少子高齢化のさらなる進行により、労働力不足をはじめとするさまざまな課題が顕在化するとされる「2030年問題」。業界問わず対応が求められる中、受注生産型製造業においても避けては通れない重要課題です。今回は、2030年問題が製造業にもたらす影響とその対策について考えていきます。
2030年問題が製造業にもたらす影響
「2030年問題」とは、少子高齢化の進行により、2030年前後に顕在化すると予測される社会的課題の総称です。企業においては、深刻な労働力不足になることが指摘されています。
ここでは、製造業にはどのような影響があるのかをみていきます。
技術とノウハウが「断絶」
製造業でもっとも危惧されているのは、熟練者の持つ技術とノウハウの断絶です。本来熟練者の技術とノウハウは、若手技術者へと継承されるべきものです。しかし、加速する労働力不足の影響で、2030年頃には若手人材の確保自体がますます難しくなっているでしょう。さらに現場の人手不足により、若手人材の育成に十分な時間を確保できないケースも考えられます。
後継者が育たないまま熟練技術者が退職すれば、長年培われた技術とノウハウは本人しか知らない「暗黙知」として失われてしまいます。製造業であれば図面や仕様書などの資料は現場に残されるかもしれませんが、そこに反映することが難しい「暗黙知」を復元することは、極めて困難です。
熟練技術者の技術とノウハウを継承することができなければ、企業は利益の源泉を失うことになります。労働力不足による製造能力の低下に加え、暗黙知が失われることによる技術力の低下は、企業の総合的な競争力を衰退させることにつながるでしょう。暗黙知を組織のナレッジとし、蓄積・共有していく仕組みづくりが急がれます。
リスクがあるのは製造現場だけではない
2030年問題の製造業への影響として、「製造現場」のノウハウ断絶のみが注目されがちですが、ベテランの技術とノウハウが必要にもかかわらず、断絶する可能性があるのは、製造現場だけではありません。営業部門でも同様です。
たとえば、受注生産型製造業の見積業務。受注生産型製造業で製造する製品は多くのパーツから構成され、製造工程も複雑です。そのため営業部門は、設計部門をはじめとする各関係部門と確認・調整を行い、すり合わせた上で見積を作成する必要があります。
一方で、多様化する市場のニーズに対応するため、顧客企業からは迅速な見積回答を求められる傾向にあります。
営業担当者は、複雑化とスピード化に同時に対応する必要があります。従来この両立を可能にしてきたのが、ベテラン営業担当者の技術とノウハウでした。しかし、2030年問題の影響により、それらが失われてしまえば、顧客企業のニーズに十分に対応することができなくなります。
顧客が求める見積回答の期限に用意できなければ、仮に価格競争力があっても、競合他社に契約を奪われかねません。
一方、迅速に見積を提示したとしても、見積の精度が低ければ、損益分岐点の判断が曖昧になり、利益を確保した価格交渉が難しくなります。従来はベテラン営業担当者が原材料や人件費の高騰、円安進行などを勘案して見積を作成していたものを、ノウハウが断絶することにより、いわゆる「どんぶり勘定」を余儀なくされる可能性も高まります。
見積プロセスの属人化に潜むリスク
ベテラン営業担当者の技術とノウハウに過度に頼るということは、その業務が「属人化」していることを意味します。属人化とは、ある業務の進め方やノウハウを特定の担当者だけが知っている状態を指します。ノウハウや情報共有が行われていないため、担当者が不在の場合にはその業務が停滞・停止するリスクがある状態です。
受注生産型製造業では、受注にかかわる重要な業務であるにもかかわらず、見積業務については、属人化されているケースが少なくありません。
顧客企業のニーズに対応できない見積は受注率の低下を招きます。受注率の低下は、工場の稼働率の低下につながり、間接費の負担を相対的に上昇させます。その結果、原価の上昇をもたらし、価格競争力を低下させる要因にもなります。
断絶する恐れのある見積の技術とノウハウを継承するには、それらをナレッジとして情報共有する仕組みづくりが重要です。その有効な手段として、見積プロセスのシステム化が挙げられます。
求められる"知の情報共有の仕組み"
前述のとおり、属人化した見積プロセスを継承するためには、"知の情報共有の仕組み"、具体的には見積プロセスのシステム化が有効です。なぜ有効なのか、どのようにシステム化していけばいいのかを、順にみていきましょう。
システム化によるナレッジの継承
従来は「先輩の背中を見て学ぶ」「ノウハウは盗むもの」といわれていましたが、労働力不足により人材育成に十分な時間を確保できない状況下では、そういった方法は非現実的です。
