システム一括切替を2日間で実現
世界シェアNo.1のオートマチックトランスミッションを始め、技術力と品質で業界をリードするアイシン・エィ・ダブリュ株式会社は、電動化や自動運転支援などの次世代自動車に向けた先進技術開発を加速している。同社では、IoTやAI、ビックデータ活用など重要な次世代テクノロジーへの計画的投資のため、メインフレーム撤廃しオープン化することを決断。Micro Focus Enterprise Serverによるリホストマイグレーションを選択した。
SIパートナーには、同型メインフレームのマイグレーション実績が豊富な株式会社エクサを選択。大規模な基幹システムを、品質・コスト・納期を満たしながら新環境への移行を果たし、維持費の低減を実現。エンドユーザー向けの業務データ分析環境の構築など、更なる業務効率化に向けた基盤も整えた。
業界をリードする大手自動車部品メーカー
アイシン・エィ・ダブリュ株式会社は、オートマチックトランスミッション(AT)で世界シェアNo.1を誇る自動車部品メーカー。
「品質至上」の経営理念のもと、創立以来、徹底した品質と先進性にこだわり、お客様の期待を超える価値の創造を目指し、常に世界初の商品を世に送り出してきました。
同社は、これまで培ってきたATの電子制御技術やハイブリッドトランスミッションの駆動用モータ技術、カーナビゲーションの地図情報技術などを基盤に、電動化、自動運転支援などの次世代に向けた先進技術開発を加速させていく。
リホストマイグレーションによる一括切替を決断
同社では、これまで財務・会計、人事管理、生産管理などの基幹システムをメインフレーム上で運用していたが、近年、会社の規模が大きくなりシステム利用者や扱うデータ量が増え、月末・月初などパフォーマンスが著しく低下する事態となった。また、コスト面においては、メインフレームのシステム維持費に予算の大半が費やされるという悪循環が続いていた。
一方世間ではIoTやAI、ビックデータ活用など重要な次世代テクノロジーへの投資が進んでおり、同社も競争力を高めるために同分野への計画的投資が急務であった。特にビックデータ活用においては、既存メインフレームに保管されている膨大な基幹情報が対象となると考え、情報のオープン化を促進する環境整備が必要だった。
そこで、上記課題を解決すべく、メインフレームのオープン化に取り組むことを決断した。
差分吸収ツールとテスト自動化ツールを活用し、期間内に完遂
同社の資産はPL/Ⅰ言語のプログラムが多いという特徴を持っていた。また、同社ITマネジメント部員が日々の維持管理を行っており、別の言語にした場合にはスキルの再習得が必要となる課題もあった。
こうした中で選択されたのが、マイクロフォーカス社の「Micro Focus Enterprise製品」だった。
今回、プロジェクトを伴走するパートナーには、同型メインフレームのマイグレーション実績があり、Micro Focus 製品を利用した多数のマイグレーション実績を持つ株式会社エクサ(マイクロフォーカスソリューションプロバイダー)を選定した。
2015年4月よりプロジェクトはスタート。まずはメインフレーム資産の棚卸を実施し、基本的なプログラムから順にパイロット的に移行を進めた。既存のマイグレーションソリューションが適用できない部分に関しては、エクサが差分を吸収するツールを開発することで工数・期間を抑えた。
そうしたツールの代表として、Micro Focus Enterprise Server内複数区画からのバッチジョブ実行やIWS、HULFTなど他社製品からのバッチジョブ実行を可能にする「バッチエントリー」、Micro Focus Enterprise製品とz/OSのJCL非互換を動的に変換する「JCLインタプリタ」、OSコマンドや独自プロシージャ―、HULFTなどの他社製品との連携を容易にする「オープンインターフェース」を本プロジェクトにて開発し適用した。
その後、同社ITマネジメント部門が主体となって現新照合テストを実施。その際、エクサの開発した「テスト自動化ツール」を活用し、昼間作成したテストケースを夜間帯に流すことで、メインフレームのテスト環境の能力を増強することなく大量のテストケースを効率的に実施することができた。
また月末・月初のレスポンス改善は重要なテーマであった為、処理の遅いプログラムをコードから見直す作業と同時に、将来の処理量増加を見据えたパフォーマンステストを実施し、能力増強やパラメータ変更などのチューニングを実施した。その結果、飛躍的にパフォーマンスの改善を実現した。
システム維持費半減 次世代テクノロジーへの投資を加速
システム移行にあたっては、工場非稼働日の休日二日間で切替を完了することが必要とされた為、切替時間の短縮をすべくリハーサルを何度も行い手順の改善を行った。さらに、切替後の障害によって顧客や仕入先に多大な影響を与える事態が発生するリスクも考慮し、切替後に更新されたデータも含め、メインフレーム環境の状態に戻す“切戻しリハーサル”に対しても取り組んだ。
2017年12月、システム一括切替を完了させ、2018年1月の四半期処理および決算処理を無事に終えたため、当初の予定どおり同社はメインフレームを撤廃。現在、プライベートクラウド上に構築された新環境は、月末・月初のパフォーマンス低下は解消され、継続的に安定稼働している。
本プロジェクトの責任者として全体を統括したITマネジメント部 次長 髙木敏光氏は、成果を次のように語る。
「切替後、いくつかの初期トラブルはあったものの、エクサを始め、関係者に迅速に対応していただいたおかげで、安定稼働にもっていけました。この結果には本当に満足しています。今回、オンライン画面に変更がないため、エンドユーザーはインフラ環境が変わったことも知らないかもしれませんが、それこそが成功の証と考えています。プロジェクトの成功によりホスト環境維持費半減が実現し、次世代テクノロジーに投資できる予算が確保できました。働き方改革が叫ばれる中、デジタル化の活用を加速することで新しい価値創造に挑戦していきます。」
さらに、インフラ環境がオープン化されたことで、業務データの活用が容易になったことにも同社は期待を寄せている。本番DBサーバから基幹データを抽出してエンドユーザーが分析できる環境を提供、業務効率化推進の一助とする構想が進んでいる。
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本事例の記事内容は掲載当時のものとなっております。
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