SCMKPI 活用の糸口

連載コラム:SCM KPI活用の糸口

第3講:モノ(在庫)

KPIの女王 モノ

金ときたら次はモノです。モノの動きはお金にくらべて状況変化に対するレスポンスがいいのは事実で、この動きで経営判断される方は多いと思います。今回は、モノの代表格である在庫の話から行きましょう。

在庫の測定方法

在庫日数というものがあります。在庫として登録されている量を1日の出荷量で割るのですが、これを見て何をするのか、が問題。一番やらかしてしまうのが、「平均在庫日数」。
読者の方はもうお分かりと思いますが、例えば私がかつて在籍していた自動車部品メーカーとかだと今、売れまくっている車の部品は作る先から出ていきます。しかし、類似品とかを考えるとある程度の予備を持つ必要があります。モノによりますが1-2日以下で回せるケースもあります。しかし、1か月に10個しか出ない部品はどうでしょうか?1日あたり0.5個と計算したあなた、それはNGです。この10個、まとめて出ることもあるのです。特に補給品と言われるメンテナンス部品は出るときは季節によっては重なるケースがあります。日本の車の場合、右のヘッドライトが固まってでることがあるとヘッドライトのメーカーの方に聞きました。理由は、推測してみてください。

しかも金型モノだったりすると5個作る、などという器用なことができず、作ると100個くらい作って保管します。在庫10か月分。ロングテールと言われるように品目数からするとこの手の部品が大半を占めることもあり、それを単純に平均するとすごいことになります。では総量金額ベースでやればよいではないか、という方もいますが、数字は正確ですが、これを見て何をするのだろうか、という疑問がわきます。平均化されてしまうと異常になったときには手遅れです。

では?

では、どうするのか?まずはこの在庫のKPIは誰がユーザなのか?に着目することが重要です。経営だとすれば、流動品のトレンドと異常な減りが出る非流動品を見ていれば大丈夫でしょう。製造部門のトップの場合はこれでは不足です。モノを作り、または購入し、購入品を加工する、このあたりは計画実績の比較が必要になります。管理要素は計画の精度、実績精度、不良の発生、購入品納期遅れ、製造工程の遅れあたりを分解して各々をKPI化することが必要となります。

では、その良い悪いを判断するためのKPIはどうするか。ある意味単純に考えた方がいいと思います。現象として現れるのは「在庫欠品」か「在庫過剰」でしょう。このアラートを出すのは簡単ですが、問題はそこからどの要素が異常だったかを明確に(できれば自動的に)出せるようにすることです。全員に知らしめるのはこの「異常」です。90年代前半のF1では回転計が運転席についていました。それが後半になるとランプだけというのも多くなりました。つまりはシフトアップとシフトダウンのタイミングさえわかればいい=同じギアではこれ以上走れないという「警告ランプ」さえあれば「メーター」はいらない。だから凝ったGUIでキレイなグラフを出すよりも「警告ランプ」さえあれば実は事足りるわけです。システム上の「警告ランプ」からドリルダウンして、とやりたいところですが、私はあまりお勧めしません。上記管理要素のどこを見ればいいかさえわかれば、そこに行けばいいのではないでしょうか? 無理やりグラフィカルにしてかっこよくして、とやると使い勝手が逆に悪くなりますし。生産計画の精度は生産管理システム見れば済むのではないか、と思います。

ここでも元データ

この手の話でよく引っかかる点は「実績データが不正確」という現実、および、「計画データの連携タイムラグ」という問題がよく発生します。生産量をIoTで自動記録、ERPと自動連係とか言われる方も多いですが、運用は慎重にしないと傷を広げます。現場の方はご存知でしょうけど、ショット数=生産数ではありません。また完成数もまとめて入れればいいとか言って1日忘れてしまうというような実例もありました。計画に至っては1日に2回まで修正を許可している工場も実際にあります。このあたりのデータのとり方も工夫しないといくらモノのKPIを作っても精度が出ず、誰も使わなくなります。

在庫はモノの要素の一つ

在庫、と一言で言っても結構いろいろな管理要素があります。このあたりの設計を端折るとたいてい後でもめますので誰が、何のために使う指標なのかを明確にしてから数字を出すことが重要です。

ここでは在庫という静的な情報の話をしてきましたが、これだけではモノは語れません。次回は動的な情報についての管理方法についてお話ししましょう。


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