テクノロジーの進化によるシステム開発の未来 2025

テクノロジーの進歩によってシステム開発の方法は大きく変わってきました。特にローコード開発と自動生成AI(人工知能)の融合により、システム開発の未来はさらなる進化を遂げることが予想されます。本記事では、ローコード開発とGPT(Generative Pre-trained Transformer)などの自動生成AIの融合について触れながら、2025年のシステム開発の新しいスタンダードについて考えていきたいと思います。

テクノロジーの進化 -ローコード開発の動向-

近年、ローコード開発というキーワードが脚光を浴び、プログラミング開発が得意なシステムインテグレーターの想像を超えるスピードで利用する企業が増えています。ローコード開発とはプログラミング知識のないユーザーでも直感的にアプリケーションを作成することを指します。ローコード開発は、開発プロセスを効率化し、アプリケーションの迅速な開発を可能にします。さらに、最新の技術と組み合わせることで、次世代のアプリケーション開発に革新をもたらす可能性を秘めています。

市場調査会社のITR社がまとめた「ITR Market View:ローコード/ノーコード開発市場2023」によると、2021年~2026年のCAGRは16.8%、2026年度には1,300億円超となり、2021年度の市場規模の2倍以上になると予測されています。

ローコードとノーコードの開発市場規模

図1.ローコード/ノーコード開発市場規模推移および予測(2020~2026年度予測)

出典:ITR「ITR Market View:ローコード/ノーコード開発市場2023」(https://www.itr.co.jp/report/marketview/m23000400.html)

テクノロジーの進化 -自動生成AIの動向-

一方、2022年末から、ChatGPT、GPT4、Jasper Chat、Notion AIなどが世間をにぎわせていますがこれらは自動生成AI(ジェネレーティブAI)と呼ばれるものです。
自動生成AIにもいくつか種類があり、経済産業省では次のような種類を例示しています。

生成AIの例

図2.生成AIの例

出典:経済産業省「半導体・デジタル産業戦略 P.39 生成AI(Generative AI)の革新性」(https://www.meti.go.jp/press/2023/06/20230606003/20230606003-1.pdf)

自動生成AIは、大量のデータから学習して人間のような文章やコンテンツを生成することができる技術です。これらの技術は自然言語処理や深層学習の手法を応用し、様々な作業や仕事へ適用することで人間単独でアウトプットするよりも高いパフォーマンスを発揮することができます。


これらのAIで利用されうるエンジン部分(学習モデル)は先行学習という段階を経ており、汎用的な知識を獲得しているため、AI自身が様々な情報を組み合わせることでAIが未経験の分野の新たな命令やタスクに適用する際も適切な回答をしてくれます。これにより、GPTモデルは自動的に文章を生成したり、意思疎通を行ったりするAIアシスタントとして利用されることがあります。

Chat GPTを活用して見込まれるサービス提供の種類として、経済産業省は次の通りまとめており、様々な産業での活用が見込まれると発表しています。

生成AIの活用状況

図3.生成AIの活用状況

出典:経済産業省「半導体・デジタル産業戦略 P.40 生成AIの活用状況」(https://www.meti.go.jp/press/2023/06/20230606003/20230606003-1.pdf)

ローコード開発と自動生成AIの融合によって変化するシステム開発

ローコード開発と自動生成AIのこれらの2つの技術が組み合わさることで、2025年(2年後)には新しい次元のシステム開発が可能となると考えています。
現在は海外では様々な業務アプリケーションに組みこまれたサービスがリリースしており、英語での対応が先行しておりますが、いずれ日本語対応されることになると思われます。海外の先進国だけでなく日本でも同じ状況になることが容易に想像できます。


では、ローコード開発と自動生成AIの融合によってシステム開発の目線で何が起こるかを考察していきます。

自動生成AIを活用したシステム開発の超高速化

システムの開発スピードと効率が飛躍的に向上します。従来のシステム開発では、プログラミングスキルや複雑なコーディングが必要でしたが、ローコード開発プラットフォームを利用することで、直感的なインターフェースでアプリケーションを構築できます。さらに、自動生成AIを活用することで、開発者は自然言語による会話を通じてアプリケーションの要件や仕様を伝えることができます。

