ILM(Information Lifecycle Management)とは? メリットをわかりやすく解説

コンピュータ上に保管される情報量が増加する一方である現代、情報管理手法として注目されているのが、ILM(情報ライフサイクル管理)です。本記事では、自社の情報管理の方法を見直したいと考えている企業の方向けに、ILMの基本的知識やメリット、記録媒体としてのテープの活用方法について紹介します。

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ILMとは

普段、あまり意識することはないかもしれませんが、私達が日常的に扱っている情報には、ライフサイクルがあります。一般的には、「作成」「利用」「保存」「破棄」の4段階で成り立っています。

一般的に情報の重要度が最も高いのは、作成から利用の段階です。閲覧・複製・更新などを行うために多くのユーザーが何度もアクセスします。しかし、時間が経過していくにつれ状況が変わり、利用される機会が減っていきます。
そして、利用されなくなった情報は、何かあったときのために保存されるか、もしくは廃棄されます。保存された情報も、一定の期間保存された後、最終的には廃棄されることになります。これが情報のライフサイクルです。

ILM(Information Lifecycle Management)とは、この情報のライフサイクルに着目して情報を管理する手法のことです。2003年に、アメリカの大手ストレージ・メーカーであるEMC社(現Dell EMC社)やStorage Tek社などが提唱しました。日本では、「情報ライフサイクル管理」と呼ばれることもあります。

情報は、「ビジネスの4大資源(人、物、金、情報)」のひとつにあげられるほど、ビジネスにおいて重要な要素です。しかし、適切に管理できていなければ、本来活用できるはずの情報も十分活用できなくなり、業務の生産性低下や保管コストの増大などにも直結してしまいます。

コンピュータ上で保管される情報の量が急速に増加する現代、ILMにより情報活用環境を整えることは急務です。

ILMによるメリット

ILMには、以下のような4つのメリットがあります。

ビッグデータを活用しやすくなる

高速コンピューティングや人工知能の技術が発達した今、多くの企業がビッグデータ解析(膨大なデータを解析してビジネスで役立つ知見を得ること)に取り組んでいます。ビジネスに取り組む中で得たデータを分析して、商品力強化や集客力向上、需要予測、業務効率化などを実現するためです。

ビッグデータ解析で扱う情報量は膨大ですが、情報のライフサイクルの考慮した上で情報を整理し、その活用性を高めておけば、解析が行いやすくなります。解析にかかる時間やコストも抑えられるでしょう。

データ管理コストを削減できる

ビジネスの現場では、廃棄すべき情報が廃棄されておらず、無駄に管理コストを圧迫していることが往々にしてあります。普段から情報のライフサイクルを意識して情報を評価し、廃棄すべき情報を適切に廃棄できれば、情報の管理コストや管理工数を削減できるでしょう。

また、アクセス頻度の低い情報が、必要以上に高機能・高性能なストレージに保管されていることも少なくありません。一般的に、高機能・高性能なストレージは高価です。情報の重要度に応じて適切なランクのストレージを割り当てることで、管理コストを抑えられます。

コンプライアンスの徹底に繋がる

コンプライアンスとは、「法令遵守」という意味で、法律や条令、規則などに従いながら、企業活動を行っていくことを言います。コンプライアンスの徹底は、企業として社会的信用を得る上で重要です。コンプライアンスにもさまざまな要素がありますが、適切な情報管理はそのひとつです。

例えば、粉飾決算や助成金の不正受給、過重労働や賃金未払い、製品偽装といったコンプライアンス違反を疑われた場合、裁判所や税務署など公の機関から、関連する情報の提出を求められることがあります。普段から適切に情報を管理しておけば、必要な情報をスムーズに提出でき、問題の早期解決に役立つでしょう。

セキュリティを強化できる

情報はライフサイクルのどの段階にあるかで、機密度が変わることがあります。
例えば、ある業務を進めていく上で必要な情報に関し、関係するメンバーや特定の部門にアクセス権を与えたとします。業務が完了しても、そのアクセス権は付与されたままになっていることが多いでしょう。しかし、その情報には機密情報や個人情報が含まれており、作業終了後はアクセス権をさらに制限したほうがよいかもしれません。
逆に、作成時は機密情報でも、一旦公開されれば機密にする必要性がなくなる情報もあるでしょう。

情報のライフサイクルに着目して機密度を評価し、それに応じて各ユーザーのアクセス権を設定するようにすれば、セキュリティの強化につながります。ILM関連のIT製品の中には、情報のライフサイクルに応じてアクセス権を設定できるものが多くあるため、実施しやすいでしょう。

