BPRとは?
進めるポイントと金融業界での想定事例を紹介

近年では、働き方改革やDX推進などの影響もあり、「BPR」が注目されています。BPR とは業務フローや組織構造、システムなどの再構築を意味する言葉です。BPRを適切に進めることで、業務フローの見直しや業務効率化を実現できます。金融業界における課題解決の手段としても、BPRは有効な手段となるでしょう。

本記事では、BPRを進めるポイントについて詳しく解説します。また、金融業界におけるBPRの想定事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

BPRとは

BPR(Business Process Re-engineering)とは、業務の目的を達成するために、既存の業務体系や制度などを根本から見直し、再構築することを意味します。BPRの対象となるのは、業務フローやシステム、組織などの管理体制です。現在、企業内の組織や社内部署では分業化・専門化が進み、各々がそれぞれの業務に従事しています。その結果、組織全体の利益のために働く意識が薄くなり、自身の責任を果たす意識も希薄になってしまっているのが現状です。

BPRは、このような業務プロセスが分断された組織の抜本的な改革と、再構築を目指すための取り組みです。

BPRが日本で注目された背景

BPRが日本で注目されはじめたのは、1990年代前半のバブル崩壊後です。1993年に米マサチューセッツ工科大学教授であるイケル・ハマー氏とジェイムズ・チャンピーが創刊した「リエンジニアリング革命」の刊行がきっかけで、BPRが世界中で認知されたといわれています。また、この時期はバブル崩壊による急激な景気の悪化が原因で収益が減り、多くの企業で経営効率の向上が求められていました。

業務改革を理由としたリストラなどもあり、多くの混乱を生んだため、BPRの導入を上手く進められなかった企業もあります。しかし、2010年代以降に政府が主導する「働き方改革」が実施され、BPRが再び注目を集めました。業務を抜本的に見直す必要性が年々高まっており、その手段の一つとしてBPRが注目されています。

業務改善との違い

BPR(業務改革)は「業務改善」と混同されるケースが多く見られます。それぞれの意味は、下記のとおりです。

  • 業務改善は、業務の一部について、既存の組織体制の範囲内で部分的に改善を行うこと
  • BPRは、既存の組織体制に限らない、業務全体を根本的に見直すこと


業務改善が一部分の斬新的な取り組みであるのに対して、BPRは全体的な視点で大きな改善を目指す取り組みといえます。

BPRはDXを推進させるための有効な手段

BPRは、DXを推進させるうえでも重要な考え方です。経済産業省はDXレポートで、日本企業がDXを推進できなかった場合、2025年~2030年の5年間で、最大約12兆円の経済損失が生じるおそれがあると警鐘を鳴らしています。

どの業界・どの企業においても、業務システムの見直しや改善、業務の効率化、コスト削減などが求められています。こうした状況下において、BPRによる業務改革はDX推進に有効な手段といえるでしょう。

参考:
経済産業省「DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」

金融業界でBPRへの取り組みが求められている理由

さまざまな課題を抱えている金融業界においても、BPRへの取り組みが求められています。金融業界でBPRへの取り組みが求められている理由を詳しく解説します。

アナログ業務の改善

金融業界は「紙」などを使用したアナログ処理が特に多い業界であり、BPRの必要性が高まっています。アナログ処理が日常化されていると、人的ミスの発生につながります。また、紙による書類保管の場合、顧客からの問い合わせにスムーズな対応ができないデメリットもあり、顧客サービスへの影響も大きいでしょう。

さらに、日本国内では労働人口の減少や、少子高齢化などの課題もあります。中長期的な労働力人口の減少によって、これまでは属人的にマンパワーで対応できていた業務の維持が困難となっているのが現状です。

参入企業の増加によって競争が激化している

近年では、これまで金融サービスを取り扱っていなかったIT企業なども、続々と金融ビジネスに参入しています。参入企業の増加によって競争が激化していることも、金融業界の課題です。顧客ニーズも日々変化するなかで、選ばれる企業になるためには、サービスの質の向上や改善がこれまで以上に求められます。

BPRのメリット

BPRを導入することで得られるメリットについて解説します。

業務フローを把握して無駄な業務を見つけられる

BPRによって業務プロセスを可視化し、複数部門で重複している無駄な業務や、業務効率化を阻む要因・課題を発見できます。無駄な業務が発生する要因は、社員の知識・スキル不足や、不必要な手順がマニュアルに取り組まれていることなどさまざまです。非効率な業務プロセスは、自社製品の品質やサービスにも大きく影響するため、日頃から無駄な業務や課題を把握しやすい環境づくりが必要となるでしょう。

