スマート保安の導入効果と海外事例解説

技術革新や少子高齢化による人手不足などを背景に、保安業務にAI・IoT等の先端技術を導入する「スマート保安」が注目されています。スマート保安を導入することで、業務効率化や保安業務の質の向上といった効果を得ることができます。本記事では、経産省の「スマート保安先行事例集」をもとに、スマート保安で期待される効果と、導入を成功させるための要因などを解説します。

スマート保安とは、IoTやAI等の先進的な技術を活用し、産業保安業務の効率性や安全性を高めるための方策・考え方のことです。スマート保安の旗振り役となっている経済産業省は以下のように定義しています。


「①国民と産業の安全の確保を第一として、②急速に進む技術革新やデジタル化、少子高齢化・人口減少など経済社会構造の変化を的確に捉えながら、③産業保安規制の適切な実施と産業の振興・競争力強化の観点に立って、④官・民が行う、産業保安に関する主体的・挑戦的な取組のこと。」


出典:経済産業省(スマート保安官民協議会)「スマート保安推進のための基本方針


経産省は2017年4月に「スマート保安先行事例集」を発表し、2016年までに民間企業によって取り組まれたスマート保安の取組を紹介しました。また、2022年には「スマート保安先進事例集」を公表し、スマート保安における特徴的な取組を紹介するとともに、期待される効果や、検討から展開の各段階におけるよくある課題および解決策を提示しています。

スマート保安が求められている背景には、日本の製造業が抱えるさまざまな課題が顕在化していることが挙げられます。これらの課題は従来型の産業保安業務では対応しきれないことから、IoTやAIといった先進的な技術を活用して、効率性や安全性を高めつつ保安業務を推進することが不可欠となっています。

経済産業省では、スマート保安を通じ、一層の産業保安の安全性向上、企業の自主保安力の強化、ひいては関連産業の生産性向上・競争力強化、国民の安全・安心の向上を図っているところです。


以下では、スマート保安が必要とされる背景にある、日本の製造業をめぐる現状の課題やリスクについて解説します。経済産業省は、日本の現状として次のようなリスクが顕在化していると述べています。


  • 設備の高経年化
  • 人材の高齢化と人材不足
  • 技術・技能伝承力の低下
  • 災害の激甚化やテロリスク
  • 新型コロナウイルスの感染症リスク

参照:経済産業省「スマート保安の重要性とスマート保安官民協議会について


設備の高経年化

設備の高経年化は、多くの現場を悩ませる課題のひとつです。日本のプラント設備は、高度経済成長期に建てられた設備を現在まで維持しているものが多く、高経年化しています。更新せずに使用し続けているうちに高経年化が進んだ設備は、最新の設備に比べてパフォーマンスが低下していることが多く、故障や動作不良などのトラブルを抱えるリスクが高まります。

特に、高度経済成長期に建てられた設備は、すでに建設から50年以上経過しているものも多く、早急なメンテナンスや更新が求められている状況です。

人材の高齢化と人材不足

人材の高年齢化と人材不足は、製造現場だけでなく、日本全体にかかわる重大な問題です。2050年には日本の人口が1億人を下回ると予測されていますこの人口減少に伴って、生産人口も大きく減少し、人材不足はますます深刻化すると考えられます。

また、生産年齢人口(15~64歳)は1995年頃をピークに減少し続けていますが、今後はさらに生産年齢人口比率の減少が加速すると予測されており、人材不足がより深刻化することは確実といっても良いでしょう。


将来的な人材不足のさらなる深刻化は、近年の著しい少子化の進行からも予想されます。第二次ベビーブーム(1971年から1974年生まれの世代)の時代には200万人を超えていた出生数は、2016年に初めて100万人を割り込みました。さらに、2023年の出生数は過去最少の約72万6千人になると推計されており、少子化に歯止めがかからない状況です。現在の少子化は、近い将来の労働人口不足を意味しており、少数の担い手で産業保安業務を維持する必要性がかつてないほど高まっています。

