UXやデザイン思考のベースとなる考え方
「人間中心設計(HCD)」とは?

はじめに

「人間中心設計(HCD)」をご存じでしょうか。これは、最近よく耳にする「ユーザビリティ」、「ユーザーエクスペリエンス(UX)」、「デザイン思考」といった分野のベースとなる考え方で、市場の変化により、その適用範囲は年々拡大してきています。
本日は人間中心設計(HCD)について、概要や実践プロセスと、エクサでの取組内容についてご紹介します。

人間中心設計(HCD)とは

人間中心設計(Human Centered Design=HCD)とは、一言で表現すると、「『苦い経験』を減らし、『うれしい経験』をもたらすための取り組み」(*1)です。

従来、製品やサービスの要求事項は作る側の事情で決められてきましたが、HCDでは使う側である「人間」の要求や欲求に合わせることを優先します。これは使う側の満足度向上だけでなく、仕事の効率向上や開発の手戻りの減少などのコスト削減にも貢献するため、結果的に顧客満足と企業利益を同時に追求することができます。

この取り組みは、「❶利用者の特性や利用実態を的確に把握し、❷開発関係者が共有できる要求事項の下、❸設計と❹ユーザビリティ評価の連動により、より有効で使いやすい、満足度の高い商品やサービスを提供するための一連の活動プロセス」(*2)で実践されます。

HCD 主要な活動

図1:HCDの主要な4つの活動

(*1) 出典:人間中心設計推進機構『HCD-Net総合パンフレット』(https://www.hcdnet.org/organization/news/hcd-1076.html)
(*2) 出典:山崎和彦(2016)『人間中心設計入門 HCDライブラリー 第0巻』、近代科学社

HCDを実践するためのプロセスと手法

HCDを実践するためのプロセスはISO 9241-210として国際規格化されており、JIS規格化(JIS Z 8530)に伴う日本語翻訳によって、日本においても取り組みやすいものとなりました。
このプロセスは、HCDの主要な活動である❶~❹を、それぞれ単発ではなく、ユーザーの要求を満たすまで繰り返し行うことから、「HCDサイクル」として表現されます。これはPDCAサイクルとよく似ており、タスクやプロジェクトの代わりに「人間(利用者)」を中心に据えたものと考えると理解しやすいでしょう。

hcdサイクル

図2:HCDサイクル


また、これらの活動を効率的かつ効果的に実施するために、数多くの手法が整理・開発されています。
表1:HCDの主要な活動とそれを実践するための手法(一例)
HCDの主要な活動必要な技術手法(一例)
❶ 利用状況の把握と明示ユーザーの要求を知る技術
  • アンケート
  • インタビュー
  • フォーカスグループ
  • フィールド調査/観察
  • エスノグラフィー調査
❷ ユーザーと組織の要求事項の明示ユーザー要求をシステム要求に変換する技術
  • ユースケース図(UML)
  • ペルソナ
  • シナリオベースドデザイン
  • ペーパープロトタイピング
❸ 設計による解決策の作成デザインや設計案を作り込むための技術
  • 対話の原則(ISO 9241-110(JIS Z 8520))
  • 対話設計8つの黄金律
  • 難作業を簡単にする7原則
  • 各種HCDガイドライン

❹ 要求事項に対する設計の評価

デザイン/設計案の妥当性を評価する技術
  • HCD評価チェックリスト
  • ユーザビリティテスト
  • ヒューリスティック評価
  • 認知的ウォークスルー
  • プロトコル解析
  • パフォーマンステスト
  • 操作ロギング

(出典:人間中心設計推進機構『HCDのプロセスと手法』https://www.hcdnet.org/hcd/column/hcd_06.html

これらの手法はHCDサイクルに則った活動時に限らず、様々な場面で活用することができます。

例えば、昨今採用の増えているアジャイル型開発は、企画段階からプロトタイピング手法を用いてユーザー要求を満たしているかを確認しながら進むスピーディーな開発手法ですが、インプットとなるユーザー要求の整理に時間がかかり、なかなかプロジェクトを始められないといった例をよく耳にします。「❷ ユーザーと組織の要求事項の明示」の手法は、ユーザーがどのように利用するかを想定しながらユーザー要求を整理できるため、より手戻りの少ない要求定義のために活用することができます。また、ユーザー要求を満たしているかを確認する際に「❹ 要求事項に対する設計の評価」を活用することで、機能的には問題がなくても、ユーザー目線で考えると致命的となるユーザビリティの問題にも気づくことができます。

最終的にはHCDサイクルに沿った活動が理想的ですが、みんなで効果を実感しながら少しずつ導入することで、より抵抗感なく組織の活動に組み込んでゆくことができるでしょう。

エクサにおけるHCDの取組

エクサは、HCDの啓蒙・普及を目的とした団体であるHCD-Net(人間中心設計推進機構)に賛助会員として参加しています。定期的に開催されるセミナーや研究発表会から、様々な分野における最新の取り組み事例や手法の情報をキャッチし、お客様にとって効果的なITサービスの提供やビジネス提案に活用しています。

■ 導入事例

ジャックス ロゴ

株式会社ジャックス様【導入事例】
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東武カード ロゴ

株式会社東武カードビジネス様【導入事例】
クレジットカードWeb入会申込フォームのUI改善により、コンバージョン率向上に向けたご支援を実施

また、UXデザインやサービスデザインをリードする職位については、前提資格としてHCD-Net認定資格である人間中心設計スペシャリストや人間中心設計専門家を設け、HCDを推進できる人材育成にも力を入れています。

さいごに

今回は、「人間中心設計(HCD)」についてご紹介しました。
関連文書にはアカデミックな表現が含まれるものも多く、とっつきにくい一面もありますが、一度理解して活用できるようになれば、多くの手法や先行事例を参考にすることができる、強力なツールとなります。
ぜひ皆様の業務にも導入を検討してみてはいかがでしょうか。

デザイン思考で新規ビジネス価値創出をサポートする FinTech つなぐラボ

エクサのFinTechつなぐラボでは、人間中心設計やUXデザインのプロジェクト導入を支援しています。 事例やご支援内容はこちらのページでご紹介しています。

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