前講では、DXの必要性・価値について再考してみました。
今回は、製造業におけるSCMチャレンジの変遷、デジタルSCM変革のテーマについて考えてみたいと思います。
SCMへの取り組みの変遷
日本におけるサプライチェーンマネジメント、SCMへの取り組みを振り返ってみましょう。
ご存じのとおり、SCMは決して新しいものではありません。
1970年代前半に、有名なゴールドラット博士のTOC理論が発表され、1980年初頭に、サプライチェーン・プランニング(SCP)導入ブームが起きました。その後、多くの製造業で、「見える化」、「見せる化」、「計画業務の短サイクル化」、「生産販売物流の一貫計画化」などを目指して様々なチャレンジが行われきました。
大きな成功を収めた企業がある一方、残念ながら、組織、情報量・質の問題や、なかなか向上しない計画精度や、処理に膨大な時間がかかるなど、様々な、壁によって、なかなか期待した成果が得られていない企業が多いのも事実なのではないでしょうか?
高まるデジタルSCM改革の機運
近年、その状況が大きく変わろうとしています。テクノロジー・イノベーションにより、コンピューターの処理速度、インターネットの普及やIoTの進展により、入手できる情報量やスピードが劇的に増加し、人と人、組織と組織の距離が近くなり、AIの活用も期待できるようになりました。「多様なデジタルサービスや、技術をつないで価値を生み出す」、デジタルSCM変革が実現できる絶好のタイミングとなっています。
デジタルSCM変革における5つのDXテーマ
デジタルSCM変革で取り組むべきDXテーマは多岐に渡ると思いますが、ここでは、下記図2にある5つのテーマについて取り上げてみたいと思います。
まず、「RealとVirtual」。現実世界と仮想世界の融合ですが、SCMでいえば、リアルなSCMネットワークをバーチャルな世界にモデルとして構築する、デジタルツインの実現です。リアルな世界で起こった変化をバーチャルな世界に取り込み、様々なシミュレーションを行って迅速に意思決定が行えるようにする。そのようなデジタルインフラの整備が必要となります。2つ目が、「LocalとGlobal」。グローバルに複雑に連携されているSCMネットワークがこのままで良いのか。一か所で発生した問題で全体に影響が出ないようにリスクを分散するにはどうしたら良いか。それぞれの企業の特性、状況に即したLocalとGlobalの関係性の再構築が必要です。3つ目に、「HumanとMachine」。近年、コンピューターができる領域が飛躍的に拡大しています。しかしそれと共に、信頼性、透明性の課題も明らかになってきました。人と機械、お互いの得意とするものをどのようにうまく分担して連携していくのか、現実的な見極めが重要です。4つ目に、「占有と共有」、「Private と Public」の問題です。全て自前でそろえるのではなく、外部パートナーの活用と連携によるエコシステムで、ビジネスを成長させていく、そういったモデルへの変換が求められています。それを支えるシステム・プラットフォームの活用も重要です。セキュリティやトレーサビリティ(追跡可能性)の確保も重要なテーマです。最後5つ目が、「生産性と持続可能性」の問題です。必要以上に効率性を重視して集中・単一化すると障害への耐性が弱くなります。どこまで冗長性を持たせ、分散させて、回復力、持続力を維持するのか、そのようなSCM設計が非常に重要となります。近年では、環境への配慮なども重要なテーマとなっています。
今回はここまでとし、次回、それぞれのテーマについてもう少し考えてみたいと思います。
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執筆者紹介
連載コラム:製造業デジタルSCM変革ー成功への道筋
不確実性、複雑性、不安定さが増し常態化している昨今、製造業ではデジタルを活用したサプライチェーン改革の必要性が高まっています。
本コラムでは、これまでのSCM変革の歩みを振り返り、製造業DXにおけるSCM領域のテーマ、デジタルSCM変革を成功させる為のポイントについて解説いたします。
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