金融業界のDXを加速させる
「ローコード開発」とは?想定事例も紹介

近年の金融業界は、さまざまな課題を抱えています。デジタル化の進展によるユーザーニーズの変化や、他業界の企業が金融事業へ参入している背景もあり、DXの推進は急務といえるでしょう。DX推進の必要性が高まるなか、注目されている技術の一つが「ローコード開発」です。ローコード開発によって、開発速度や品質、安定性などの向上が期待できます。本記事では、ローコード開発の特徴やメリット、金融業界でローコード開発を採用した想定事例について解説します。

金融業界の現状と課題

はじめに、日本経済を牽引する立場である金融業界の現状と課題を解説します。

将来を見据えた人材の変更・確保が難しい

金融業界では「COBOL」や「FORTRAN」などの古いプログラミング言語が多く使用されてきました。これらは、事務処理システムの開発言語として、銀行や大企業の会計業務を中心に普及した言語です。現在でも多くの企業が、COBOLを用いた基幹システムを利用しています。

しかし、COBOLやFORTRANなどのプログラミング言語を使える人材の多くが、定年退職を迎えているケースが多く見られます。そのため、システムのトラブルが発生した際に根本的な解決ができないほか、新たなシステムへの刷新自体も困難となっています。

また、後継者に技術やノウハウなどを継承するにしても、これらのソースコードは難易度が高く、引き継ぎが難しいのが現状です。こうした課題を解決し、将来的に同じ状況を発生させないための変革が求められていますが、なかなか解決に至っていません。

レガシーシステムからの脱却が難しい

レガシーシステムとは、過去の技術によって構成されたシステムのことです。金融機関のシステムはオンプレミスによって構成されるケースが多く、金融機関独自の開発・拡張が長期間進んでいる状況がよく見られ、一般的にはレガシーシステムと言われています。したがって、大規模化・複雑化しているシステムのメンテナンス・改修に対し、多大なコストや時間が必要になる点も金融業界の大きな課題です。

また、金融業界では、顧客のお金や資産情報などの個人情報を管理するため、強固なセキュリティシステムが重要視されています。複雑化している既存システムを改修することは、セキュリティ面でも大きなリスクとなるため、改修に対しては慎重に検討せざるを得ない状況です。

参入企業の増加によって競争が激化している

近年では、金融サービスを取り扱っていなかったIT企業などが、金融ビジネスに続々と参入しています。参入企業の増加によって、これまで以上に金融業界の競争が激化していることも課題の一つです。

これらの環境変化に加えて、顧客ニーズも日々変化しています。そのような状況下で選ばれる企業になるためには、サービスの質の向上や改善が必要不可欠です。

ローコード開発とは?

ローコード開発とは、近年注目されているシステム開発手法の一つです。この章では、ローコード開発の特徴について解説します。

ローコード開発の特徴

ローコード開発(Low-Code development)とは、必要最低限のソースコードでシステム開発を行う手法、またはプラットフォームです。GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)を活用し、画面上で部品を選択して組み合わせることによって、システムを構築する仕組みとなっています。必要な部品をドラッグ&ドロップして部分的にソースコードを入力するため、入力の手間を削減できる点が魅力です。

ローコード開発を取り入れれば、これまでよりも短い開発期間で高品質なシステムを構築できるでしょう。次の章から具体的に解説していきます。

ローコード開発のメリット

ローコード開発の主なメリットは、下記の3点です。

  • 開発コスト・時間を削減できる
  • 顧客ニーズの複雑化に対応できる
  • 開発の技術的なハードルを下げられる


それぞれのメリットについて詳しく解説します。

開発コスト・時間を削減できる

ローコード開発は、GUIを活用し、画面上で部品を選択して組み合わせることによって、システムを構築します。最小限のコーディングで開発ができるため、開発コスト・時間の大幅な削減が可能です。ローコード開発では、コーディングする箇所が減るため、バグが起こりにくく、その修正工数を削減するといったメリットもあります。

また、コーディングを担当してきた人員をカットでき、人件費を抑えられるメリットもあります。さらに、コード数が少なくなることで、プログラムごとの連携箇所で不整合があった際にもすぐに発見して対処できます。システムの保守・管理も容易に行えるようになるでしょう。