こうした人口減少に加え、これまで産業保安の現場を支えてきたベテラン人材が定年に伴い大量に退職しつつあり、従業員のうち高齢者が占める割合も高まっているなど、高齢化も深刻な課題です。

技術・技能伝承力の低下

技術・技能伝承力の低下も、企業の技術を守り育てていく観点から重大な問題です。IoTやAI等の先端的な技術を産業保安に導入している企業は、全体から見ればまだ少なく、技術継承は熟練の従業員のスキルを「目で見て覚える」手法が中心となっています。この技術継承の方法は、スキルや知識を持ったベテラン人材の側の「教える能力」に左右される側面があり、技術のすべてを正確に伝えにくい点がデメリットです。

こうした技能継承の課題がある中で、前述のように産業保安を支えてきたベテランの人材が大量に退職していくと、若手の人材が技術を習得する機会に恵まれず、技術・技能の継承がうまくいかない可能性があります。検査周期の長期化や働き方改革等の影響も相まって、より技術の維持・継承が困難になっている状況です。

災害の激甚化やテロリスク

近年は、大雨や台風に伴う大規模な洪水氾濫や土砂災害等が頻発しており、毎年のように日本各地で大きな被害をもたらしています。事実、気象庁の観測によると、全国の1時間降水量80mm以上(「猛烈な雨」と表現される強さ)の年間発生回数は増加しています。地球温暖化による気候変動の影響から、こうした気象災害は今後さらに激甚化しても不思議ではありません。

また、大地震やそれに伴う津波のリスクも高まっています。南海トラフ地震は、30年以内の発生確率が70~80%と予想されており、発生した場合には本州から九州にかけての太平洋沿岸を巨大な津波が襲うとされています。また、首都直下型地震の発生も危惧されている状況です。

これらの自然災害は水害や建物の倒壊・損傷などをもたらし、停電をはじめライフラインが寸断されるおそれもあります。そうした場合には工場の稼働がストップし生産が滞ることはもちろん、従業員が出社できなくなり業務継続が困難になる課題に対処しなければなりません。

一度被害を受けた施設・設備、およびライフラインは復旧までに時間がかかることが珍しくなく、最悪の場合、技術・技能の継承が行われないまま時間が経過し、廃業を余儀なくされるケースもあります。

災害と同様に、テロにより業務停止が起こる可能性もあります。近年は地政学リスクが高まっていることもあり、安全保障上重要な製品を製造している企業や、操業停止により日本の産業に大きな影響を及ぼしかねない大企業などは特に、テロのリスクも考慮する必要があります。

BCP(事業継続計画)の策定など、非常事態に対する備えを万全にしておくことが大切です。

新型コロナウイルスの感染症リスク

2020年初頭に発生した新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、世界的に非常に大きなインパクトを与えました。感染防止のためのソーシャルディスタンスの確保や自粛要請など、社会経済活動が著しく制限されたことで、産業保安の現場にも影響を及ぼしました。

感染症対策により陽性反応者の隔離などが続くと、現場でのコミュニケーションが不足し、技術・ノウハウの継承に悪影響が生じかねません。

2024年現在、新型コロナウイルスの感染拡大は落ち着きをみせ、社会経済活動もコロナ禍以前の水準に戻ってきましたが、今後も新たな感染症による世界的なパンデミックが発生する可能性もあります。コロナ禍を教訓にして、将来的に再び大規模なパンデミックが発生した際に、いかに事業を継続して産業保安の技術を伝達していくかが問われています。

以上をまとめると、産業インフラ設備の高経年化や高齢化・人材不足は「事業環境の変化」、気象災害やテロ、感染症などのリスクは「産業保安を取り巻く環境の変化」と分類することができます。また、そこから「インフラ維持コストの増大」 や「熟練ノウハウの喪失」といった課題が見えてきます。

このような状況下で事業継続を確実なものとし、産業保安力を強化するための方策として、経済産業省では保安業務に IoT や AI 等を活用する新技術の実証や、こうした技術の活用を促す規制改革を進めています。

