製造業の見積改革──改善のキーとなるCPQとは?

労働力が大きく不足するとされる「2030年問題」は、製造業にとっても早急に対処すべき重要な課題です。
特に「人の勘と経験」への依存が大きな業務ほど、その影響が顕在化します。
属人性の高い業務の1つである「見積」をいかにして「標準化」し、自動化していくかについて考えてみます。

人的対応では顧客ニーズに対応できない

製品の多様化・カスタマイズ化ニーズの高まりにより、製造業での見積作成は複雑化しています。
慢性的な労働力不足が指摘される中、ベテラン営業員頼みの対応には限界がきています。
製造業の見積の現場の状況を整理します。

高まる「多様化」「カスタマイズ化」ニーズ

製造業では、従来の少品種大量生産から多品種少量生産へと、生産方式が移行しつつあります。これは、消費者ニーズの多様化や、モノが溢れる市場環境に対応するためです。
身近な例では、PCを購入する場合をイメージすると分かりやすいかもしれません。
従来は複数のモデルから、求める仕様に近いモデルを選択していました。
しかし、現在ではCPU、メモリ、ストレージ、グラフィックボードなどを、求める仕様に合わせて組み合わせて発注することが普通になっています。
このような多様化・カスタマイズ化への対応は受注生産型製造業でも同様です。
しかし、受注生産型製造業ではカスタマイズに際して生産可否を判断する技術検証が必要な場合が多く、多品種少量生産では見積コストが利益を圧迫します。

ベテラン営業員の「勘と経験」の限界

受注生産型製造業の見積作成は属人的な業務といわれてきました。
そのような中、顧客企業からは、多様化・カスタマイズ化に加え、複数見積や見積回答の迅速化も求められています。
複雑化する見積作成と回答期間の短縮を同時に実現しなければ、競合他社から受注を勝ち取ることはできません。それどころか、たとえ、ある程度の価格競争力があっても、見積回答に時間がかかることで、顧客の検討のテーブルに乗ることすらできない可能性があります。
また、労働力不足によって十分なナレッジ共有の時間が確保できないまま、ベテラン営業員が退職するケースがあります。これまで、ベテラン営業員の勘と経験に依存することで成り立っていた業務があった場合、その業務について理解している人が社内にいなくなるリスクがあります。
これらの見積の課題を解決するためには、見積の「標準化」、即ち自動化・システム化が不可欠です。

「標準化」を妨げる原因と影響

属人的な見積を自動化・システム化したいというニーズは従来からありました。
しかしなぜ、成功例が少ないのでしょうか。その原因について探っていきます。

ノウハウのブラックボックス化

見積作成が属人的業務といわれる原因は何でしょうか。
見積作成では、要件確認、技術検証、原価算出、価格設定といった各プロセスで、専門知識やノウハウが必要になります。
見積作成では組み合わせることができない部品や工程などを除外しなければならないという制約があり、要件確認の際は、その知識が必要になります。
技術検証の際は、信頼性・安全性への配慮が求められます。

たとえばさまざまなトッピングが用意されているカレー店で、すべてのトッピングを乗せると皿から溢れてしまうのは直感的にわかるかもしれません。
では、PCの場合ではどうでしょうか。ドライブベイが2基しかないPCに3台のHDDを搭載することができないことを判断するためには、事前にドライブベイの数を把握しておく必要があります。

これが受注生産型製造業になると、さらに複雑になります。

また、受注生産型製造業では、どの材料や部品を使用するのかによって、材料原価や部品原価などを合計した直接原価が異なってきます。さらに、どのような工程で製造していくかは労務費などの間接原価に影響します。これらを積算することで製造原価を算出しますが、何をどの原価に含めるか正確に判断するための知識が必要です。

以上のように、どのような仕様のときにどの部品を使うか、工数をどう見積もるかなどは担当者ごとの経験に依存する傾向にあり、ノウハウがブラックボックス化しているのが現状です。

継承されないノウハウ

ブラックボックス化した見積ノウハウですが、これまではベテランから新人へと実際の業務を通じてノウハウが継承されてきました。
しかし、2030年には、少子高齢化、超高齢化社会がさらに進み、労働力不足が拡大します。人材不足は見積分野でも同様で、ノウハウを継承する人が不足することが確実です。
さらに、ベテラン社員が退職すると、継承されていないノウハウは失われてしまいます。
受注生産型のメーカーではベテランの「見積力」は継承しなければならないノウハウの1つですが、ブラックボックス化と労働力不足を乗り越え、さらに顧客企業のニーズに対応していく必要があります。
そのために必要なのが見積の「標準化」による自動化・システム化なのです。

見積の標準化を進める手段

属人化した業務を標準化するとは、業務内容を可視化し、具体的な手順やルールを言語化・マニュアル化して、全員が同じ品質で業務を遂行できるようにすることです。
これは基幹システムなどのシステム導入の際に行われる作業です。
ここではシステム導入を前提にして、見積の標準化を実現する方法について考察します。