顧客ニーズの複雑化に対応できる

開発作業を容易に進められるようになるため、市場の変化に応じてビジネスモデルを柔軟・迅速に適応させることも可能です。オンプレミス環境やクラウド環境など、異なる環境に対応しやすくなり、外部の連携システムとの統合もスムーズに行えるメリットがあります。

さらに、ローコード開発によって開発作業を効率化できれば、予算や財源を確保できます。余った予算や財源を、サービスの向上や新規事業展開などに使えるようになるでしょう。

開発の技術的なハードルを下げられる

従来の開発作業の場合、スキルの高いエンジニアが在籍していなければ、自社で実装したい機能の開発が難しい状況がほとんどでした。ローコード開発であれば、プログラミングに関する専門的な知識がなくても開発できる「市民開発」を実現できます。開発の技術的なハードルが下がる分、顧客ニーズに適した柔軟な開発作業も可能です。

また、社内開発が可能となるため、外部の専門知識を持ったエンジニアに開発業務を依頼していた場合、これらの外注コストも削減できるでしょう。

ローコード開発のデメリット

さまざまなメリットがあるローコード開発ですが、デメリットもあります。ローコード開発の導入を検討する際には、メリットだけではなく、デメリットも押さえておくことが重要です。ローコード開発のデメリットについて解説します。

プログラミング開発よりも自由度が下がる

ローコード開発は、プログラミング開発よりも自由度が下がります。標準搭載されている機能やテンプレートをベースに開発を進めていくため、複雑な処理の実装や、高機能なシステムの構築には向いていません。

開発したいサービスの規模や内容によっては、従来のプログラミング開発のほうが適しているケースもあります。例えば、システムの操作性などに対して細かい要望があったり、企業固有の業務ロジックがあったりする場合は、ローコード開発ではなく従来のプログラミング開発を採用するべきでしょう。

ローコードツールを使いこなせるようになるまで時間がかかる

ローコード開発の場合、プログラミング言語に対しての理解はそこまで求められません。しかし、ローコードツールを使いこなすためには、ある程度の時間が必要となる点は認識しておきましょう。

ローコードツールの特性や、使い方などを理解しないまま開発作業を進めると、トラブルが発生した際にスムーズな対応ができません。また、ローコードツールのメリットを最大限に活かせず、開発期間が長くなってしまいます。そのため、開発を円滑に進めるためには、ローコード開発の経験・スキルを持ったエンジニアや、プログラミング知識のある人材の採用も検討するとよいでしょう。

ブラックボックス化するリスクがある

ローコード開発は、直感的に操作してソースコードを追加できる仕組みです。従来の開発方法と比較すると仕様・設計のドキュメントが残っていないケースが多くなるため、決められた担当者しか使えなくなるリスクがあります。また、開発を担当していたメンバーが抜けることによって、システムの改修作業が困難となるおそれもあるでしょう。ローコード開発を行う際には、管理担当者を決めたり、設定方法をチーム内で共有したりする必要があります。

金融業界でローコード開発が注目されている理由

ローコード開発は、金融業界の課題解決手段として期待されています。また、DXの取り組みも推進できるでしょう。この章では、金融業界でローコード開発が注目されている理由を詳しく解説します。

レガシーシステムからの脱却

金融業界の基幹業務システムは、堅牢かつ複雑です。システムへの追加開発や、アプリケーションの修正は難易度が非常に高く、修正に多くの時間を要するでしょう。ローコード開発であれば、基幹システムと棲み分けて、モバイルアプリやウェブサービス、社内業務の効率化アプリケーションなどを容易に実現できます。開発期間を短縮できるだけではなく、IT人材を確保しやすくなるため、中長期的なメンテナンス性の向上も見込めます。

IT人材の確保

近年では金融業界に限らず、どの業界・業種においてもDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が求められています。経済産業省が2020年12月に発表したDX(デジタルトランスフォーメーション)レポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」では、2018年時点で約17万人不足しているIT人材が、2025年には約45万人へ拡大すると推測されています。