情報ライフサイクルの保存を実現する「ストレージの階層化」とは

近年、コンピュータ上で保管される情報の量が急速に増加しています。情報のライフサイクルを考慮せず、アクセス頻度・利用価値の高い情報もそうでない情報も、さらには廃棄すべき情報も、すべて均一の価値を持つ情報のように扱ってはいないでしょうか。

情報のライフサイクルを考慮せずに情報管理をしていると、次のような状況になることがあります。

  • アクセス頻度の高い情報が、アクセスしにくい場所にある
  • アクセス頻度の低い情報によって、アクセス頻度の高い情報にアクセスしにくくなっている
  • 利用価値の低い情報が、保管コストのかかる場所にある
  • 利用価値の低い情報によって、利用価値の高い情報が埋もれている
  • 廃棄すべき情報を廃棄せず、保管コストを増大させている
  • 廃棄すべきでない情報を廃棄している

こういった状況に陥った際、情報ライフサイクルに応じた適切な保存方法として、ストレージの階層化が挙げられます。情報のライフサイクルにあわせて保管するストレージを変えるには通常、次のように3つの層に分けます。

オンラインストレージ

作成されたばかりでアクセス頻度が高い情報や、利用価値の高い情報などは、システムパフォーマンスを優先するために、多少高価であってもアクセス速度が高速なストレージに保管します。

ニアラインストレージ

時間の経過とともに、アクセス頻度・利用価値が下がった情報は、コストパフォーマンスを優先するために、アクセス速度をワンランク下げたストレージに保管します。

オフラインストレージ

ほとんどアクセスすることがない、しかしまだ廃棄しない情報については、アクセス速度は考慮せず、安価かつ長期保存に適したストレージに保管します。
このように、情報のライフサイクルにあわせて保管するストレージを変えることを「ストレージの階層化」と言います。パフォーマンスを向上させると同時に、ストレージコストを削減します。

オフラインストレージには「テープ」がおすすめ

今、オフラインストレージとして、テープが注目されています。テープと聞くと、時代遅れと思われがちですが、現在のテープは従来のものに比べて機能や性能が格段に進化しており、ILM 課題解決にも大いに役立ちます。

テープメディア活用のメリット

テープメディアの活用として、以下の4つのメリットがあります。

データの長期保存が可能

テープメディアは長期保管に適した記録媒体です。テープメディアの寿命は20~30年レベル、条件によっては50年レベルにもなります。

省電力性

大容量データの保管を考える際、課題となるのが消費電力ですが、テープメディアは、消費電力が低いのが特徴です。保管時に電力を消費しない上に、書き込み時や読み出し時の消費電力も極めて低く抑えられます。

高速なシーケンシャル・アクセス

現在のテープメディアは、パフォーマンス性能が大幅に向上しています。テープメディア規格のスタンダードであるLTOでは、2021年に発売された最新世代であるLTO9の場合、非圧縮時において400MB/秒、圧縮時で1000MB/秒という転送速度を実現しています。

データの完全保護を実現

現在のテープメディアは、セキュリティ性能を備えています。LTOの場合、暗号化機能が装備されていますし、WORM専用のカートリッジもあります。

テープメディア活用のデメリット

一方で、テープメディアの活用には以下のようなデメリットがあります。採用する際にはデメリットも考慮に入れましょう。

ランダムアクセスが苦手

テープメディアでは、テープ上の連続した領域を先頭から順にアクセスしていきます。通常は、ハードディスクやフラッシュメモリなど他のメディアのように、ランダムにアクセスすることはできません。
テープメディアのデータ転送速度は高速ですが、データの配置によっては巻き戻しや早送りが繰り返され、結果的に時間がかかってしまいます。

対応策として、複数データへアクセスする場合は、テープのより先頭に配置されたデータからアクセスをするといった工夫が可能です。

データ保護機構がない

一般的にストレージは、何らかの障害に備えてデータ保護機構を備えています。
現代では、障害時のデータ保護対策として、複数の記録媒体に本来のデータと誤り訂正符号データを分散して記録するRAIDが主流ですが、テープメディアの場合、性質上それらを実施できません。

対応策としては、2重書込み方式(同じデータを2つのメディアに書き込む方式)を用いることが可能です。コストはかかりますが、片方のテープのデータが破損してしまった場合でも、もう片方のテープのデータが無事であれば、データが失われることはありません。

同時アクセス数がドライブ数・テープ数に依存する

テープメディアの同時アクセス数は、基本的に、ドライブ数・テープ数に依存します。しかし例えば、メディアが足りていても、同時アクセスできる数はドライブに依存します。
また、ドライブが足りていても、テープがドライブ分なければ同時アクセスできません。

