コラム:サプライチェーンよもやま話

「市場動向の予測」で需要予測?

1.需要予測の前提が市場動向

私は某コンサル会社に在籍していたことがあります。私の後輩のコンサルタントは優秀で、新聞から「市場動向」についてコメントを求められていました。「需要予測は出来ないと言っていたではないか」、と言われる人もいますが、コンサルタントが求められるのはその前段階の動向の予測であり、ある特定の製品の特定のモデルの数量の予測ではありません。しかし需要予測を行う上で市場動向の把握は必須条件となります。

2.誰が市場動向を決めるか?

市場動向は仮定と仮説の塊みたいなものです。だから外れることも多い。

ここ近年で見事に外したのが車の電動化の話でしょう。
現在の発電能力とその伸びからすれば全電動化がもう少し先だったはずです。

安定した電源がないとEVは成立しませんが、論理よりも政治で押し切ったのがEUです。10年前は日本がシェアを持つハイブリッドなんかダメだ、ディーゼルこそ環境にやさしいとか言っていたのですが、2015年にインチキがばれて、今度はハイブリッドなんかダメだ、電動化だとやりだしました。

そのままのんびり電動化ができると思っていた欧州自動車メーカを背中から撃ったのがEUのフォンデアライエン氏です。化石燃料の自動車は2035年で全面禁止、全部電動化するとか言い出した。
ここにハイブリッド車もちゃっかり混ぜてきましたが、発電に使用しているLNGが少し値上がりしたくらいで大騒ぎするほど化石燃料にどっぷりつかっている国が何を言っているのか、とも思います。
そういえばLNGは良い化石燃料だからいいのだとか言っていた人もいたような。

3.誰が市場動向を動かすか?

結局発電能力に不安を抱えたまま日本でもEV化を進めることになったわけですが、日本でEV化を進める上の課題は消費者の立場から見れば明確です。電気代、車両(電池)の価格、充電時間の短縮と充電設備の拡充が特に重要でしょう。車両本体価格は補助金で安くなっていますがそれでも高い。さらに大きな問題は電気代でしょう。私のプリウスは20km/Lくらいは走るので月に1000㎞走ったとしても50L、8000円くらいです。しかしEVを家庭用の100V電源で充電したら電気代は8000円増では済みません。ガソリン車は車体も安い、維持費も安い、爆発の危険もない、となればEVを買う合理性はありません。

かつてミニバン市場では車両価格が市場を動かしたこともあります。しかしEVはそれほど単純ではない。どの程度の補助が期待できるのか、また法整備がどこまで進むか、政治家の信念(正しいか間違ってるかはともかく)一つという側面があります。つまり、この市場動向には消費動向ではなく政治動向が大きく絡むわけです。もっともそこまで予測できる需要予測機能があったら是非ほしいところですが。

4.世の中単純計算ではうまくいかない

残念ながら現在のサプライチェーンソフトにそのような機能は無く、人間の立てた仮説に基づく再計算を迅速に行うくらいが関の山であり、分析する人の代わりになるものではありません。
「EVは環境問題なのだから特別だ。そんなものを例に出すのはおかしい」、という方もおられるでしょうが、政治だけが需要に影響を与えているわけではありません。
少し前になりますが、リーマンショックを記憶されている方も多いと思います。これは数字からは予測できませんでした。ご存知の方も多いと思いますが、予測できないように細工してあったからです。しかし内部事情を知っている人は常に警鐘を鳴らし続けていました。それを聞くか聞かないかは人間が判断するしかないのです。

近いところでは2019年頭にコロナ騒ぎを予測した人はいませんでした。最初に中国で患者が見つかったのは同年11月だったので当然です。このコロナの影響については次回にしましょう。

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