その際には官民が連携して技術革新やデジタル化、少子高齢化等の環境変化に対応した産業保安に関する取組を加速させる必要があり、そこでスマート保安が注目されているのです。経済産業省では、スマート保安を通じた一層の産業保安の安全性向上、企業の自主保安力の強化、ひいては関連産業の生産性向上・競争力強化、国民の安全・安心の向上を図っています。

では、民間と国はそれぞれどのような方針のもとで取組を進めているのでしょうか。次章ではそれについて見ていきます。

経産省では「スマート保安官民協議会」を設置し、「スマート保安推進のための基本方針」のもと、高圧ガス保安分野、ガス分野、電力保安分野などのそれぞれでアクションプランを策定・推進しています。また、「基本方針」では、民間と国のそれぞれで以下のような取組を推進するよう定めています。


スマート保安に向けた民間の取組

スマート保安に向けた民間の取組としては、新技術の開発・実証・導入や、積極的な人材育成を進めることを定めています。


①IoT・AI 等の新技術の開発・実証・導入

巡視におけるドローンの活用や、IoT・AI による常時監視・異常検知など、新技術の開発・実証・導入に向けた先進的な取組を進めます。


②スマート保安を支える人材の育成

現場における保安従事者の高齢化や人手不足等を克服し、スマート保安を中長期的に支えるためには、現場の最前線の状況や新技術に精通した人材が必要です。このことから、IoT・AI 等の新技術が現場において円滑に活用できるよう、スマート保安を支える人材の育成に継続的に取り組みます。

スマート保安に向けた国の取組

国としては、安全確保を前提としながら、保安規制・制度の機動的な見直しや、スマート保安促進のための仕組み作り・支援を行うこととされています。


①技術革新に対応した各種規制・制度の機動的な見直し

IoT・AI 等の技術革新を踏まえて各種規制・制度の機動的な見直しを進め、スマート保安の実現を促進します。また、新技術の信頼性の担保のあり方、社会受容性を向上するための方策についても検討し、新技術を正しく評価して規制・制度に的確に反映できるよう取り組みます。


②民間の取組への支援

企業が行う新技術の開発・実証・導入やスマート保安を推進するための人材育成等の支援に取り組みます。


③スマート保安の発信・普及(シンポジウムの開催、表彰制度の整備等)

スマート保安の先進事例を発信するなど、スマート保安による安全性や効率性の効果についての理解を促すことにより、スマート保安に向けた投資の促進・加速を図ることとされています。

スマート保安は日本だけでなく、海外でも取組が進んでいます。本章では、経済産業省が諸外国による産業保安のスマート化について調査した「産業保安のスマート化に関する海外動向調査等事業」の情報をもとに、海外のスマート化の現状について解説します。

産業保安のスマート化に関する海外動向調査の内容

この調査では、10か国の調査対象国に対してスクリーニング調査を実施し、うち5か国には詳細調査が行われました。

調査対象の10か国は以下の通りです。


  • インドネシア
  • ベトナム
  • インド
  • 台湾
  • 韓国
  • シンガポール
  • フィリピン
  • サウジアラビア
  • アラブ首長国連邦
  • カタール

調査内容としては、統計情報に基づくマクロ調査(1次エネルギー消費量、発電量、石油精製能力、1人当たりGDP、施設経年度、労働災害 等)、産業保安関連規制の概要がリサーチされました。

また、そのうち詳細調査を行ったのは以下の5か国です。


  • インドネシア
  • ベトナム
  • インド
  • 台湾
  • サウジアラビア

調査内容としては、スマート保安関連の規制制度、スマート保安技術の開発・実証・導入に係る取組、スマート保安への関心度合いを図るための外部環境のリサーチが行われました。

産業界におけるスマート保安技術の取組状況

ここでは、上記の調査のうち詳細調査を行った5か国について、スマート保安技術に関わる調査結果を抜粋してご紹介します。


インドネシア

インドネシアでは、主に農業分野でドローンが活用されていますが、ガス・電力・土木建築の分野での産業保安を目的としたドローンによる施設点検等の事例も増えつつあります。特に、テラドローン・インドネシア社が国内のドローン活用をけん引している模様です。

