企業の売上(利益)を伸ばす一要素として、営業力の強化は重要な経営課題です。特に、法人顧客からは「鋭いプロ視点での解決策の提案」※1が求められる一方、多くの企業が「営業人材の採用・育成」や「営業スタイルが属人的で再現性がない」※2といった課題を抱えています。
こうした背景から、実践的なスキルを習得する訓練として、営業ロープレ(ロールプレイング)が改めて重視されています。実際、2024年の調査によれば、3期以上連続で増収している企業のうち69.8%が、営業研修の一環としてロープレを実施しており※3、成長企業における人材育成施策として定着していることがうかがえます。
営業ロープレとは、実際の営業場面を想定し、営業担当者役と顧客役が商談の練習を行う訓練手法です。この記事では、営業ロープレの目的とメリットから、具体的な進め方、そして訓練効果を最大化するコツまで、営業組織のスキルアップに必要な情報を解説します。
出典:
※1 株式会社パーソル総合研究所『営業実態調査2025』(2025年11月11日発表)
※2 ソフトブレーン株式会社『企業の営業課題に関する調査「esm sales report 2025」』(2025年11月13日発表)
※3 モノグサ株式会社『成長企業の営業研修に関する実態調査』(2024年7月29日発表)
営業ロープレとは?意味と目的を解説
営業ロープレとは、「ロールプレイング」の略で、実際の営業場面を再現して行う練習のことです。一人が営業担当者役、もう一人が顧客役になって、設定された場面に沿って営業担当者が顧客にアプローチし、商品やサービスを提案します。
例えば、IT企業の営業担当者が新規開拓を行う場合、営業役の人は顧客役の人に対して自社のシステムを提案し、導入効果や費用について説明します。顧客役は実際の顧客が抱えそうな疑問や懸念を投げかけ、より現実的な商談を再現します。
営業ロープレの目的は、ヒアリング力、提案力、クロージング力といった実際の商談で必要となる具体的なスキルを、反復練習することで身につけることです。事前に社内で商談を想定して練習することで、本番での失敗を減らせます。また、実際に声に出して練習することで商談の流れを体で覚え、フィードバックを通じて自分では気づかなかった課題を発見できます。
営業ロープレを行う4つのメリット
営業ロープレには、以下のようなメリットがあります。
実際の商談前にリスクなく練習できる
新人にとっては、商談の緊張を緩和し自信を持って臨むための「実践の場」となります。
一方、中堅・ベテランにとっては、新商材の提案や、経営層(社長・役員クラス)へのアプローチといった難易度の高い特定の商談シナリオを試行する貴重な機会です。普段の商談では試せないリスクあるアプローチも、ロープレ環境であれば安全に検証できます。
失敗から学べる環境がある
ロープレは失敗しても実際の顧客を失わない学習環境です。実際の商談で失注につながる失敗も、ロープレであればその場で問題点を指摘してもらい、次に活かすことができます。特に、成約率が伸び悩む中堅社員が自身の「思い込み」や「悪い癖」を客観的に指摘され、修正する場として極めて有効です。
顧客視点を理解できる
顧客役を演じることで、営業担当者は「顧客が何を期待し、どの情報に価値を感じるか」を疑似体験できます。法人顧客が期待するのは「プロ視点での解決策の提案」※1であるため、ロープレを通じて顧客の視点を体験することは、この期待に応える提案の解像度を高めることにつながります。
チーム全体のスキル向上につながる
ロープレは、トップセールスの「暗黙知」を組織の「形式知」にする手段です。多くの企業が「属人的営業」※2を課題としており、急成長企業も「業務プロセスの体系化」※4を重要課題ととらえています。ロープレで成功事例を実演・共有することは、こうした属人化の解消とチーム全体のスキル標準化に貢献します。
ロープレを通じて「売れるノウハウ」を可視化することは、営業組織の標準化に向けた大きな一歩となります。
特定の個人に依存した営業スタイルから脱却し、組織全体で持続的に成果を出すための変革プロセスをまとめた資料「個人からチームへ 営業スタイルの新しいかたち」をご用意しました。
本資料では、属人化が引き起こすリスクの再確認から、生成AIを活用して「チームの営業力」を最大化する具体的なステップまで詳しく解説しています。自社の営業体制を見直すガイドブックとして、ぜひダウンロードしてご活用ください。
出典:
※4 株式会社Mer『【属人営業から組織営業へ】急成長企業の72.1%が、営業組織の運営課題を「深刻に感じている」実態』(2024年12月17日発表)
