アイデア検証で見えてくる意外なインサイト
~ユーザーに聞くアイデアの軌道修正でビジネスの勝率をあげよう~

アイデア検証とは?

サービスの立ち上げから身近な業務改善まで、あらゆる場面で必要とされるアイデアですが、そのアイデアで狙った通りの効果を得られるかは、実際に試してみるまでは分かりません。
本記事では、短期間のプロジェクトでアイデア検証を行った実例を通して、実施プロセスやどのようなインサイトの発見があったのかをご紹介します。

アイデア検証プロジェクトのご紹介

■ 概要

KDDI総合研究所様との3か月半の共同研究開発プロジェクトにて、「インセンティブと顧客嗜好を考慮したサービスの利用を通して、ユーザーの利用する決済手段は変わってゆくのか」というテーマを検証しました。

■ まずは自分以外がどうやって決済しているのかをチェック

本プロジェクトの検証したい内容は、言わば「お得を理由に決済手段を乗り換える可能性があるか」です。そのため、何かしらお得情報のユーザー提示が必要になりますが、本プロジェクトではコンビニでの電子決済やクレジットカード決済のポイント還元率と、ポイントカードのポイント付与率、その他お得に関するキャンペーン情報を収集したリソースが利用可能であったため、コンビニでの決済に焦点を当て、検証を行うこととしました。

まずはコンビニで自分以外の人がどのように決済を行っているのかを知るために、行動観察を行うエスノグラフィ調査や、アンケート調査といったユーザー調査を行いました。

調査対象者は、予算の都合上、年齢や属性の多様性を考慮しながら、会社の同僚や、プライベートの知人にお願いして実施しました。

その結果、「電子決済サービスはうまく使えるか心配」といったハードルがあり、興味はあるが使わないでいる層や、お得な決済手段があるのは知りながらも、特に差し迫った理由がなく、現在の支払い手段を変えるつもりがないといった層がいることがわかりました。

■ 今回ターゲットとするユーザーと、そのユーザーに対して立てた仮説

ユーザー調査の結果を踏まえ、ユーザーを「能力」と「興味」の2軸で捉えるフレームワーク(SEPIA法)を用い、「サービスを使う能力( =ITリテラシー)」と、「お得に対する興味」の高低でユーザーを4グループに分類しました。(図1)

この中でも、「お得な支払方法に興味はあり、お得になるための行動を起こすポテンシャルはあるが、ITリテラシー的に新たな支払い方法を試す自信がないタイプ(期待先行ユーザー)」であれば、お得情報に現在障壁となっているITリテラシーを克服できるような仕組みをプラスして提供できれば、支払い手段に対する行動変容を見込めるのではないか?という仮説を立て、これを軸にサービスアイデアを固めてゆきました。

能力と興味のマップ

図1 「能力」と「興味」の2軸で分類したユーザー


■ アイデア検証方法

アイデア検証用に作成したWebアプリを49名に1週間利用してもらい、利用前後の行動や思考の変化をアンケート調査結果から分析しました。

※アイデア検証用アプリに関する補足

GPSでの位置情報から、その周辺のコンビニエンスストアで使える決済手段とその還元率、キャンペーン情報を組み合わせて考慮し、お得順にユーザーに提示するアプリを本検証用に作成しました。また、新しい支払方法を試す自信がないユーザーを支援するための、各決済手段の利用手順や、アプリ起動リンクなどを提示する機能も搭載しました。

Value Pay

図2 検証対象ユーザーに配布した検証用アプリのコンセプトと利用手順を記載したパンフレット


■ アイデア検証結果ー仮説を覆す意外なインサイトの発見ー

アンケート結果を分析すると、「どの支払い手段がお得かどうかを気にする」ユーザーが、全体で15%増加したという結果が得られ、お得は支払手段の変更に影響を与える可能性があることが検証できました。一方で、その15%に含まれていたのは、本来お得に興味を持っていないはずの「冷静・合理的ユーザー」、「ミニマムユーザー」であったという想定外の結果を得ることとなりました。
比較と考察結果のグラフ

図3 「どの支払い手段がお得かどうかを気にするユーザーの割合」比較結果と考察結果

この理由を探るために、「お得に対する考えが変わったきっかけ」を自由記述形式で質問したアンケート回答を確認すると、「『%還元』という表記だとどれくらいお得かピンときませんでしたが、1000円買い物するのに40~50円くらいお得になることに驚きました」といった、「お得の見える化」を理由とする回答が最も多いことがわかりました。
ユーザーの声

図4 アンケート結果で得られた声(一例)

これらの結果から、

  • 「冷静・合理的ユーザー」と「ミニマムユーザー」の中には、「お得に興味を持つチャンスのなかったユーザー」が一定数潜んでいる可能性がある
  • このユーザーをターゲットに「お得の見える化」を提示した際に得られる驚きをきっかけとして、決済手段を今後変更するような行動変容を促すことができる可能性がある


といった新たなインサイトを得ることができました。

さいごに

ご覧いただいたように、アイデア検証を行うことで、ビジネス仮説が思い込みであることへの気づきや、思ってもみなかったインサイトを得られることがあります。

今回のケースでは、最初のアイデアのままサービスをローンチしてしまった場合、その軌道修正には莫大な費用と期間がかかることでしょう。一方で、どんなに簡易的でもよいので、ユーザーの声を聞くアイデア検証を行うことで、そのアイデアが効果的なものであるかを確認でき、ターゲットや価値提供方法の軌道修正が可能になります。
是非、皆さんの業務にも活かしてみてくださいね。

デザイン思考で新規ビジネス価値創出をサポートする FinTech つなぐラボ

エクサのFinTechつなぐラボでは、アイデア検証や、ユーザー調査の実施を支援しています。 事例やご支援内容はこちらのページでご紹介しています。

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