製造業デジタルSCM変革ー成功への道筋

連載コラム:製造業デジタルSCM変革ー成功への道筋

第1講:DXはバズワードなのか?

~ビジネスモデル変革へと向かう2つの旅程~

近年の気候変動、COVID-19、米中対立激化やウクライナ侵攻などの地政学的リスクの高まりにより、物流網の寸断や半導体不足を代表とする製造業のサプライチェーンの混乱がさらに悪化しました。
このように不確実性、複雑性、不安定さが増し常態化している昨今、製造業ではデジタルを活用したサプライチェーン改革の必要性が高まっています。

この度、「製造業デジタルSCM変革-成功への道筋」と題しまして、これまでのSCM変革の歩みを振り返り、製造業DXにおけるSCM領域のテーマ、デジタルSCM変革を成功させる為のポイントについて、5回に渡り寄稿させていただきたいと思います。少しでも皆様のビジネス変革にとってお役に立てれば幸甚です。

XDがDXの価値を生む

この数年、沢山の企業がDXを経営戦略とし、その実現を目指しています。□Xという造語にその企業の独自の解釈や想いを込めた活動を行っている企業も見られます。
しかし、DXという言葉が先行し、「デジタルテクノロジーで新たなビジネスを創造する」という本来の目的に向けた活動となっていない企業も少なからず存在しているように感じます。
そのような企業は、DXのD:デジタルにとらわれ、システム化やツール導入に重きを置き、X:トランスフォーメーションとして何を変革のテーマ・目的とするのかが明確になっていないように思われます。

DXをバズワードとしないためには、X:トランスフォーメーションのためにD:デジタルを活用するXD(DXの順序が逆)という意識が必要なのではないでしょうか。
今回の第1稿では、まず、DXの必要性・価値について再考してみたいと思います。

DXへの期待

DX、すなわちデジタルトランスフォーメーションは、スウェーデンのエリック・ストルターマン氏が2004年に提唱した「ITの浸透が、人々の生活を、あらゆる面で、より良い方向に変化させる」という概念が始まりとされています。
製造業では、2011年のドイツ政府が推進を開始した、Industry4.0 を契機に注目度が高まり、その後、アメリカや日本の他、各国でも、ものづくり改革が積極的に推進されてきました。それから10年あまりが経過していますが、古くから自動化を推進してきた製造業と、ITの相性が良かったこともあり、様々な先進的な事例が登場してきています。

日本でも2018年に経済産業省から出されたDXレポートにより、DXという言葉が一般にも広く認知されるようになりました。

それから数年、COVID-19や地政学上の不安定化、毎年のように大きな被害をもたらす環境変化によって、DXの必要性や期待が、さらに高まっています。
DXの意味も、当初の「2025年の崖」という危機のイメージから、2020年のDXレポート2にあるように、「デジタル企業への変革」といった、よりチャレンジを意識したものになっています。さらに、各国においては、次世代Industry4.0(Next I4.0 =インダストリー5.0)の議論が活発化しています。「持続可能性」や「環境」の視点が盛り込まれているのが特徴で、これらのテーマは今後の大きな変革ドライバーとなる事が予想されています。

図1.デジタル変革(DX)がCOVID-19で加速

各国の最近の取り組み

各国の最近の取り組みをもう少し具体的に見てみましょう。

ドイツでは、2019年にIndustry 4.0推進機関である「Platform Industrie 4.0」が「2030 Vision for Industrie 4.0」を発表し、米国も2021年にCESMII(the Smart Manufacturing Institute)がSustainable Manufacturing(環境・気候変動に対応した持続可能な製造)領域で、ドイツのPlatform Industry 4.0との連携を発表しました。EUは、2021年に欧州成長戦略として「Digital×Green」によって、2050年までに産業のカーボンニュートラル実現を目指す事を宣言し、「インダストリー5.0(Industry 5.0)」を提唱しました。
これは、「サステナビリティ」「人間中心(ヒューマンセントリック)」「レジリエンス」の持続可能な産業コンセプトとなっています。この欧州成長戦略の先行コンセプトとして、日本の「Society5.0(2016)」が挙げられ、その先見性が改めて評価されましたが、コンセプトの実現において日本が先行しているかというと残念ながらそうとは言い切れません。今後の加速を期待したいと思います。

製造業の周りはリスクだらけ

近年では、地政学的、自然災害など、企業を取り巻く様々なリスクが顕在化し、製造業においても、予期せぬ製造拠点の閉鎖や、サプライチェーンの分断への対応が頻発するようになってきました。
もはや、このような事態は特別なものではなく、不確実性を前提とした、ニューノーマル 時代に対応した、強靭で柔軟性の高い、持続可能な、サプライチェーンの構築が必要となっています。

今回はここまでとし、次回、SCMチャレンジの変遷、デジタルSCM変革のテーマについて考えてみたいと思います。

図2.求められるNew Normalに対応したSCM

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執筆者紹介

連載コラム:製造業デジタルSCM変革ー成功への道筋

不確実性、複雑性、不安定さが増し常態化している昨今、製造業ではデジタルを活用したサプライチェーン改革の必要性が高まっています。
本コラムでは、これまでのSCM変革の歩みを振り返り、製造業DXにおけるSCM領域のテーマ、デジタルSCM変革を成功させる為のポイントについて解説いたします。

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