特に、金融業界ではIT人材の不足が顕著です。現在のITシステムが機能不全に陥るとされる「2025年の崖」を回避するために、ローコード開発ツールを導入して、人材を確保する取り組みが求められています。ローコード開発は、「COBOL」「FORTRAN」「Java」など従来の開発言語と比較して、技術的なハードルが低い点が特徴です。対応できるIT人材の幅が広がるため、IT人材不足への解決手段となります。さらに、IT部門に依存せず開発を進める「市民開発」も実現できるでしょう。

参考:
経済産業省「DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」

スピーディな開発による競争力の強化

金融業界では、変化するビジネス要件や顧客ニーズの複雑化に、迅速かつ柔軟に対応することが求められています。アプリケーションの開発手法に関しても、開発速度や品質、安定性の向上が必要不可欠です。ローコード開発では、高品質なシステムをスピーディに開発できます。DXへの取り組みの一環として、既存システムをローコード開発ツールで再構築するメリットは非常に多いといえるでしょう。

金融業界でローコード開発プラットフォームを導入した想定事例

ローコード開発プラットフォームの導入は、金融業界のさまざまな課題解決につながります。金融業界でローコード開発プラットフォームを導入した想定事例を3つ紹介します。

開発スピードのアップと大幅なコスト削減を実現

ある地方銀行では、開発業務を外部に依頼していたため、社内のIT人材・スキル不足が長年の課題となっていました。また、他の金融機関と連携しながらシステム構築を行っていたため、社内の開発力も失っている状況でした。そこで、ローコード開発プラットフォームを採用したところ、開発のスピードアップに成功。外部のエンジニアへ委託せずに自社開発が可能となり、開発コストも大幅に削減できました。

分析・マネジメント業務を効率化

ある信託銀行では、本部と営業店との情報共有に、紙や表計算ソフトを使用していました。これらの作業をデジタル化し、業務効率化を図ったものの、外部委託によるシステム開発では、スピードもコストも見合わないと判断されていました。

そこで、ローコード開発プラットフォームを採用し、PCやタブレットから各種情報にタイムリーなアクセスを実現。本部での分析や営業店でのマネジメント業務のスピードアップにもつながりました。

端末更改コストの削減

ある金融機関では、約10年ごとに対応が必要なシステム更改に対するコスト負担が大きな課題でした。そこで、ローコード開発ツールを全面採用したところ、従来の半分の工期で新しい営業店システムを刷新することに成功。さらに、新しいシステム構築によって、従来の金融端末を減らし、端末更改コストの削減も実現しました。

まとめ

「ローコード開発」は、金融業界の課題解決の手段として有効です。ローコード開発を導入すれば、基幹システムと棲み分けたうえで、モバイルアプリやウェブサービス、社内業務の効率化アプリケーションなどを容易に実現できます。金融業界の長年の課題であるレガシーシステムから脱却し、中長期的なシステム更改・メンテナンス性の向上にもつながるでしょう。さらに、これまでの開発言語よりも技術的なハードルが低くなるため、対応できるIT人材の幅が広がり、IT人材不足も解決できます。

金融機関のお客様や大規模で複雑なワークフローをローコード開発で実現したい方におすすめのソリューションが「Appian(アピアン)」です。Appianは、画面のデザインテンプレートやワークフローなどを活用し、アプリケーションを短期間に設計・開発できるサービスとなっています。ユーザーはシンプルなドラッグ&ドロップの操作によって、金融機関でも利用可能な大規模で複雑なワークフローをスピーディに構築できます。また、AIやRPA、外部サービス連携用APIなどの機能も搭載されているため、多様な拡張に即座に対応できる点も魅力です。

Appianの詳細は、こちらをご覧ください。

企業価値を高めるハイパーオートメーション
Appian(アピアン)

関連する記事

関連ソリューション

関連事例

お問い合わせ

CONTACT

Webからのお問い合わせ
エクサの最新情報と
セミナー案内を
お届けします
ソリューション・サービスに関する
お電話でのお問い合わせ

平日9:00~17:00※弊社休業日を除く