対応策として、適切な数のドライブやテープを増やすことによって、同時アクセス数の課題を解決できます。

データ領域を再利用しにくい

テープメディアには、一度使用したデータ領域を再利用しにくい特性があります。
ある特定のデータの更新処理をする際、更新データは、元のデータがあった領域ではなく、最後尾の領域に書き込まれることになり、さらに元のデータがあった領域は使用できない領域となります。
この特性があるため、テープでは、データの更新を行う度に、どうしても書き込み可能な領域が減少していくことになります。

対応策としては、新しいテープに再配置することです。書き込み可能な領域が減少したテープにあるデータを、新しく用意したテープに再配置することで、減少した領域分の容量を確保できるようになります。
元のテープについては、全てのデータを削除すれば新規のテープとして使用することも可能です。

エクサの階層型管理システムの特徴

エクサでは、企業の情報管理をサポートする仕組みとして、ディスクメディアとテープメディアを併用する階層型管理システムを提供しています。ディスクメディアの長所である高速性、およびテープメディアの長所である長期保存性・省電力性を最大限に活用したデータ保管ソリューションです。

アクセス頻度の高いデータは高速アクセス可能なディスク領域に、アクセス頻度の低く記録優先のデータはテープ領域に配置することで、パフォーマンス面とストレージコスト面の最適化を行います。ディスク領域にある任意のデータも、一定期間のアクセスがなければ、テープ領域に転送されます。

エクサの階層型管理システムの自律的な仕組みは、IBM社のストレージ管理システム「IBM Spectrum Scale」とデータ保護システム「IBM Spectrum Protect」によって実現します。
以下、エクサの階層型管理システムの特徴を紹介します。

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ファイルへのアクセスが簡単

ユーザーは、「データがディスク領域とテープ領域のどちらにあるか」を意識する必要はありません。
データがディスク領域にある場合でも、テープ領域にある場合でも、ユーザーにはディスク領域内の任意のディレクトリに存在するように見えますし、通常のファイルと同じ感覚で操作できます。
新しく操作方法を学んだり、ストレスを感じたりすることなく、それまで通りに業務を行えます。

最適なデータ管理ポリシー設定を提案

ディスク領域からテープ領域への転送については、ポリシーの設定が可能です。
「メディア領域のこのディレクトリにあるこの種類のファイルが、最終アクセスから○日経過したら、テープ領域に転送する」といった設定をすることにより、より柔軟なデータ運用ができるようになります。
エクサでは、知見やノウハウを活かして最適なポリシー内容の提案も行っています。

高速なデータアクセスと耐障害性アップ

耐障害性も備えているため、スムーズかつ安定的なデータ運用が可能です。

バックアップ機能を追加できる

Spectrum Protectは、データの自動バックアップ、リストア、リカバリなどを実現するシステムで、大容量処理にも対応しています。
本来、階層型管理の仕組み自体にバックアップ機能はありませんが、Spectrum Protectの機能を生かし、テープ領域の一部やディスク、クラウドストレージをバックアップに用いることが可能です。

エクサの階層型管理システムの活用シーン

エクサの階層型管理システムは、以下のようなシーンで活用されています。

研究用データの保管

大学や研究所など各研究機関では、宇宙や遺伝子情報などに関するデータを収集し活用しています。ときには古いデータを活用することもあるため、多くのデータを廃棄せずにコストを抑えて保管する技術が必要です。エクサの階層型管理システムを用いて、膨大な量のデータを使う頻度や重要度に応じて保管しています。

地図データの保管

地図の制作会社や地図情報を扱う公の機関では、航空写真や地形データを扱っています。地図は時系列的に変化していくため、過去データも保管しておく必要があり、データは増大していきます。また、撮影のやり直しができないため、過去データの紛失は避けなければなりません。
大容量の地図データを安定的に長期保管する上で、エクサの階層型管理システムが役立てられています。

メディア系コンテンツデータの保管

テレビや映画、音楽などのメディア業界は、過去のコンテンツを保管しています。音声・映像系コンテンツは、文章系コンテンツと比べ、データ量が桁違いに大きくなります。また、ファンからの多様なリクエストなどにも対応していかなければなりません。
大容量のコンテンツデータを、必要なときに取り出せるような形で長期保管する上で、エクサの階層型管理システムが役立てられています。

まとめ

ここでは、ILMの基本的知識やメリット、ILM保管を実現するための階層型管理やテープメディアについて紹介しました。職場において、適切な情報管理ができていないと感じる場合は、エクサの階層型管理システムについても、ぜひご検討ください。

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