企業内にあるデータは、オンプレミス環境やクラウド環境、PC端末など、さまざまな場所に分散しているケースがほとんどです。データが分散していると、必要な情報をすぐに見つけられない、データ管理が煩雑化するなどのデメリットが発生します。このような「サイロ化」に課題感をもっている企業も多いのではないでしょうか。
データファブリックは、企業内に散在するデータを一元管理できる技術です。データを一元管理できるようになれば、従来よりもデータをスムーズに利活用でき、データドリブン経営の実現やDXなど、多くのメリットを得られるでしょう。本記事では、データファブリックの基礎や金融業界の課題に対して得られるメリット、金融業界での想定事例などについて解説します。
データファブリックとは
データファブリック(Data Fabric)とは、オンプレミスやクラウドなどの環境に点在するデータを最適な場所に配置し、必要に応じて対象データを取り出せる状態にするアーキテクチャ・技術のことです。多くの企業では、業務で利用する膨大なデータが適切に管理されておらず、データを有効活用できていないケースが見られます。
データファブリックによってデータを一元管理できれば、データのサイロ化を解消し業務で必要なデータをすぐに見つけられるようになり、データを効率よく活用できるでしょう。さらに、データガバナンスの強化や、データ管理の負担軽減などの効果も期待できます。
データファブリックの目的
データファブリックを実現することで、企業が持つデータの活用が進み、データの価値を最大限に高められます。「データを適切に管理し、経営戦略に活用したい」「必要なデータをすぐに取り出せるようにして開発作業を効率化したい」など、企業の抱える課題はさまざまです。これらの課題を解決する手段の一つとして、データファブリックが注目されています。
また、データを収集・分析したうえで、ビジネス上のさまざまな課題に対して判断・意思決定を行う「データドリブン(Data Driven) 」や、DX推進にもつながる点でも、データファブリックの実現が重要視されています。
データファブリックは世界でも注目を集めている技術
データファブリックは、世界中で注目を集めている技術です。アメリカの大手IT調査会社ガートナーが発表した「データドリブンな企業になるには?データ分析について12のトレンド」でも取り上げられました。同調査では、「データファブリックは、組織内のデータの信頼性向上と利用の効率化を実現させ、設計・展開・運用など、さまざまなデータ管理作業を70%削減できるようになる」と発表しています。
参考:
ガードナー「データドリブンな企業になるには?データ分析について12のトレンド」
データウェアハウス、データレイクとの違い
企業のデータ管理では「データウェアハウス」や「データレイク」もよく用いられています。データウェアハウスとは、データベースから取り出したデータを分析しやすい形に加工し、時系列で蓄積する場所のことです。データレイクも同様に、データを格納しておく場所を指しますが、構造化・非構造化データも併せて保管できる点が特徴です。事前にデータ構造を設計する必要がない分、データレイクはデータウェアハウスよりも柔軟性に優れています。
しかし、昨今のマルチクラウドを前提としているシステムにおいては、全データを一つの場所に保管する難易度が高くなっています。その課題を解決する新しいアプローチが「データファブリック」です。データファブリックは、コストを最小限に抑えつつ、散在するデータウェアハウス、データレイクを統合的に管理できます。
データファブリックが注目されている背景
大量にあるデータを活用しきれていない企業が多い
データ管理が複雑化している(サイロ化している)
企業では、基幹システムや顧客管理システムなどさまざまなシステムを活用しており、顧客データや在庫データ、売上データなど非常に多くのデータを取り扱っています。これらのシステムは異なる環境で運用されていることも多く、また、データによってフォーマットも多様であるため、データが分散してしまい管理が複雑になりがちです。つまり、「サイロ化」が発生している状態です。このような状態でこれらのデータを使おうとしても、保存場所が分からず探し出すのに時間と手間がかかります。
これまで、「データウェアハウス」や「データレイク」といったデータを管理する概念はありましたが、適切にデータを管理できていた企業はごくわずかです。データファブリックによって、異なるフォーマットや散らばったデータを統合管理できれば、より効率的にデータを活用できるでしょう。
データファブリックでできること
データの転送や処理、管理、保存などを自由に行える状態にする
データファブリックが実現すれば、企業内にあるオンプレミスやパブリッククラウド、プライベートクラウド、IoTデバイスなど、あらゆる環境にいつでもアクセスできます。データの転送や処理、管理、保存などを自由に行えるようになり、統合プラットフォームでの一元管理も可能です。データ管理者の負担軽減にもつながるでしょう。
効率的にデータを利活用できるようにする
データ管理の煩雑化・サイロ化を解消できる
データファブリックは、管理が煩雑化しがちなハイブリッドクラウド環境にも最適です。多くの企業では、数々のクラウドサービスやシステムを業務で利用するなか、システムの「サイロ化」が課題となっています。サイロ化とは、企業・組織が業務で利用しているシステムにおいて、部門間・組織間での連携ができない状態です。企業内でスムーズに情報を共有できなければ、業務効率が低下するほか、運用コストの増加にもつながるでしょう。
また、サイロ化が起こると、顧客に関する情報や売上情報などが社内に分散してしまいます。その結果、顧客からの問い合わせに対して、迅速に必要な情報を提供できなかったり、顧客が求めているサービスを案内できなかったりと、カスタマーサービスの品質低下を招くおそれがあります。データファブリックで企業内にあるデータを一元管理できれば、いつでも必要な情報にアクセスできるため、サイロ化によるデータ管理の煩雑化を解消できるでしょう。
データガバナンスを強化する
