第3回 業務スタイル変革に立ちはだかる二つの壁

ものづくりコラム

前回まで、グローバル化する市場において、海外企業は「標準・準標準製品というボリュームゾーンを狙った攻めの企画提案型」にシフトしてきているのに対し、日本企業は従来型の「個別のニーズに柔軟に合わせる受け身の擦り合わせ型」のままであることを述べました。
この日本企業の業務スタイルは、顧客ニーズに柔軟に対応できるものの、案件が発生する都度、営業→営業技術→設計と担当部署が順番に情報の変換を行う「伝言ゲーム」を行う事になります。そのためリードタイムとコストがかかり、近年は「海外案件での逸注が多くなっている」、「手間のかかる特注品ばかりになってきている」という問題が発生しています。

1. 業務スタイル変革に立ちはだかる二つの壁

多くの日本企業が、従来型の業務スタイルを効率化する必要があると認識していますが、なかなか改善できず苦労しています。
それでは、改善が困難である原因にはどのようなものがあるでしょうか。
大きくは、以下が挙げられると考えています。

  1. 複数部署への「知識の分散」と「知識の属人化」
  2. システムによる効率化の範囲が局所的

1-1. 複数部署への「知識の分散」と「知識の属人化」

一般に、製造業の企業は「営業部」、「営業技術部」、「設計部」、「生産技術鵜部」等の部署を持っていますがその部署の役割に応じて「所有する知識」が大きく異なります。
これらの「知識の分散」をまとめたものが下の図です。

各部署が所有する知識と情報変換

各部署が所有する知識と情報変換

各部署は、所有する知識を使用し、インプット情報をアウトプット情報に変換します。
例えば図中の①で、営業部は、お客様からヒアリングした「顧客要件」をインプット情報として、今までの経験で培った「顧客要件と製品型番の関係」や「自社製品の強みや推奨品」、「価格」等の知識を使用して、「顧客要件」を満たすと同時に自社にも都合の良い製品型番をアウトプットとして提案します。
また図中の③で、設計は、営業や営業技術が定義した「製品仕様」をインプットとし、「新規設計に関する知識」や既存の「部品表、部番、図番」等を参照して、その「製品仕様」を満たす「部品表、部番、図番」をアウトプットとして出力します。
このように、製品に関する様々な知識が各部署に分散していることから、案件が発生した際、「顧客要求」を起点として上流の部署から「伝言ゲーム」のように情報変換を行う必要がありました。

また、「知識」の蓄積方法に関しては、各部署の中では、長く経験を積んだベテラン(熟練者)を中心に知識が属人的に蓄積されているのが一般的です。「形式知」として共有されている情報もありますが、個人が自分用に整理しただけで公開していない情報や、暗黙知のままの情報もあります。このように「知識が属人化」している事から、各部署の中での「情報変換」作業は、それに関する知識を持っている人の手作業にならざるを得ませんでした。

そのため、以下のような問題が発生していました。

  1. 各部署でニーズや仕様のチェック・確認作業や問合せ作業が発生する。
  2. 各部署で人手での検討や各種文書の作成が発生する。
  3. 上記1、2の作業を各部署が順番に行うことから、トータルで時間がかかる。
  4. どこかのステップで抜け・漏れ、および変更がある場合、作業の手戻りが発生する。

このようなコスト高である「伝言ゲーム形式」の業務でも、それによりお客様にとって付加価値が高い製品を提供して価格に反映できるのならば意味があるのですが、寸法違い品等のあまり付加価値を生まない製品であっても同じ業務形式を行いがちになっていました。

1-2. システムによる効率化の範囲が局所的

もう一つの理由としては、この分野におけるIT技術がまだ未成熟でありシステムによる効率化が局所的にしかできなかったことが挙げられます。
様々な先進的企業が「情報変換の効率化」に取り組んでいますが、従来のIT技術では「特定の幾つかの製品」や「一部署の範囲」など、局所的な範囲しか効率化することができませんでした。
そのような局所的な効率化の例として、以下のものが挙げられます。

セールスコンフィグレータ

お客様あるいは営業が「見積金額に影響する製品仕様」を全て選択すると、価格が表示される営業用のシステム

設計コンフィグレータ

設計が、「製品の詳細な仕様」(数十~数百)を全て選択すると、その製品を構成する部品表や部番、図番を自動的に抽出するシステム

パラメトリック3D CAD

製品の各部分の寸法や位置の関係をパラメトリックに関係づけておく事により、寸法違い品の3次元形状や図面を自動設計する設計用のシステム

これらのシステムは先進的な企業では部署の業務効率化のために使用されていますが、実際は、システムの構築や変更に運用コストと時間がかかる割には適用できる製品や使用範囲が狭いため、局所的な運用にとどまっているケースがほとんどです。

2. 日本の業務スタイルが引き起こす負の経営インパクト

このように従来型の業務スタイルの改善は今まで困難でした。しかし現在、海外の競合会社は「標準・準標準製品をターゲットとした攻めの営業」を行ってきており、このまま何も対策を打たずにいると海外の競合他社と比べて「見積に工数と時間がかかる」状況が続き、経営的に大きな悪影響をもたらします。
つまり、「1回の見積に時間とコストがかかる」ままでは、お客様との対話しながらの各種案の提案ができない事になりますので、競合他社と比較して「成約率」および「営業1人あたりの見積件数」が劣る事になり、売上を伸ばす事が困難です。また、付加価値が無い情報伝達作業および情報変換作業が全体のコストを押し上げますので、「標準品・準標準品」も、海外の競合会社よりもコスト高になり、結果として、ニッチな「特注品」しか受注できなくなってしまいます。

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従来型の業務スタイルが引き起こす負の経営インパクト

今後、製品および製品バリエーションは増える一方となると考えられるため、現在の「伝言ゲーム型」の業務スタイルを変えない事にはますます営業面、コスト面で差がつき、企業の死活問題になってくるのではないかと考えられます。

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