製造業デジタルSCM変革ー成功への道筋

連載コラム:製造業デジタルSCM変革ー成功への道筋

第4講:5つのデジタルSCM変革テーマ(その2)

前講に引き続き、順に各テーマについて考察してみたいと思います。

「HumanとMachine」

人と機械には、得意な事、苦手な事、それぞれに頼った時のメリット・デメリットがあります。人は、意図の解釈・理解、ルール不明確な作業など、感性的な事を得意とします。勘や経験によって良い塩梅で作業ができ、自由度が高い反面、属人化が進むとそれが正しいのか判断できなくなり、熟練者の継承問題も発生します。さらに人が処理できる量には限界があります。
一方、機械は、数値ゴールに向けて、明確なルールに基づき、膨大なデータを処理する事を得意とします。膨大な量の画像データや音声データなどの微妙な違いの発見などができ、省力化に大きく貢献します。

図1.デジタルSCM変革テーマ「HumanとMachine」

昨今では、AIにより意思決定を機械に委ねる試みも始まっています。しかし、機械には善悪の判断や意図の解釈は難しく、機械学習により誤ったバイアスが埋め込まれる危険性もあります。
Technologyの進化に伴って機械が得意な領域は拡大していますが、如何にAIが進歩しても最後には、人が決断を下さねばならない領域が必ず残ると考えています。
SCM変革に機械による自動化を取り入れる際には、これらを総合的に判断し、自社にとって目指すべき自動化のレベル、現実的で最適な、役割分担と連携の度合いを、見極めることが重要です。

「占有と共有」、「Private と Public」

OEMやODMなどの垂直分業型の生産形態が多く見られるようになり、サプライチェーン・ネットワークがグローバル化し複雑になるに従って、それを構成する関係者(ステークホルダー)も増加しています。もはや1社のみで全てを賄いコントロールする事は不可能な状況となってきています。独立した法人・企業という壁によって共有できる情報やコントロール(ガバナンス)が及ぶ範囲にも限界があります。このような状況下で、サプライチェーンを構成するエコシステムをいかに連携させ透明性を高めていくかは重要なチャレンジテーマとなっています。

図2.サプライチェーン・ネットワーク全体の可視化とコントロール

昨今では輸送中の状況をタイムリーに情報公開・共有化するプラットフォームの構築が進み、気象情報などサプライチェーン上で考慮すべきイベント情報の活用もできるようになってきました。これらを活用してエンドツーエンドーのサプライチェーン・ネットワークを俯瞰的にモニターし、発生した状況に合わせて素早く計画を変更して実行に移す、コントロールタワーの機能の重要性が増しています。
エコシステムの中でセキュリティやトレーサビリティ(追跡可能性)をどのように確保していくか益々対応が必要になっています。

「生産性と持続可能性」

長年、製造業は生産性の向上と効率性を追求して様々な無駄を排除してきました。もちろんこれからもその取り組みは企業活動の重要テーマです。しかし、近年の様々なリスク顕在化によって、サステナビリティ(持続可能性)も企業活動にとって最重要テーマの一つとなってきました。効率性を重視して集中・単一化を必要以上に進めるとそれに相反して障害への耐性が弱くなります。気候変動に伴う災害や突発的な事故への耐用性を高めるために、どこまで冗長性を持たせ、分散させて、回復力、持続力を維持するのか、そのようなSCM設計が非常に重要となります。近年では、環境への配慮をしている企業イメージが製品購入時の選択ポイントとなっています。サプライチェーンにおいても、数量、金額、納期回答率、リソース稼働率などの従来の管理指標に加えて、CO2排出量などの新しい管理指標の重要性が増しています。

今回はここまでとし、次回最終講は、デジタルSCM変革のために強化すべき要素とアプローチについて考えてみたいと思います。


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連載コラム:製造業デジタルSCM変革ー成功への道筋

不確実性、複雑性、不安定さが増し常態化している昨今、製造業ではデジタルを活用したサプライチェーン改革の必要性が高まっています。
本コラムでは、これまでのSCM変革の歩みを振り返り、製造業DXにおけるSCM領域のテーマ、デジタルSCM変革を成功させる為のポイントについて解説いたします。

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