例えば、「顧客の入会申込書のWEBページを作成してください。申込データ受領後に申込内容を確認する画面を作成し、確認後に、承認する、プロセスを自動化するアプリケーションを構築してください」といった要件を伝えるだけで、AIがアプリケーション生成の提案を行ってくれます。これにより、開発者は従来型の開発よりも素早く高速にアプリケーションを作成することができます。

当然、AIが完璧なアプリケーションを構築する未来は、まだ数年以上先になると想像しますが、システム開発で最初にやるべきことは、AIに要求事項を伝え、アジャイル開発の土台となるアプリケーションを生成していくことになるでしょう。

自動生成AIが実現する人間の知識と常識を超えた最適なサービス

システム開発のプロセスにおいて、人間の要望とナレッジをシームレスに連携することで要件定義・設計・開発、テストのすべての工程が効率的になります。

開発者はローコード開発プラットフォームを使って直感的にアプリケーションを構築し、自然言語による会話を通じてAIに要件や修正を伝えることができます。AIは、開発者の意図を理解し、最適なアプリケーションを生成してくれます。さらに、AIは過去の事例やデータを分析し、開発者に対して開発者の経験に依存しない積極的な改善提案を提供することも可能です。

これにより、アプリケーションの品質やパフォーマンスが向上し、人間である開発者が単独で作成するより明らかに優れたアプリケーションを短期間で作成することができます。AIを利用せずに開発することが非常識になり、機能要件だけでなく非機能要件においてもAIを頼りながらシステム開発するのが常識になっていきます。

自動生成AIで激変するユーザーエクスペリエンス

アプリケーションのユーザーエクスペリエンスも大きく変わります。ローコード開発と自動生成AIの融合により、開発者はユーザーのニーズや要求をより正確に理解し、それに応じたアプリケーションを開発することができます。

ユーザーは自然言語でアプリケーションと対話し、AIアシスタントからのインテリジェントな洞察を得ることができます。例えば、在庫の変化を把握したい場合やタスクの完了時間を見積もりたい場合、ユーザーは自然な会話の形でAIに質問をすることで、迅速かつ正確な情報を得ることができます。

テクノロジー進化によって注目されるBPMS領域とエクサの予測

ここまでは、ローコード開発と自動生成AIについての考えをお届けしましたが、この2つのテクノロジーの進化により加速度的に進化が期待されるのは「BPMS」とよばれる領域です。

BPMSは、ビジネスプロセスの自動化や改善をサポートするツールセットであり、ビジネスプロセスのモデリング、実行、監視、最適化などの機能を提供します。これにより、企業は効率的なプロセスを構築し、生産性を向上させることができます。

最近ではより高度なBPMSを実現するためにRPAやAIを組み込み合わせ、「i」を付けて「iBPMS(intelligent Business Process Management Suite)」とも呼称されるようになってきています。

エクサも、iBPMSの領域には注目しており、企業のビジネストランスフォーメーション(BX)を支援する活動をしております。

iBPMS領域においては、グローバルリーダー(※1)と称される「Appian」という製品があり、エクサでも取り扱っております。
ではここからは、Appianを例にしてiBPMS製品が自動生成AIによってどのような進化を遂げていくのか今後の進化について予測してみたいと思います。

(※1)Appianは、ガートナー社、フォレスター社の複数のエンタープライズテクノロジー市場(ローコードアプリ開発、デジタルプロセスオートメーション(DPA)、ダイナミックケースマネジメント(DCM)、インテリジェント・ビジネスプロセスマネジメント・スイート(iBPMS)など)の調査において、「グローバルリーダー」として認められている

Appianの特長

Appianは、ローコード開発プラットフォームとBPMS機能を統合したソリューションを提供しています。開発者は直感的なインターフェースを通じてアプリケーションを作成し、ビジネスプロセスのモデリングや自動化を行うことができます。
AppianはAIの活用にも注力しています。以前より自動生成AIを活用したプロセスの最適化や予測分析などもプロセスマイニングの機能として実現していますが、自動生成AIの進化とAppianとの融合によって、さらなる進化が期待されます。