営業ロープレの4つの種類
営業ロープレには目的や進め方によっていくつかの種類があります。それぞれの特徴と適用場面を解説します。
ケース型ロープレ|具体的な場面設定で練習する
ケース型ロープレは、あらかじめ詳細な設定を決めて行うロープレです。顧客の業界、会社規模、抱えている課題、担当者の役職などを具体的に設定します。
例えば、「従業員50名の製造業で、生産管理システムの導入を検討している製造部長に対して、初回提案を行う」といった具体的なケースを作ります。営業担当者は、この設定に基づいて相手のニーズを想定し、適切な提案を行います。
このタイプは、新人研修や特定の業界に対する営業スキル向上に効果的です。
グループロープレ|チームで役割を交代しながら学ぶ
グループロープレは、3人以上のチームで行うロープレです。営業役、顧客役に加えて、観察者も参加します。一定時間ごとに役割を交代し、全員が異なる視点を体験します。
このやり方の大きなメリットは、自分が営業する側だけでなく、顧客側の気持ちも理解できることです。また、観察者として客観的に商談を見ることで、改善点に気づきやすくなります。
このタイプは、チーム全体の営業スキル向上や、お互いの良い点を学び合う場として活用できます。
問題解決型ロープレ|実際の困りごとを題材にした実践練習
問題解決型ロープレは、実際に起きた営業上の問題や現在直面している課題を題材にするロープレです。
例えば、「価格が高いという理由で契約を保留されている顧客への対応」や「競合他社と迷っている顧客の決断を促す方法」など、リアルな課題に取り組みます。
このタイプは経験のある営業担当者向けで、実践的な問題解決能力を身につけられます。
モデリング型ロープレ|トップセールスの真似から始める
モデリング型ロープレは、成績優秀な営業担当者の営業スタイルを真似することから始めるロープレです。まず、トップセールスの人に実演してもらい、その後に参加者が同じように再現します。
優秀な営業担当者の話し方、提案の順序、顧客への対応などを具体的に学べるため、成功パターンを効率的に身につけられます。
このタイプは、新人教育や基本的な営業スキルの習得に適しています。
AIツールを使った営業ロープレも効果的
最近では、AI技術を活用した営業ロープレツールも登場しています。従来の対人ロープレは、上司や同僚の時間を確保する必要があるため練習量に限界がある点や、フィードバックが評価者の主観に依存しやすい点が課題でした。AIロープレは、これらを解決する手段として注目されています。
AIのメリットは第一に、時間や場所を選ばず練習量を担保できる点です。AIが顧客役となるため、上司や同僚の時間を奪うことなく※5、営業担当者の都合に合わせて反復練習が可能です。また、対人では感じがちな「失敗への恐れ」や恥ずかしさがなく、心理的安全性が高い状態で何度でも試行できます。
第二のメリットは、フィードバックの客観性・定量性です。例えば、あるAIを活用したツールでは、声のトーン、話すスピード、沈黙の長さをAIが自動分析します。ある大手金融機関のコールセンターでは、AIが全通話を分析し、顧客アンケートの結果とAIの評価がほぼ一致したという事例※6もあり、人間の主観では難しかった客観的なデータに基づいた改善ができます。
一方で、人間の感情や商談の複雑なニュアンスの再現は発展途上です。基礎練習や定型的なトークはAIで反復し、最終的な応用練習は対人ロープレで行うといった使い分けが効果的です。
エクサのAIエージェント「ai with」では、声のトーン、話すスピード、沈黙の長さについてもAIが自動分析し、客観的な改善点を即座にフィードバックできます。従来のロープレでは指摘しにくかった細かな話し方の癖や質問タイミングも数値化して可視化することで、データに基づいたサポートを実施することができ、効率的に営業力を向上させることができます。
出典:
※5 Crystal Method『【2025年最新】AIロープレとは?営業・接客・教育に活用できる最強トレーニング術』(2025年11月18日アクセス)
※6 PULSE AI media『【調査レポート】人事部におけるAI活用の実態と先進事例』(2025年3月14日)
営業ロープレの進め方と効果を高めるコツ
営業ロープレを効果的に実施するための手順を、準備から改善まで順を追って解説します。
ステップ1|事前準備で設定すべき項目を決める
ロープレを始める前に、まずは目的と設定を明確にすることが重要です。
