歩下がって見ることはシステム導入においても重要なことです。
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資料では、お客様にインタビューした以下のような内容を掲載しています。
- 統合生産システム構築の背景/目的
- BOMソリューションとしてSPBOMを選んだ理由
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コラム:サプライチェーンよもやま話
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