ドローンの活用事例として、例えば高圧送電線の航空検査においては、国有電力会社のPLN社がテラドローン・インドネシア社ドローンを利用し、送電線や周囲の植生の監視を実施。超高圧送電線の状態、ケーブルのたるみの状態、周囲の植生状況などの情報を収集しています。

また、石油精製所のメンテナンス支援として、インドネシア国営エネルギー会社PERTAMINAは、インドネシアバロンガンの巨大バルク原油貯蔵タンクのメンテナンスにHalo Robotics社のドローンを活用。1972年に製造されたタンクの設計図の更新や、タンク内部の検査を実施しています。

このほか、ルトゥエン水力発電所(PLTA)の建設に際し、テラドローン・インドネシア社のLIDARドローンを活用して地形マッピングを実施した事例もあります。


ベトナム

ベトナムでは、エネルギー、特に電力分野でスマート保安関連技術(AI、IoT)が最も導入されており、それ以外にも情報セキュリティ、スマート農業、消防対応に一部取り入れられています。

情報セキュリティの面では、AI技術によるIPアドレスの解析など、サイバーアタックへの即対応に貢献しています。

プラントの保全にもAIは活用されており、ベトナムの製油所にてNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトで開発される「予兆保全AI搭載RBM SaaS」を試用予定です。RBM(リスクベースメンテナンス)とは、リスク評価ソフトを用いてリスクを算定し、リスクによる優先度を基準に保全(検査、補修、更新など)を行うものであり、リスク(破損確率×破損の影響度)を基準とするプラント保全方法です。


インド

インドではスマート保安技術活用の一環として、同国最大のガス輸送会社や発電所でのドローン利用が広がりつつあります。規制面の整備や、インフラ、鉱業、農業、災害救援などにおける産業用ドローンの使用の促進がインド政府主導で進められている状況です。

主なドローン活用事例として、発電所での地形マッピング、備蓄容積分析、空中検査等の実施が挙げられます。インド最大の電力会社であるNTPCは、インド民間航空省の条件付き許可を得て、マディヤ・プラデーシュ州のヴィンディヤチャル超熱発電所とガダルワラ超火力発電所、チャッティスガルのシパット超熱発電プロジェクトの両方でドローンを使用し、地形マッピング、備蓄容積分析、空中検査を実施しています。

また、ドローンを使ったパイプラインの航空監視も行われています。インドガス公社(GAIL India Ltd)では、2014年に発生したパイプライン事故(18名死亡)を受けて、高度技術導入等による安全基準引き上げのイニシアチブがとられ、15,000kmのパイプラインを監視するためのドローンを配備。主に不法侵入者や異常の発見のために活用中です。将来的にはパイプラインの漏洩検出への活用も検討しています。


台湾

台湾では、台湾電力によるドローン導入や、国営石油元売企業である台湾中油が地熱発電の探索にドローンを活用した事例があります。

台湾電力は400万台湾ドルで非中国製ドローンを調達し、53機を検査業務に導入。当社の技能コンテストでは、従来の基本的な電力設備保守技術に加えて、初めてドローンによる巡視検査技術をコンテスト種目に加えています。

また、台湾中油は、経緯航太科技へドローン搭載熱感知画像処理装置を発注しています。台湾中油は台湾東部の宜蘭県で地熱発電の候補地を探索しており、ドローン技術を利用した地熱発電用熱源の用地開発を進める方針です。

台湾ではこのほか、製油所において機器の故障や性能の低下に関する予測のために、AIが活用されている事例があります。この事例では、AI技術の活用により、プラントからデータを収集し、そのデータからモデルを構築することで、機器の故障や性能の低下に関する予測を実施。実際の故障が発生する数週間から数か月前に、機器の動作に関する警告、異常発生日を提供できるようになりました。