データファブリックの実現により、データガバナンスの強化も実現できます。ユーザーがいつでも自由にデータへアクセスできる状態は、セキュリティ面でのリスクがあります。データファブリックでは、データにアクセスするための権限設定や、データのコピー・移動、共有などの操作設定に対して制限を設けることも可能です。ユーザーごとに適切なアクセス権を付与することで、セキュリティレベルが向上します。
さらに、データファブリックでは、オンプレミスやクラウド間でのデータ移動を自由に行える点も特徴です。データのバックアップ・冗長化が可能となるため、災害やサイバー攻撃の被害に遭ったときにデータが紛失するリスクを抑えられます。
データファブリックの活用は金融業界の課題解決につながる
レガシーシステムからの脱却・DXの推進を進められる
金融業界で用いられているシステムの多くはオンプレミスによって構成されており、金融機関独自の開発・拡張が進んでいます。このようなレガシーシステムからの脱却と、DXの推進は、金融業界における大きな課題です。レガシーシステムから脱却するためには、まず企業内のデータを効率的に管理し、利活用できる状態を作らなければなりません。
データファブリックによって、データを一元管理できる状態にすれば、従来よりもデータをスムーズに利活用できます。その結果、データを基にした正確性の高い経営判断を下せるようになり、レガシーシステムからの脱却・DXの推進を円滑に進められるでしょう。
高いセキュリティ水準を保てる
競争に勝つための施策を立案できるようになる
近年では、他業界の企業が金融業界へ続々と参入し、競争が激しくなっていることも課題の一つです。これまで金融サービスを取り扱っていなかったIT企業などが、金融市場へと進出しています。
顧客ニーズも日々変化する状況下で、選ばれる企業となるには、サービスの品質向上や改善、新たなサービスの立案が欠かせません。そのためには、現行業務を効率化し、従業員一人ひとりの負担を軽減することが重要です。
データファブリックによって分散しているデータを一元管理すれば、データ管理の負担を軽減できます。その結果、サービスの改善や新たなサービスの立案により多くの時間を割けるようになるでしょう。
データファブリックを実現させるためには?
データファブリックを実現させるためには、具体的に何からはじめればよいのでしょうか。この章では、データファブリックを実現させる方法を解説します。
企業内のデータを整理・可視化する
データファブリックのソリューションを導入する
データを整理できたら、データファブリックのソリューションを導入します。大手のストレージベンダーなどでは、さまざまなタイプのデータファブリックソリューションを提供しています。ソリューションを導入することで、より効率的に企業内のデータ管理が可能となるでしょう。自社の規模やデータ量、予算などを考慮したうえで、自社に適した製品を選定することが重要です。
金融業界でビッグデータを活用した想定事例
金融業界でもデジタル化が進んだことによって、ビッグデータの活用が求められています。この章では、金融業界でビッグデータを活用した想定事例を3つ紹介します。
ビッグデータとAIを組み合わせたサービスを提供してLTVの向上を実現
位置情報のビッグデータで経済分析
ある銀行では、ビッグデータの一つである携帯電話の位置情報データやクレジットカードの決済情報などを活用し、特定地域に滞在している人の数や売り上げ動向、生産活動などの経済分析を実施しました。サービス業については、それぞれの施設における滞在人口が、来店客数と相関している可能性が高い点に着目。施設における滞在人口を正確にカウントすれば、来店客数または売上高をナウキャスティングできることが明らかとなりました。
製造業では、事業所データや昼間人口比率などの時間帯別の滞在人口分布を利用して、比較的大規模な工場敷地を特定。その地点の滞在人口をベースに、生産活動をナウキャスティングする指標を作成しました。特に輸送機械や生産用機械といった労働集約的な業種の生産に関しては、工場敷地の滞在人口によりかなり高い精度でナウキャスティングできることが示されました。
上記の分析によって、位置情報のビッグデータが経済分析に有効である可能性が高いと判明しました。
ビッグデータを資産運用提案シーンで活用
まとめ
データファブリックによって、企業内のデータにいつでもアクセスでき、自由にデータを収集・利用できる環境を構築できます。効率的にデータを利活用できる状態になれば、企業全体の生産性アップにつながります。部門間・組織間での連携がスムーズになるため、サイロ化の解消も期待できるでしょう。
また、データファブリックの実現は、金融業界における課題解決の手段としても有効です。データをスムーズに利活用できれば、データを活用した現場の業務がよりスムーズになるだけでなく、データを基にした正確性の高い経営判断につながり、レガシーシステムからの脱却・DXの推進を円滑に進められます。さらに、高いセキュリティレベルのシステム構築にもつながります。
データファブリックを実現させるためには、まず企業内のデータを整理・可視化することが不可欠です。企業内で使っているサービスや機器、使用しているデータなどを洗い出し、それらが必要かどうかを選別していきます。データを選別できたら、データファブリックのソリューションを導入しましょう。
データファブリックを実現するためにおすすめのソリューションが「Appian(アピアン)」です。Appian標準API、標準プラグイン、接続IF作成用のデザインテンプレートがあるため、容易に既存システムを接続・結合することにより、データを移動させる手間が発生しないため、開発作業の効率化が可能です。プロジェクトの開発期間を短縮し、大幅なコスト削減を図れます。
Appianは、プロセスマイニングの機能も搭載しています。プロセスマイニングによって適用業務のリードタイムを可視化し、ボトルネックを発見できます。組織や担当者のパフォーマンス傾向を把握・分析することで、迅速な対応と業務プロセスの改善も実現できるでしょう。
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