大幅な業務効率化につながる

BPRを推進できれば、企業全体の業務プロセスを可視化でき、大幅な業務効率化が期待できます。例えば、複数の部署で重複して行っていた業務を発見してまとめたり、必要性の低い業務を効率よく行える環境を構築したりするなど、さまざまな方法で業務効率化のための施策を実施できるでしょう。無駄な時間・コストを削減することで、別の業務にリソースを使えるようになり、意思決定のスピードアップにもつながります。

顧客満足度・従業員満足度の向上にもつながる

BPRによって無駄な業務や全体の業務フローを明確にできれば、製品やサービスの課題を改善するための取り組みをスムーズに始められます。その結果、顧客への対応・サービスの質が高まり、顧客満足度の向上につながるでしょう。顧客満足度がアップすると、口コミや評判から多くの新規顧客を獲得できたり、売上が伸びたりなど、さまざまなメリットを得られる可能性があります。

さらに、生産性が高まることで、従業員満足度の向上も期待できるでしょう。BPRによって無駄な業務がなくなれば、長時間労働や残業などが減り、従業員がより働きやすい環境を実現できます。従業員が日々高い意欲を持って仕事に取り組めるようになれば、離職率の低下にもつながります。

BPRのデメリット

BPRの導入にはさまざまなメリットがある一方で、デメリットもいくつか存在します。

多大な労力と時間が必要になる

BPRは、企業全体で業務改革を進めていく必要があり、多大な労力と時間がかかります。計画の立案から実行、改善まで、多くの人の協力が不可欠です。もしBPRを実行している最中に何らかの理由で断念することになれば、企業に大きなダメージを与えるため、念入りな準備が求められます。

また、ITシステムの導入や外部業者への委託コストなど、費用面での負担が非常に大きい点もデメリットといえるでしょう。全体の業務フローを計画どおりに最適化できれば、発生したコストは即座に回収できますが、初期の段階では大きな効果は期待できません。BPRを実施する際には、初期段階ではコストが増大することや、念入りに計画・スケジュールを立てる必要があることを事前に認識しておきましょう。

社員への負担が大きい

BPRを実施する際には、全社的な業務フローを見直す必要があるため、社員の負担が大きくなります。現場と経営側との間に摩擦が生じるケースもめずらしくありません。そのため、経営側の一存で決めるのではなく、計画時点から現場のメンバーを巻き込むことが重要です。初期の計画段階からBPRを実施する意義や目的、メリットを社員に浸透させることで、BPRに対して社員が一丸となって協力できる雰囲気が生まれ、スムーズに施策を進めていけるでしょう。

BPRの進め方

ここからは、BPRの具体的な進め方を解説してきます。基本的な流れは下記のとおりです。

  1. 目的・目標の設定
  2. 分析
  3. 新しい業務フローの設計
  4. 利用するシステム・ツールの選定
  5. BPRの実施
  6. 効果検証


それぞれの内容について、詳しく解説します。

目的・目標の設定

まずは、BPRの目的・目標を設定しましょう。企業の現状・課題を把握するために、社員へのヒアリングを実施します。特定の社員だけではなく、さまざまな社員にヒアリングを行ったうえで効率化できそうな業務をピックアップし、目的や目標を設定することが重要です。

分析

BPRの対象となる業務内容や業務フロー、組織体制などについて現状を分析し、課題を特定する作業を行います。分析作業を人力で進めるのは多大な時間がかかり非効率なため、分析ツールの活用が有効です。代表的な分析ツールには、プロセスマッピングやBSC(Balanced Scorecard)、ABC(Activity Based Costing=活動基準原価計算)などがあります。

新しい業務フローの設計

洗い出した課題を踏まえて、新しい業務フローを設計していきます。新しい業務フローを設計する際には、「どんな業務を実施するか」「どの部署が対応するか」「何人ぐらいの人数で対応していくのか」を具体的に決めていきましょう。新しい業務フローの設計には、企業内の業務の一部分を外部委託する「アウトソーシング」や、企業内の共通している業務を集約し、専門部門・子会社に対応してもらう「シェアード・サービス」などを活用する方法もあります。自社の業務規模や予算などを考慮し、外部への依頼も検討しましょう。

このフェーズでは、どの領域から着手していくか、着手開始・完了の時期などの実行スケジュールも併せて作成します。BPRでは企業全体で中長期的に大掛かりな業務改革に取り組むため、様々なストレスが発生しやすく、初期段階に設定した大きな目標を忘れがちになります。そのため、短期で達成できる目標も設定し、最初に決めた方針とズレが発生していないかを確認できるスケジュールを立てましょう。