サウジアラビア

サウジアラビアでは、主要産業である石油・ガス産業のインフラ技術開発を背景に、そのインフラ点検に供するドローン等先端技術の導入が活況を呈しています。化石燃料の消費の抑制と太陽光発電などの再生可能エネルギーの導入も加速しており、新規の大規模インフラの設備点検でもドローン活用が大きく見込まれているところです。

例えば、Saudi aramco社はデジタル技術の導入に力を入れており、ドローン活用においては、製油所のフレアスタック検査や緊急時対応シミュレーションを実施しています。これにより、従来は3日を要していたフレアスタックの検査が30分に短縮され、より安全となりました。

また、ドローンを使ったインフラ点検を展開する合弁企業を設立する動きも見られます。中東地域で非破壊検査サービスを提供するNDTコロージョン・コントロールサービスズとテラドローン社は、合弁会社「テラドローンCCS」を設立。テラドローン社のドローンを使ったサービスを展開する予定であり、さらにオランダのRoNikインスペクショニアリングに数億円を出資しています。


ここまで海外の事例をみてきましたが、次章以降では、経産省の「スマート保安先進事例集」をもとに、国内におけるスマート保安で期待される効果や実際の成功要因を中心にご紹介します。

スマート保安の推進により期待される効果としては、「AIシステム」、「IoT」、「防爆モビリティ」のソリューションごとに以下のものが挙げられます。

AIシステムの導入により期待される効果

AI導入により、従来は人が行っていた点検におけるデータ収集や、異常判断に係るプロセスが短縮または削減され、業務効率が向上します。

また、データに基づく異常予測による予防保全を実現でき、AIが故障箇所や原因、対策を判断する支援をすることで保安業務の品質が向上します。保安業務の質が向上することで、異常予測や点検漏れ解消等による事故リスクの低減も可能となります。

IoTの導入により期待される効果

IoTの導入により、事前準備や現地への移動をせずにデータを収集することが可能となるほか、常時監視も実現可能です。常時監視によるデータ蓄積により、遠隔での異常検知および異常予測できるようになります。

これらの変化を通じて、業務時間の短縮や業務品質の向上を実現し、常時監視により災害時に迅速な対応をとれるようにもなります。

さらに波及的効果として、点検および準備期間短縮による生産性向上も期待できます。

防爆モビリティの導入により期待される効果

防爆モビリティの導入により、従来は人が行っていた巡回、情報取得、データ処理・蓄積プロセスがロボットにより代替されます。たとえば巡回点検を防爆ロボットが行うことで、作業員の安全確保を実現しつつ業務時間を削減できるほか、情報取得が必要な箇所についてロボットが対応することでも業務効率化を実現可能です。

また、ロボットが取得した情報をデジタルデータとして処理し、蓄積することで高度なデータ分析が可能となり、業務の質が向上する効果も期待できます。

以下では、スマート保安を成功させるためにどうすれば良いのかについて、検討・開発・導入・展開のステップごとに成功要因をご紹介します。

検討プロセスにおける成功要因

経営層のスマート保安導入意識向上:

経営層がスマート保安導入に前向きであるほど導入の促進につながります。

その理由として、経営層が導入にコミットすることで予算的な支援を受けやすくなることや、経営層から従業員に必要性を説くことで、導入に向けて組織全体で意識改革が進むことが挙げられます。

また、経営層は経営全体を俯瞰しているため、自社の経営層目標を達成するうえでスマート保安が果たす役割を明示でき、導入に向けた機運を高めることが可能です。


スモールスタートでの導入開始:

パッケージはコストが高いため、導入のハードルが高いことが難点です。パッケージを導入して当初想定した効果が得られない場合、投資対効果(ROI)が非常に悪くなり、企業の財務状況に影響を与えかねません。

そこで、まずはスモールスタートで効果を確認できるものを選定すると良いでしょう。

スモールスタートで始めることで、導入時・導入後に問題が発生しても、早期に原因を特定してスムーズに改善できるほか、スマート保安の技術を理解し、適応するまでの時間を確保しやすくなります。


