第2回 従来型業務プロセスの弊害

ものづくりコラム

1. 現場の生の声

グローバルな市場に進出している様々な企業において、近年、以下のような問題が聞かれます。

  • 「海外案件での逸注が多くなってきている」
  • 「見積依頼自体が来なくなっているケースがある」
  • 「手間のかかる特注品ばかりになってきている」

この中で最初の2つは、「自社製品が顧客のニーズや期待する価格に合っていない」、「顧客のニーズに合った自社製品があっても選択してもらえない」、および「検討してもらう前に既に門前払いになっている」という事であり、非常に重大な問題と考えます。日本企業がいくら良い製品や企業能力を持っていたとしても、それを顧客のニーズに合致した形で効果的に示す事ができないという事であり、ゆゆしき問題と考えらえます。

2. 問題が起こる原因

それでは、何故このような事が起こっているのでしょうか。
海外の顧客企業も、自社のニーズに合った最適案を選択するため、複数の企業に対して見積依頼を出して各社の提案を比較検討する事になりますが、この見積りにおいて、以下のような違いがある事がわかってきました。

  • 海外の競合企業は、見積時間は「1日以内」
  • 日本企業は、見積時間は「数週間」

実際に複数の日本企業から、「海外の競合は1時間で見積りを作成するが、自社では2週間かかってしまう」などという生の声が寄せられております。

それではこのような違いは、どのようにして発生しているのでしょうか。

3. 日本企業の一般的な業務スタイル

一般的な日本企業の業務スタイルは、最初に営業がお客様にヒアリングしてニーズを文書化し、その文書化された情報を起点に、営業→営業技術→設計と担当部署が順番に検討して他部に伝達するという手順をとります。
最初にお客様のニーズを聞いた後、営業の知識でカバーできる場合は営業が検討して「標準品」を提案し、営業技術の知識でカバーできる場合は営業技術が検討して「準標準品」を提案し、営業技術の知識でカバーできない場合は設計が検討して「特注品」を提案することで、顧客毎に異なるニーズに対して柔軟に対応する仕組みとなっています。
なお、日本企業は競合他社との差別化のために「ニーズに柔軟に対応できる技術力」をアピールする傾向がありますので、最終的に「特注品」を提案する事になるケースが多いと言えます。

以下に、その典型的な日本企業の業務フローと、一般に発生している問題を示します。

見積りおよび設計の業務の流れと主な問題
見積りおよび設計の業務の流れと主な問題

この図を見てもわかる様に、以下のような問題があります。

  1. 各部署でニーズや仕様のチェック・確認作業や問合せ作業が発生する。
  2. 各部署で人手での検討や各種文書の作成が発生する。
  3. 上記1、2の作業を各部署が順番に行うことから、トータルで時間がかかる。
  4. どこかのステップで抜け・漏れ、および変更がある場合、作業の手戻りが発生する。
  5. 自社に都合のよい製品仕様にお客様を誘導できない。また特注部分を減らす事が困難。
  6. 仕様がなかなか決まらず、詳細仕様の確定まで時間がかかる。

その結果、一般的な日本企業では以下のような現象が発生しています。

  • ニーズや仕様確認のための複数回のお客様訪問や見積書等の書類作成の負荷が大きく、営業部が「不夜城」となっている。
  • 見積りに時間がかかり、提案期限に間に合わないケースがある。
  • 特注部分を検討できる設計部のベテランの負荷が高く残業が多い。また、多数の案件をこなしたくてもベテラン要員数がボトルネックになっている。

このような業務スタイルであるため、日本とは異なる規制や仕様が存在し、さらに間に「海外代理店」などが介在したりする海外市場においては日本以上に時間がかかり、「見積りに数週間」かかるという事になります。

4. 日本企業と海外の競合企業の業務スタイルの違い

日本企業は「ニーズに合わせた擦り合わせ型」

このような日本企業に一般的な営業・設計・生産の業務スタイルは、国内市場が主な市場であった際にできた「組立・製造」を重視した「擦り合わせ型」のスタイルと言えます。
「ニーズへの柔軟な対応力」を差別化ポイントとする事からもわかるとおり、「設計・製造」が一番付加価値を生んでいた当時の従来型のスタイルです。
この「擦り合わせ型」は、案件ごとに顧客のニーズに合わせて柔軟に検討するという「受け身」のスタイルであるため、商談の中で自社にとって都合の良い標準・準標準製品等への誘導や、各種代替案の提案がなかなかできず、特注製品の割合が減らない事になります。

海外の競合企業は「標準・準標準製品中心型」

それに対し、海外の競合企業は、グローバルな市場をターゲットとして事前に市場に関してマーケットの調査・分析を行い、ベース製品およびオプション品に関して標準・準標準品を定義し、それらの組合せで様々な顧客ニーズに対応できるようにしています。
そして、海外の競合企業は、これらの組合せで提供できるバリエーションの製品に関しては、見積りや各種代案を迅速に提示できるようにしつつあります。
このように「標準・準標準製品」に的を絞る事により、ボリュームゾーンとなる「標準・準標準品」においてコストダウンを実現し、さらに迅速な見積りや提案による営業競争力アップを実現してきています。いわば「攻め」のスタイルと言えます。

5. 今後の環境の変化への対応

つまり日本企業は、海外市場に進出し、かつ製品バリエーションも増えつつあるという環境変化があるのに、いまだ「組立・製造」を重視した従来型の業務スタイルであると言えます。
それに対し、海外の競合企業は、新たな付加価値を作り出す部分である「各市場ニーズの把握」、「各市場向けの製品コンセプト構築」、「受注力強化」、「引合情報の管理」などの「顧客との接点の強化」にシフトしてきていると考えられます。

その結果として、海外の競合と比較して、日本企業は「ボリュームゾーンである標準・準標準品の価格が高い」、「検討時間が競合に較べて大幅にかかる」という結果となり、冒頭に挙げた、

  • 「海外案件での逸注が多くなってきている」
  • 「見積依頼自体が来なくなっているケースがある」
  • 「手間のかかる特注品ばかりになってきている」

という結果になり始めているのではないかと考えられます。

今後は、「Industry4.0」や「インダストリアル・インターネット」等でもわかるとおり、ITを駆使した販売・生産技術のイノベーションが世界的規模でさらに進みます。
クラウド環境をプラットフォームとし、「ユーザのニーズ」に合致した仕様の製品を迅速、柔軟、かつ安価にユーザに提供するための企業間連携もさらに進むでしょう。

このように激化するグローバル競争の中で、日本企業も今後は業務スタイルや仕組みを見直して「変化への対応力」や「勝てる仕組み」を構築する必要がありますが、それはどのようにしたら良いでしょうか。

次回は、「今まで改善が困難であった理由」について述べさせて頂きます。

TOP