⮚ 目的の明確化
まず「何のスキルを向上させたいのか」を決めます。例えば、初回訪問でのヒアリング力を高めたい、クロージングの精度を上げたい、新商材の提案内容を身につけたいなど、具体的な狙いを定めます。
⮚ シナリオ設定
次に「どんな場面を想定するのか」を設定します。具体的には、顧客の業界、会社規模、役職、抱えている課題、予算感などを決めます。また、営業する商品やサービスの詳細、提案の目標も明確にしましょう。
目的が明確であれば、ロープレ中に「今はヒアリングの精度だけを見る」といった具体的な観点でフィードバックができ、漫然と練習することを避けられます。
AIツールを活用する場合、これらの多様なシナリオを瞬時に自動生成させることができ、準備工数を大幅に削減できます。
ステップ2|ロープレ当日の進行手順
ロープレ当日は、参加者全員が同じ前提で臨めるように、設定を確認してから始めます。実際のロープレは15~30分程度で区切ることをお勧めします。短時間で何度も繰り返すことで集中力が保たれるため、長時間の練習よりも効果的に学習できます。途中で気になる点があっても、ひとまず最後まで通して行うことが大切です。
AIツールであれば、対戦相手となる上司や同僚の時間を確保する必要がなく、短時間の練習をいつでも何度でも行うことが可能です。
ステップ3|フィードバックを行う
ロープレ終了後のフィードバックでは、良かった点から先に伝え、その後改善点を具体的に指摘します。「あの時、話すスピードが速すぎた」「顧客の話を最後まで聞かずに提案を始めた」など、具体的な行動レベルで伝えることが重要です。気づいたことはその場ですぐ伝えることで、本人も内容を覚えているうちに改善ポイントを理解できます。また、第三者に観察してもらい意見をもらうことで、営業役も顧客役も気づかなかった課題を発見できます。
AIツールの場合、人間の主観が入りやすいフィードバックを即座に定量化し※6、客観的なデータ(話速、声のトーン、沈黙時間など)として提示できるメリットがあります。
ステップ4|録画・記録を使って振り返る
可能であれば、ロープレの様子を録画しておきましょう。後から客観的に自分の姿を見ることで、表情の硬さ、視線の動き、身振り手振り、話し方の癖など、その場では気づかなかった改善点を発見できます。特に、自分では気づいていない口癖や、顧客の反応を見逃している瞬間などが明確になります。録画が難しい場合は、音声録音や詳細なメモでも効果がありますが、可能な限り動画での記録をおすすめします。録画データはチーム内で共有することで、ナレッジとして他のメンバーも活用できます。
AIツールの場合、この「録画・分析・振り返り」のプロセスが自動化されており、個人の練習履歴や改善点がデータとして蓄積され、成長を可視化しやすくなります。
営業ロープレで使える実践的なお題・シナリオ集
実際のロープレで活用できる具体的なシナリオを営業プロセス別に紹介します。
初回訪問・アプローチ場面のお題
初回訪問で信頼関係構築を練習するお題です。
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新規開拓で初めて訪問する製造業の顧客に、自社の生産性向上ソリューションを紹介する
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展示会で名刺交換した顧客へのフォローアップ訪問で、具体的なニーズを引き出す
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競合他社を使っている企業に対して、乗り換えを提案する初回商談を行う
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競合他社の製品やサービスについて、顧客が評価しているポイントや懸念点を自然に引き出す。
ヒアリング・課題発見場面のお題
顧客の本質的な課題やニーズを引き出す場面を練習するお題です。
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既存の顧客から追加予算が確保できたという連絡があり、新たなニーズを探る商談
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現状のシステムに不満を持っている顧客から、具体的な課題と理想の姿をヒアリングする
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複数部署にまたがる課題を抱える企業に対して、各部署のニーズを整理する