業務を自動化するワークフローの自動生成

自動生成AIを活用することで、ビジネスプロセスの自動化が容易になります。例えば、「自動生成AIを活用したシステム開発の超高速化」で触れたように自然言語で「顧客の入会申込書のWEBページを作成してください。
申込データ受領後に申込内容を確認する画面を作成し、確認後に、承認するプロセスを自動化するアプリケーションを構築してください」という指示をすると、Appianが自動的に適切なワークフローを生成し、請求書の作成や承認プロセスを自動化します。

AIによる業務の最適化と予測分析

自動生成AIを活用したアプリケーションでは、ビジネスプロセスの最適化や予測分析が可能になります。
例えば、AppianはAIを活用して蓄積されたデータを分析し、生産性の向上やコスト削減のための改善策を提案します。さらに、将来の動向や需要予測に基づいて意思決定を支援することも可能です。

ユーザーエクスペリエンスの向上

ローコード開発と自動生成AIの組み合わせによって、アプリケーションのユーザーエクスペリエンスが向上します。
開発者は直感的なインターフェースを通じてアプリケーションを作成し、ユーザーは使いやすいUIとスムーズな操作性を体験できます。また、自動生成AIが生成するコードやロジックは、最適化されたものであり、高いパフォーマンスと品質を提供します。

インテリジェントなビジネスプロセス管理

AppianのBPMS機能と自動生成AIの統合により、ビジネスプロセスの監視や最適化が容易になります。自動生成AIはビジネスプロセスのデータをリアルタイムに分析し、問題やボトルネックを検出します。その結果に基づいて、Appianは適切なアクションや改善策を提案し、ビジネスプロセスの効率化と品質向上を支援します。

このように、ローコード開発と自動生成AI、そしてBPMSの統合は、2025年のアプリケーション開発において革命的な変化をもたらす可能性があります。ビジネスプロセスの自動化や最適化、予測分析、ユーザーエクスペリエンスの向上など、さまざまな領域で効果を発揮することが期待されます。

テクノロジーの進化につきまとう課題

ここまでテクノロジーの進化の例として、ローコード開発と自動生成AIがもたらす素晴らしい変化についてお話しましたが、ローコード開発と自動生成AIの融合もいくつかの課題も存在します。
例えば、AIが開発者の意図を正確に理解することや、適切なコードを生成することが難しい場合があります。また、セキュリティや品質の問題も懸念されます。

またAI自身の問題だけでなくそれを利用する人間側の問題も存在します。開発者自身が道徳的・倫理的な判断をしながらAIとのコラボレーションをする必要があります。

AIが生成したコードを、開発者が適切かつ倫理的に妥当であるかを判断する責任を持つ必要があります。開発者は、AIが生成するコードがプライバシーや人権などの基本的な倫理原則に違反していないかの確認も必要があります。また、AIモデルのトレーニングデータにも倫理的なガイドラインを組み込むことが重要です。

日本でも自動生成AIの急速な普及に伴い、総務省と経済産業省が中心となり、事業者が正しく安全に自動生成AIを利用できるようにガイドラインの策定が進んでいます。

参考:経済産業省「AI原則実践のためのガバナンス・ガイドライン Ver. 1.1」

自動生成AIを利用することで発生する偽情報による社会の混乱や機密情報の流出のリスクを正しく認識し、国内のAI開発力強化を進めています。

まとめ

最後に、2025年のアプリケーション開発において、ローコード開発とGPTなどの自動生成AIの融合は大きな変革をもたらすと期待されます。

開発スピードの向上、ユーザーエクスペリエンスの向上、そして開発者とAIの協力関係の強化など、様々なメリットが存在します。ただし、技術の進歩に伴う新たな課題への対応も必要となると予測しています。
未来のアプリケーション開発に向けて、ローコード開発と自動生成AIの融合に注目し、各企業がその可能性を探求して継続的に発展・改善を繰り返していくことがますます重要になっていくでしょう。

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