組織風土に応じた導入効果明示:

スマート保安等のDXに対し消極的な組織風土だったとしても導入に繋げられるよう、導入によって期待できる効果を明示して各部門の理解を促すと良いでしょう。

一方で、DXへの投資を促すために、DXの提案を受け付ける際にはあえて明瞭な効果を記載しなくとも受け付ける仕組みをつくることも選択肢の1つです。


開発プロセスにおける成功要因

技術設計・開発担当者と現場担当者のチーム組成と、適切なコミュニケーション体制の構築:

現場の担当者に対して複数回システム説明会を実施し、システムの理解向上・疑問解消に努めることで、現場の担当者からの理解を得る必要があります。

技術が高度すぎても現場は使ってくれないことに留意が必要です。特に、ベテランは考え方を変えることに対する抵抗が大きいため、理屈で納得してもらう必要があり、データ処理のプロセスの全体像をきちんと伝えることが大切です。


現場の現況課題を捉えた全体構成と実利用を考えた設計:

システムを現場で利用してもらうためには、実利用に耐えうるシステム構成・UX設計(通知・表示・画面遷移・入力等の方法・設計)が必要であり、設計途中から現場の意見を多くもらうようにするなどの工夫が求められます。


導入プロセスにおける成功要因

現場スタッフのスマート保安の必要性に対する納得感醸成:

現場の課題やニーズを把握しており、適切なソリューションを提案できる人材を育成することが重要です。手法の変化を伴う取り組みは押しつけになりがちなので、活用を担う人材が取り組みに参画し、成功体験を共有することも大事になります。


早い段階でコスト試算を行い、コスト面でのハードルの把握・解決:

できるだけ早い段階で、基本機能の導入に要するコストの見通しを持つことが重要です。なぜなら、機能については事後的に追加実装できても、コストがネックとなり導入できない事例があるためです。


展開プロセスにおける成功要因

組織的に「スマート保安」に注力する意識の醸成:

普段から国や業界団体で議論されている内容を把握し、組織としてスマート保安への理解を深めることが重要です。スマート保安の重要性が浸透していれば、新たな展開についての意思決定も円滑に行うことができます。


技術保有企業とのネットワーク:

外部の技術保有企業とのディスカッションから得られた気付きがきっかけとなり、スマート保安の取組を拡大させられるパターンもあります。特に通信会社や商社など、先端技術に明るい事業者からの情報提供は有用でしょう。

産業・エネルギー関連インフラは劣化が進んでおり、人材の高齢化や人口減少の進行から技術・技能継承を速やかに行う必要性が増しています。さらに自然災害やテロ、感染症の拡大など外部環境のリスクも踏まえると、先端技術を用いたスマート保安の重要性はかつてないほど高まっているといえるでしょう。

アジア諸国をはじめ、海外ではドローンやAI技術等を活用したスマート保安の事例が数多くあり、日本も遅れをとることなく先進的な取組を進め、知見やノウハウを蓄積していく必要があります。


スマート保安のソリューションとしては、AIシステム、IoT、防爆モビリティの導入があり、これらにより業務品質の向上や安定化、従業員の安全確保など、さまざまな効果を得られます。

スマート保安を導入する際には、検討・開発・導入・展開のステップごとに、ご紹介した成功のためのポイントを押さえることが重要です。



本記事の内容をグラフや図を用いて分かりやすく説明した資料を下記よりダウンロードいただけます。

お役立ち

スマート保安の 種類と効果

スマート保安が重要視される背景には、取り巻く環境の変化や産業保安現場の課題、国民・企業の安全と競争力確保などの課題があります。

国内の企業は、スマート保安を取り入れることでこれらの課題を解決し、事業を継続できる体制を整える必要が生じています。

スマート保安の代表的な取り組みとして、「AIシステム」、「IoT」、「防爆モビリティ」があります。これらを導入することで、どのような期待効果や業務プロセスの変化があるのかご紹介します。

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