利用するシステム・ツールの選定

業務フローを作成したら、それぞれの業務をシステムやツールで効率化できないか、代用できないかを検討していきます。近年では、BPRに役立つツールが多く登場しています。より効率的かつミスが少ない運用を実現させるためにも、これらのツールを有効に活用しましょう。BPRに役立つ代表的なツールを4つ紹介します。

RPA

RPAとは、「Robotic Process Automation」の略で、ロボットを通じて業務を自動化・効率化するための手段またはツールのことです。ロボットというと、機械で作られている人型のロボットを思い浮かべる方も多いですが、RPAはパソコンやクラウド上で動作するソフトウェアとなっています。

RPAは、毎日行う必要があるデータ入力や転記、集計業務などの定型業務の自動化に最適です。また、Webサイトからの情報収集や株価調査、競合製品の価格調査などの用途にも適しています。一方で、変更が頻繁に発生する作業やルールが多い業務、個々の判断が必要な業務に対しては、RPAは向きません。近年では、RPAとAIを連携させて対応する事例も見られます。

ローコード開発ツール

ローコード開発ツールとは、ソースコードをできる限り記載せずにアプリケーションを開発できるツールです。画面部品を組み合わせることで開発作業を進められるため、開発作業のコスト・時間を大きく削減できる点がメリットです。最小限のコードで済むため、システムの保守・管理などの負担も軽減できます。

プログラミングに関する知識がほとんどなくても、スピーディーに開発作業を進められることが魅力ですが、通常のプログラミング開発と比べて自由度が下がる点はデメリットです。例えば、複雑な機能を多く搭載したい場合や、デザイン性にこだわってシステムを構築したい場合、ローコード開発ツールでは対応できないものもあります。また、ローコードとは言っても、ツールを使いこなすにはある程度の時間が必要となることも覚えておきましょう。自社で実現したい機能を明確にしたうえで、ローコード開発ツールを採用するべきかどうかを検討してください。

ルールエンジン

ルールエンジンとは、業務の自動化を実現するために、アプリケーションやAIで業務実行の判断や意思決定を行うシステムです。先ほど紹介したRPAとの相性が良く、RPAを運用する際にルールエンジンを活用するケースが多く見られます。

ルールエンジンでは、企業ごとのビジネスルールに沿って、業務実行の判断や意思決定を行えます。ビジネスルールの細かな変更にも柔軟に対応でき、BPRでの業務ルールの変更や追加に対しても、即座に対応できる点が魅力です。また、ルールエンジンを活用すれば、ビジネスルールが可視化されるため、これまで把握が難しかったルールへの理解が深まります。業務ルールを明確にして全員が把握することで、属人化の解消にもつながるでしょう。ルールエンジンを使う際には、属人化されているビジネスルールを見直し、自社のルールを明文化することが重要です。

チャットボット

チャットボットとは、「チャット(会話)」と「ボット(ロボット)」を組み合わせた言葉で、自動会話プログラムを指します。チャットボットには、パターンマッチ型や人工知能型などさまざまな種類があります。問い合わせ対応の効率化や負担軽減などの効果が期待できるでしょう。

近年、チャットボットの活用範囲は大きく広がりました。例えば、見積もりや再配達の手配などを行う接客ツールとして利用したり、社内システムや問い合わせに対するヘルプデスクとして利用したりする方法があります。多言語に対応している自動翻訳機能を搭載したチャットボットもあり、学校などの教育現場で学生・保護者からの問い合わせ対応として活用している例もあります。

チャットボットには、問い合わせ対応の効率化や負担軽減のほかにも、顧客との接点を増やして売上をアップさせたり、顧客満足度の向上につなげたりなど、さまざまなメリットがあります。

BPRの実施

利用するシステム・ツールを選定したら、各ツールを導入し、策定した実行計画に沿ってBPRを実施してきます。事前に立てた計画どおりに、対象となる業務にBPRを適用しつつ、現場や顧客への影響も考慮して段階的に進めていかなければなりません。また、BPRを実施するうえで、事前に立てたスケジュールどおりに進められないケースも出てくるでしょう。適宜新しい課題を把握し、適切な解決策を実行することが非常に重要です。

効果検証

BPRを実施した業務に対して、最初に設定した目的が達成できているか、期待した効果が出ているかを検証する必要があります。十分な成果を得られていない場合は、どこに問題があるのか、何が課題なのかを分析していきましょう。加えて、BPR実施後の業務の定着度や顧客への影響度などの評価も実施していきます。