スクラッチかパッケージか

製造業の業務標準化では、BOM(Bill of Materials:部品表)やBOP(Bill of Process:工程表)などの基本情報の整備から始める必要があります。これは数年がかりの大規模なプロジェクトになります。
そのうえで、自社のビジネススタイルに合わせて一からシステムを構築するスクラッチか、すでに開発されているパッケージを使用するかを選択することになります。
スクラッチでは自社のスタイルに合わせたシステムを自由に構築できる一方で、メンテナンスも自社で行う必要があります。また、標準化の際に部門間の調整が必要になります。
これに対してパッケージの場合ではシステム導入期間を短縮でき、SaaSなどを利用すれば、メンテナンスの負担も最小限に抑えられます。また、自社の業務プロセスをシステムの標準機能に合わせて改革する「fit to standard」の概念を取り入れることで、スムーズに標準化を進めることも可能です。
そのパッケージの中でも、複雑な製造業の見積に特化したものが「CPQ」です。最新のCPQではAIが各プロセスをサポートし、生産性の一層の向上を実現できます。

CPQソリューションを活用する

CPQとは、「Configure(製品構成)」「Price(価格設定)」「Quote(見積書作成)」の頭文字で、製品の仕様選定から価格設定、見積書作成までの一連の営業プロセスを自動化・効率化するITツールを指します。主な機能は次のとおりです。

製品構成...顧客企業の仕様に合わせた部品や工程を組み合わせる機能です。このとき、製造不可能な組み合わせの発生を防ぎます。

価格設定...製造原価に基づき、割引ルールなども適用して、正確な価格をリアルタイムで算出する機能です。

見積書作成...正確な見積書や提案書を自動生成する機能です。

属人化された見積作成を標準化し、自動化するためにはCPQソリューションの活用が必須といえるでしょう。

CPQについては以下もご覧ください。
CPQとは「DXのためのCPQ」

「使われないシステム」にしないために

システム導入の失敗例として、「使われないシステム」問題があります。
せっかく時間とコストをかけて導入したシステムでも、ユーザーに使ってもらわなければ意味がありません。
持続可能なシステムとはどのようなシステムでしょうか。

システムは構築だけでなく、その後の運用・保守が重要

CPQソリューションに限らず、システムには構築・導入の段階と、運用・保守の段階があります。
そして「使われないシステム」になるシステムには、運用・保守の負担が大きい場合が少なくありません。
見積に必要な部品データや価格データは、常にアップデートし続ける必要があります。
組み合わせることができない部品などの「制約」も変化します。
これらの変更は、従来は担当部門から依頼を受けたIT部門が行うケースが一般的でした。
しかし、この方法ではIT部門の負担が増えるだけでなく、迅速な対応が難しいという課題もあります。
その結果、データの更新や制約の変更などへの対応が遅くなり、次第に「使われないシステム」になっていきます。

持続可能なCPQソリューションとは?

慢性的な人手不足のIT部門に頼らず、担当部門でメンテナンスできることが、「使われないシステム」に陥らないための方策です。担当部門の人的リソースでデータのアップデートができれば、IT部門の人的リソースを圧迫することもなくなり、人材不足にも対応できます。
持続可能なCPQソリューションには、担当部門でメンテナンスできる機能が不可欠といえます。
たとえば「Tacton」では、ノンプログラミングで簡単にデータベースを構築・変更できる仕組みが採用されています。
具体的には、製品・部品の仕様データのExcelファイルを読み込み、対話画面と各属性間の関係をドラッグ&ドロップで設定することが可能です。
ノンプログラミングで直感的に操作できるので、担当部門に大きな負担をかけることなく、迅速なメンテナンスを実現できます。
また、AI技術を活用したエンジンが最適案を提示するなどのユーザーをサポートする機能が搭載されています。

このようなCPQソリューションを導入することで、多様化への対応や迅速な見積回答などの顧客ニーズにも対応することが可能になります。
さらに煩雑な見積作成から解放されることで、クロスセル・アップセルなど、「営業本来の業務」に注力できる環境が整います。

Tactonについては、以下の詳細をご覧ください。
製造業に特化した次世代CPQソリューションTacton

CPQで見積の属人化を解消する

受注生産型製造業が、顧客企業のニーズと労働力不足に対応するためには、属人化した見積の改革が不可避です。
そのためにはブラックボックス化した見積ノウハウを標準化して、継承していく必要があります。
CPQソリューションは見積を標準化し、効率化・自動化を実現するソリューションで、受注生産型製造業では大きな導入効果が期待できます。
「使われないシステム」に陥らない、持続可能なCPQソリューションの導入が、受注生産型製造業における見積改革を進めるうえで重要となるでしょう。

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