製造業デジタルSCM変革ー成功への道筋

連載コラム:製造業デジタルSCM変革ー成功への道筋

第3講:5つのデジタルSCM変革テーマ(その1)

前講では、デジタルSCM変革における5つのDXテーマを紹介しました。今回は、順に各テーマについて考察してみたいと思います。

「RealとVirtual」

インターネット、モバイル、IoTなどITテクノロジーの進化に伴って、SCMの現場で発生する多岐に渡る膨大なデータがタイムリーに取得できるようになると、リアルSCMの世界がバーチャル(デジタル)SCMの世界に投影・表現できるようになります。
その結果、リアルで起こりえる事象をバーチャルの世界で再現、検証でき、さらには将来起こりえる事の予測も可能となります。(※図1)

図1.デジタルSCM変革テーマ「Real と Virtual」

このような「現実世界(フィジカル)の情報を、デジタルデータとして仮想空間(サイバー)に取り込み、その変化を感知するプラットフォーム」の事を、「サイバー・フィジカル・システム:CPS」と呼びます。しかし、単にデータを集めるCPSを構築しただけでは、価値は生まれません。デジタルSCM変革のためには、CPSを土台として確固たる機能構造の構築が重要となります。(※図2)
デジタルSCMは、4階層の機能で構成されます。先ほどのサイバー・フィジカル・システム:CPSを土台として、第二層が、デジタル・サプライチェーン・ツイン、第三層が、デジタル・サプライチェーン・プランニング、最上位階層が、全体を俯瞰的に見える化、コントロールする機能です。

図2.デジタルSCM構造

「サイバー・フィジカル・システム」と「デジタル・サプライチェーン・ツイン」を、同義語と定義するケースもあるようですが、ここでは異なるものとして定義したいと思います。
「サイバー・フィジカル・システム」は、「現実世界(フィジカル)の情報を、デジタルデータとして仮想空間(サイバー)に取り込み、その変化を感知するプラットフォーム」の事、「デジタル・サプライチェーン・ツイン」は、「現実世界のプラットフォームのデータの変化と同調して変化する、サイバー空間に再現された“双子”モデル」の事と定義しています。「デジタル・サプライチェーン・プランニング」は、そのデジタル・ツインをベースとしたSCM計画機能を指します。

「LocalとGlobal」

販売網・生産拠点・調達先のグロバル化に伴って、サプライチェーン・ネットワークは全世界に跨る複雑に絡み合ったものとなりました。
これに対し、一時期、サプライチェーン・ネットワークをよりシンプルなものにして効率化・コスト低減を図る動きが活発化しました。しかし、過度にシンプルとなったサプライチェーン・ネットワークは、世界各地で発生する自然災害や突発的事故に対して弱く、COVID 19や地政学的リスクの発生を契機にその見直し機運が高まっています。経済安全保障上の問題や為替変動によって生産の国内回帰の動きもあります。集中とリスク分散、全体最適と個別最適のハイブリットといった微妙な塩梅の経営戦略が求められる難しい時代となっています。

図3.グローバルSCMへの変革で直面する課題

刻々と変わるサプライチェーン・ネットワークの状況をタイムリーに把握して対応する事が重要となり、定期的にサプライチェーン・ネットワークそのものの見直し・再構築の検討も必要となります。

今回はここまでとし、残りのテーマについては次回に考えてみたいと思います。


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連載コラム:製造業デジタルSCM変革ー成功への道筋

不確実性、複雑性、不安定さが増し常態化している昨今、製造業ではデジタルを活用したサプライチェーン改革の必要性が高まっています。
本コラムでは、これまでのSCM変革の歩みを振り返り、製造業DXにおけるSCM領域のテーマ、デジタルSCM変革を成功させる為のポイントについて解説いたします。

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