金融業界におけるBPRの想定事例

金融業界では、課題解決のために、さまざまな形でBPRへの取り組みが行われています。この章では、金融業界におけるBPRの想定事例を3つ紹介します。

RPAの導入で業務時間の大幅な削減に成功

ある地方銀行では、営業エリアの少子高齢化による人口減が大きな課題でした。また、高齢化による来店率の減少や、特殊性が高い本部業務の属人化など、さまざまな問題・課題を抱えていました。そこで、BPR を進める手段としてRPAを導入し、業務の廃止・簡素化に成功。RPAを本格導入してから約1年半の間に、RPAでの削減時間は年間22,000時間にもなりました。さらにBPRによって、業務そのものを廃止あるいは簡素化し、年間6,000時間ほどの業務削減も実現しました。

さらに、RPAによってATMでの現金振込みのモニタリングも可能となりました。近年増加している「マネー・ローンダリング」の防止を目的としており、大きな金額を複数回に分けて振り込むマネー・ローンダリングが疑われる取引内容を自動抽出し、レポートを作成できます。手間・時間がかかるため、人手で行うことが非常に難しい業務でしたが、RPAによって実現できました。

金融機関のシステム更改にローコード開発ツールを採用

ある銀行では、オンプレミスで運用してきた旧システムを約10年ごとにリプレースする必要があり、その都度、金融専用端末などの入れ替えを行わなくてはいけない状況でした。リプレースのたびに、百億円を超える費用がかかることが大きな課題となっていました。こうした問題の解決と、DXに向けた取り組みの一環として、営業店のシステムをローコード開発ツールで再構築。開発期間は単純リプレースの半分以下の約7カ月で、開発コストは25%程度削減することに成功しました。

さらに、専用端末で行っていた業務の7割を、パソコンやタブレットで行えるように変更。約7,000台あった専用端末を半分程度に減らしました。従来であれば、店舗業務を行うためには専用端末の設置場所まで足を運ぶ必要がありました。しかし現在では、自席のパソコンやタブレットでアプリケーションにアクセスできるため、店内のどこにいても通常業務やお客様対応が可能です。現場社員が効率的に業務を進められるようになり、お客様サービスの向上を実現しました。

チャットボットを導入して生産性向上に貢献

ある銀行では、独自のチャットボットを開発し、行内の照会応答業務での活用を開始した結果、業務の迅速化、効率化などの効果を得られました。チャットボットによる自己解決率は90%を超えており、社員の生産性向上にも大きく貢献しています。また、人事関連の規定や手続き照会窓口に対してもチャットボットを導入し、照会応答業務のさらなる迅速化・効率化を目指しています。

まとめ

近年では、どの業界・業種においても、システムの見直しや改善、業務の効率化やコスト削減などが求められています。BPRを実施すれば、業務フローを把握して無駄な業務を見つけられるようになり、業務効率化や顧客満足度アップにつながります。実際にBPRを導入する際は、下記の流れで進めていきましょう。

  1. 目的・目標の設定
  2. 分析
  3. 新しい業務フローの設計
  4. 利用するシステム・ツールの選定
  5. BPRの実施
  6. 効果検証


特に「4.利用するシステム・ツールの選定」のフェーズでは、RPAやローコード開発ツール、ルールエンジン、チャットボットなど、自社の課題解決に適したソリューションを選択する必要があります。

BPRを実施する手段の一つとしておすすめなのが「Appian(アピアン)」です。Appianは、画面のデザインテンプレートやワークフローなどを活用し、アプリケーションを短期間で設計・開発できるローコード開発ツールです。シンプルなドラッグ&ドロップの操作によって、業務のスイムレーンを簡単に構築できます。また、パソコン画面だけではなく、モバイル画面を実現できる「レスポンシブ対応」も可能です。

Appianでは、ビジネスルールの実行やデータ操作、作業者やRPA・AIなどのデジタルワーカー、ワークフローシステムに連携する外部システム等の統合なサービスで、ワークフロー化だけでなく作業全体の自動化を実現できます。Appian で完成させたアプリケーションはすぐに利用でき、リリースなどの手間は発生しません。AIやRPA、外部サービス連携用APIなどの機能も搭載されているため、多様な拡張に即座に対応できる点も魅力です。

Appianの搭載機能や詳細については、こちらをご覧ください。

さらに、BPRの実現手段として、BPM製品も便利です。BPM製品にはさまざまな種類がありますが、なかでも「iBPMS」がいま注目されています。iBPMSは、従来のBPM製品に「ローコード開発」や、意思決定する「AI」や「ルールエンジン」「RPA」「プロセスマイニング」などが統合された製品です。iBPMSを活用すれば、業務効率化の効果を早期に得られるでしょう。

企業価値を高めるハイパーオートメーション
Appian(アピアン)

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