人材などのリソース不足の中、ベテラン営業担当者の技術とノウハウを継承するには、それらをナレッジとして蓄積・共有できる仕組みをつくることが現実的、かつ効率的な手段です。
具体的には見積プロセスをシステム化することで、理想的な業務フローが標準化され、新人でもベテラン営業担当者と近い精度・スピードで、見積作成が可能になることが期待できます。
ただし、技術とノウハウの断絶を防ぐためには、ベテラン営業担当者が現役のうちに、システム化を進める必要があります。
それが、今後一層深刻化する労働力不足への対応にもなり、顧客企業のニーズに応えることにもなるのです。言い換えると、これは単なる見積プロセスのシステム化で終わる取り組みではなく、業務の大きな変革、かつ企業の競争力強化にもつながる、まさに「DX」といえます。
システム化へのアプローチ
では、どのようにして見積プロセスをシステム化していけばよいのでしょうか。次の4つのステップで進めていきます。
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ステップ 1 :可視化
最初のステップは見積プロセスをフロー図にすることです。見積プロセスを可視化することで、省略できるやり取りや、ボトルネックになっている業務などが明確化されます。
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ステップ 2 :標準化
可視化の次のステップは、もっとも業務効率の良い業務フローを、関係する担当者が守るべき標準フローとし、標準化することです。これにより経験や熟練度による個人差がなくなり、業務の品質が安定します。また、業務効率の向上も期待できます。
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ステップ 3 :システム化
ステップ3は、いよいよシステム化です。構築された標準フローを基にして、適切なシステムにより、見積プロセスをシステム化していきます。
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ステップ 4 :維持
システムは構築して終わりではなく、維持していくことが重要です。継続的なシステム運用のためにも、ユーザーが簡単な操作でメンテンナンスできる環境整備も、大切なポイントです。
システムは構築して終わりではなく、維持していくことが重要です。継続的なシステム運用のためにも、ユーザーが簡単な操作でメンテンナンスできる環境整備も、大切なポイントです。
以上のような見積プロセスの"知の情報共有の仕組み"を実現するためには、CPQソリューションの活用が有効です。CPQ(Configure Price Quote)とは、製品構成・価格設定・見積作成を一元管理できるシステムです。
ベテラン営業担当者が在籍しているうちであれば、そのノウハウをシステムに組み込むことが可能です。それにより、ナレッジが共有され、誰でも精度の高い見積の作成が可能になります。
CPQに関して詳しくは、以下をご参照ください。
CPQが実現するハイブリッド型見積プロセス
紹介してきたように、見積プロセスのシステム化にはCPQソリューションの活用が有効です。CPQソリューションでシステム化した見積プロセスは、対面と無人、いずれに対応できることもメリットです。
従来の見積プロセスでは、担当者が社内各部門と調整して、見積を作成していました。これには数日を必要としていました。
これに対しCPQソリューションを活用した場合は、顧客企業のニーズ(仕様)を聞き出し、営業担当者がその場で入力することで、即座に見積回答を行うことが可能です。
また、無人では顧客企業が自ら仕様を入力すると、営業担当者を介することなく見積が作成されます。仕様の異なる見積の比較も容易に行えます。
このようなCPQソリューションは夢物語ではなく、すでに多数の企業で実現・導入されています。
「今」が最後のチャンス
受注生産型製造業では、見積プロセスをCPQソリューションによってシステム化することで、ベテラン営業担当者の技術とノウハウを継承し、厳しい市場で生き残る競争力を高めることが期待できます。
しかし、システムの構築には時間を要します。加えて、2030年問題に対応するためには、ベテラン営業担当者が在籍している間にシステムを構築することが不可欠です。システム構築後の検証や調整も、ベテラン営業担当者の協力が必要です。
2030年問題に対応するための、今がまさにギリギリのタイミングであり、早急にシステム化へ着手する必要があるでしょう。
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