第3回 装置産業の設備保全の方向性 (1/2)

連載コラム:AI・IoTによる未来の保全

第1・2回では、マクロの統計データから「装置産業の設備保全・保守メンテナンスを取り巻く環境」について検討しました。特に「経営課題を解決するための設備管理の課題」、「設備の老朽化による事故の多発」、「人材リソースと知識・ノウハウの喪失」、プラントのスマート化の技術、法制度の動向について見てみました。第3・4回では、エクサの経験をもとに、設備保全・保守の現状の問題から設備保全・保守の改革ポイントについて考えてみます。

(1)設備保全の現状の問題

多くのプラントでは、主要な課題として、「安全性:設備の老朽化による事故の回避」、「生産性向上:設備ダウンタイムの削減」、「作業効率:保全のコストパフォーマンス向上」、「技術伝承:ノウハウの蓄積と共有」といった点を挙げています。現場の特定の部門にフォーカスして解決の方向性を見いだすか、部門を横断して企業全体として考えるかの2つに大別されますが、(CMMSとEAMについて別の回にて詳細解説)今回は後者の考え方を軸に解決の方向性を見ていきます。上述の課題に対する解決策を考える上での重要なポイントとして、「保全戦略および保全計画の策定」、「設備保全のライフサイクルと保全業務におけるPDCAサイクル」、「保全業務の高度化」、「IT基盤による次世代の設備保全システムの実現」の4つが挙げられます。第3回、第4回ではそれぞれの内容について触れていきます。

図1 設備保全の課題と解決の方向性(例)

IBM Maximo、Maximo Base Kit紹介資料

IBM Maximoの概要からMaximo Base Kitのカバー範囲、Maximoを活用した設備管理・作業管理のPDCAイメージと実際の画面を用いて各主要機能の詳細を説明しています。
※「Maximo Base Kit」はIBM Maximoをベースとした短期導入・低価格ソリューションです

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(2)保全戦略および保全計画の策定

保全計画は、増大する保守コストの抑制と、設備ダウンタイムの削減や事故発生の回避のバランスが取れた計画が求められますが、保全計画の予算は前年比で組まれることが多く、根拠をもとに必要な保守を特定した計画が作成できないケースが多いようです。この原因として保守効果を測定したデータを収集・分析して保守の優先度を決定できていない点が挙げられます。
保全計画策定プロセスの詳細は、企業により多少の違いが見られますが、概ね、図2に示しますように、分析や優先度を設定する保全戦略から実行方法としての保全計画を導出するプロセスになっています。最初にリスク分析、故障解析を行い、適用可能な保全方式、保全箇所の優先度を決定して保全戦略を作成します。
保全方式では、対象物により、①事後保全、②時間基準による予防保全、③状態基準保全(condition-based maintenance)による予知保全や、④信頼性中心保全(Reliability-centered maintenance)を選択します。これらは、保全時期、機器の寿命推定から検査時期、状態監視箇所をもとに検査を行い、コストと信頼性のバランスが取れた保全計画を策定します。
これら一連のプロセスでは、検査対象設備、機器の詳細な情報、実施する体制とスキルを保有する要員、調達した部品など、設備に関わるヒト、モノ、カネ、メンテナンス業務に関わる様々な情報を一元化し、プロセスの各所で評価分析のためにこれらの情報を活用する環境が必要です。

図2 保全計画策定プロセスの例

IoT時代到来 予知保全への挑戦

昨今「予知保全」に注目が集まっている理由、実現に向けた検討ポイント等をご紹介しています。

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筆者略歴

山口 裕也

株式会社エクサ Smart営業本部 Smartファクトリー営業部

第3回、第4回執筆

主として製造業を中心とした現場業務におけるシステム活用の支援・提案に従事。様々なお客様(現場)の声に対し、最新のトレンドや過去の事例をふまえた最適な情報を提供することで、デジタル活用による業務改革の仕組みづくりに貢献する。

SFS 山口 裕也

江口 隆夫

株式会社エクサ エンタープライズビジネスユニット ビジネスバリュー推進室

㈱野村総合研究所(1990~2000年)、日本アイ・ビー・エム㈱(2000~2013年)コンサルティング部門などを経て、現職。博士(工学)。東京大学大学院工学研究科 非常勤講師(2013年~現在) 製造業のお客様を中心にIT戦略・業務改革構想フェーズの実施支援、特に製品開発領域の業務改革、システム化構想など、コンサルティングプロジェクトマネジャーを40件以上担当。

コンサルタント 江口 隆夫

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