目的は?
お金やモノだけでなく「ヒト」、つまり担当者、部門に対するKPIは重要だと私は考えます。モラル、スキルで生産性が倍以上違うこと、改善を怠るとどんどん悪化していくことなど。
誤解なきよう明言しますが、ヒトを締め付けるためのKPIではありません。「無理なく」能率を上げるためのKPIです。同じような作業でも作業効率に大きな差が出ることがあります。ヒトの管理、というとすぐにスキルをデータベース化して評価システムを作ってというお客様が多いのですが、もちろんそれを無駄とは言いませんが、私の経験上では生産性はシステム、労働環境に起因することのほうが大きいと思います。
何を見る?
サプライチェーンに絡めていえば、まずは入出庫の精度です。日本ではあまりずれて困ることはありませんが、海外では日常茶飯事。ある英国の工場では月に1度、工程を完全に止めて棚卸をやらないといけないというような状態でした。その他、よくある話が品質基準を満たさない製品の出荷。異品出荷もあります。部品メーカーの場合、お客様への調整依頼も情報としては有用です。これを海外工場なのだから仕方ない、で片づけてしまうと後々大変なことになります。
ヒトをKPI化するのは難しい
例えば、実績記録が不正確で工場長が怒っている場合を考えてください。誰が間違えたか、まず特定できるかどうか?「うちは数字の後ろにサインさせるということで誰が書いたかわかるようにしている」と考えている方も多いのですが、それは記録がされている場合の話。例えば100個完成入庫、という情報を10個と間違える、などというケースは逆に珍しいのですが、そもそも記録が無い=抜けているというケースもままあります。では担当者がサボったのか、というと、実はそれも理由があるケースが多い。同僚をデートに誘って気もそぞろ、定時になってさっさと片づけて帰ろうとしたら、ちょうど帳票が来た(定時後だから明日入れればいいや)、というケースもあるでしょうし、データそのものが来なくて記録できなかった、とか、人によって入れる情報の定義が違っている。つまりは記録すべき実績とは何かを期間従業員に教えてなくて、目の前のデータを入力したら、実はそれはロット区切りで入れる決まりだったとか。
これらの場合、実は誰も間違いをおかしていません。するとシステム上、在庫が足らなくなり、生産計画が追加され、調達指示が追加で出る、で倉庫に行ってびっくり、となります。検査も同様で、手直しに回っているものを実績として入れてしまっていたケースもありました。
これらの場合、実は誰も間違いをおかしていません。するとシステム上、在庫が足らなくなり、生産計画が追加され、調達指示が追加で出る、で倉庫に行ってびっくり、となります。検査も同様で、手直しに回っているものを実績として入れてしまっていたケースもありました。
そのKPI、何のため?
問題を分析するためには工場、調達、倉庫、物流などにおいて「何が起きているか=現象」を把握する必要があります。現象は問題でも課題でもありません。間違いが多い、工数がかかっているというのは現象です。なぜそれが起きるかが通常の場合、問題とされます。教育ができていない、基準が守られていないなどなど。しかしさらに進めて「なぜその問題が起きるのか?」という課題まで掘り下げないと対策は取れません。よく、工数がかかっている、と聞いたら、Action Planに「工数を下げる」と書く間抜けなコンサルタントがいますし、そこまでひどくなくても「基準が守られていない」ことが問題だからAction Planは「基準を守る」とか書いてしまう人もいます。
KPIは責任追及の道具ではない
KPIは複合的な問題をそれだけで把握するようなマジックアイテムではありません。Intelligenceとして扱うべきものか、Informationとして扱うべきものなのか、もしくは分析に必要なDataなのか? 特にヒトのKPIを設計するときはその目的を見誤るとKPIが一人歩きし、わけのわからない責任の押し付け合いになるのでご注意を。
Maestro(旧称:RapidResponse)
S&OP分野でのグローバルリーダーに位置づけられるクラウドサービス
需給の急激な変動に際して、異常を瞬時にアラートし、迅速な意思決定・対応を支援するSCM、S&OPソリューションです。
執筆者紹介
連載コラム:SCM KPI活用の糸口
SCMのKPIを考える際のエッセンス、よくある落とし穴について簡単にご紹介します。貴社サプライチェーン改革のヒントがここにある(かもしれません)。
(1記事5分程度でご覧いただけます)
関連コラム
関連ソリューション
関連事例
お問い合わせ