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導入を検討している顧客の決裁プロセスや予算感、導入時期などの重要情報を聞き出す
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現在利用中の競合サービスについて、評価している点(機能、コスト、サポート体制など)と、具体的な不満点を深掘りする
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顧客が複数の競合サービスを比較検討している場合に、各社の提案内容と、顧客が最重視する選定基準(KBF*1)をヒアリングする。
*1 KBF: Key Buying Factorの略で、購買決定要因(顧客が製品・サービスを選定する際に最も重視する基準)を指します。
提案・プレゼンテーション場面のお題
ヒアリング結果を基に、提案力を磨くお題です。
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顧客の課題解決に最適な提案を行い、導入効果と費用対効果を具体的な数字で説明する
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複数のプランを用意し、顧客の予算や優先順位に合わせた最適案を提示する
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競合他社と比較されている状況で、自社の強みと差別化ポイントを明確に伝える
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顧客からの想定質問(価格、導入期間、サポート体制など)に対して、的確に回答する質疑応答訓練
クロージング・契約場面のお題
契約締結に向けた最終段階での対応力を鍛えるお題です。
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提案内容に関心を示している顧客に対して、契約締結に向けた最終的な後押しを行う
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導入時期を迷っている顧客に対して、早期導入のメリットを伝えて決断を促す
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稟議が通った段階で、契約条件の詳細をすり合わせて正式契約まで進める
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小規模導入を提案し、まず試してもらうことで本格導入につなげる
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商談内容を踏まえ、顧客と次のアクションを適切に合意形成する(顧客へのお願い、自社の宿題、次回のスケジュール、導入ロードマップの確認など)
AIツールなら多彩なバリエーションのお題を作れる
従来のロープレでは、お題やシナリオを人が毎回考える必要がありましたが、AIツールを使えば多彩なバリエーションを生み出せます。業界、企業規模、課題の種類、顧客の性格など、さまざまなパターンを自動生成できるため、人材育成のリソースを気にせず何度も練習可能です。また、自社の実際の商材や顧客層に合わせたカスタマイズも簡単にでき、より実践的なロープレを実現できます。
営業ロープレは、失敗を恐れず成長できる貴重な学びの場
営業ロープレは、営業スキルを向上させて売上拡大を図るために非常に効果的な練習方法です。本記事で紹介した進め方とコツを参考に取り組むことで、営業チーム全体のスキル向上を図れます。
次世代型の営業ロープレ方法としては、AIツールの活用も有効です。
エクサのAIエージェント「ai with」は、時間や場所の制約なく、何度でも反復練習が可能な環境と、データに基づく客観的なフィードバックを提供します。これにより、営業担当者個人のスキルアップはもちろん、組織全体の営業力の底上げを効率的に進められます。
営業ロープレの導入や営業研修の改善をお考えの企業様は、豊富な実績とノウハウを持つ株式会社エクサまでお気軽にご相談ください。貴社の営業力向上を全力でサポートいたします。
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