【業種別】生成AIの活用事例10選!導入時のポイントや注意点も解説

生成AIの登場によって、近年あらゆる業界で業務変革が進められています。AI活用に成功した企業は、業務プロセスの効率化や顧客満足度の向上により、競争力を高めています。しかし「自社の業種で本当に効果があるのか」「どのように導入すればよいのか」と悩む企業も少なくありません。


本記事では、製造業、金融業、小売・流通業、医療・ヘルスケア、サービス業の業種ごとに2つずつ活用事例を紹介し、導入時のポイントや注意点を解説します。自社に適した生成AI活用の糸口を見つけ、競争力強化につなげましょう。

【製造業】生成AIの活用事例2選

製造業では、熟練技術者のノウハウ継承や、開発サイクルの短縮といった長年の課題に対し、生成AIが活用されています。そうした中で自動車メーカーでは、特に活用が進んでいます。

大手自動車メーカー:エンジニアノウハウの継承とデザイン効率化

ある大手自動車メーカーは、AIエージェントを開発し、熟練エンジニアが長年の経験で培った暗黙知(言語化されていないノウハウ)をAIが継承し、若手エンジニアを支援する仕組みを構築しました※1。これまで明文化が難しかったベテランの経験則をAIが提示することで、技術伝承を加速させています。


このシステムでは、振動や燃費など各分野の専門知識を持つ複数のAIエージェントを組み合わせることで、エンジニアからの質問に対し多角的な視点から回答を提供します。開発部門の約800名が利用し、環境規制の調査や技術仕様の確認など、従来膨大な文書を探索していた業務の効率化を実現しています。


また、デザイン部門においても、生成AIを活用してデザインの微調整を自動化し、企画・設計期間を大幅に短縮する取り組みを進めています※2。例えば、デザイナーの発想をAIが画像として具体化。その際、同時に空力性能などの工学的要件も考慮することで、デザイン性と機能性を両立した開発の実現を支援します。これにより、市場ニーズに即した迅速な商品開発が期待できます。


出典:
※1 Microsoft 『Toyota is deploying AI agents to harness the collective wisdom of engineers and innovate faster - Source Asia』(2024年11月19日発表)
※2 トヨタ『知能化技術

大手自動車システム子会社:システム開発業務の効率化

ある大手自動車システム子会社では、OSやプログラミング言語などのアップデートに伴う基幹システムの改修作業に、生成AIを活用した実証実験を実施しました※3


具体的には、JavaやSQLJで開発された約15,000ファイルを対象に、アップデートに伴う非互換情報の調査、非互換箇所の抽出、プログラム修正を生成AIで自動化しました。その結果、従来の人手による作業と比較して作業時間を約50%短縮できることを確認し、2025年1月より実業務への適用開始が予定されています。作業時間約50%短縮したこの事例は、AIが特定の言語やルールに基づいた大量の文書(コード)を効率的に調査・修正・標準化できることを示しています。


出典:
※3 富士通 プレスリリース『トヨタシステムズと富士通、基幹システムのアップデート作業に生成AIを活用し、作業時間の50%削減を実現』(2024年10月24日発表)

【金融業】生成AIの活用事例2選

金融業では、厳格なコンプライアンスとセキュリティを前提とした上で、コンタクトセンターにおける業務効率化や、膨大な社内データの活用に生成AIが導入されています。

大手メガバンク:コンタクトセンター業務の効率化

ある大手メガバンクでは、2024年8月より生成AIを活用したコンタクトセンターシステムを導入しました※4


このシステムでは、顧客との会話を生成AIが文字化し、オペレーターの端末に案内用の資料などを提案します。従来は受架電(受信・発信)、顧客情報、勘定系と機能ごとに分散していたシステムを一元化し、並列的に処理できるようにしました。例えば住所変更の手続きでは、オペレーターが会話から文字化された情報をコピー・ペーストするだけで顧客情報システムに反映でき、従来必要だった紙の書類への記入作業が不要になりました。


さらに、生成AIは顧客の音声トーンから感情を察知する機能も備えており、顧客が怒っている場合は画面上の絵文字が怒った表情に変化します。この情報はオペレーターだけでなく管理者も共有できるため、トラブル時には状況を把握しながら迅速に対応できます。


これにより、通話時間を約2割削減できる見込みです。全体では約3割の業務効率化につなげる考えであり、業務効率の大幅な向上が期待されています※5


出典:
※4 みずほ銀行 プレスリリース『生成AIを活用した新たなコンタクトセンターシステムの構築について』(2024年7月01日発表)
※5 ニューススイッチ『コンタクトセンター業務3割効率化...みずほ銀行が導入、生成AIシステムの中身』(2024年12月01日発表)

大手金融グループ:RAGによる事務手続き照会の効率化

ある大手金融グループでは、RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)技術を活用した事務手続き照会を支援するAIを導入しています。RAGとは、AIが回答を生成する際に、事前に用意されたデータベースから関連情報を検索し、その情報を参照しながら回答する技術です。


同グループでは、取扱い範囲が広く30,000ページにも及ぶ事務手続書や各種マニュアル、FAQなど様々な資料が点在していることが課題でした。検索方法も複雑なため、現場からは「どこを参照すればよいかわからない」「手続きの抜け漏れが不安」といった声が寄せられていました。実際、業務を進める際には社内サポート窓口に電話で確認・相談する時間や手間が発生していました。


AI導入によって、従来は行員がマニュアルで調べていた複雑な事務手続きを、AIが社内規定やマニュアルデータベースを正確に参照してチャット形式で回答します※6・7。これにより、事務手続き照会業務にかかる時間の大幅な削減を期待し、開発を進めています。正確性が求められる金融業務において、根拠となる規定を即座に提示できる点は大きなメリットといえます。


出典:
※6 みずほフィナンシャルグループ『〈みずほ〉が見据える、10年後の金融。生成AIを活用して、業務効率化と新たなイノベーションの実現へ。』(2023年12月28日発表)
※7 みずほフィナンシャルグループ『〈みずほ〉における生成AIの取組について』(2024年12月04日更新)

【小売・流通業】生成AIの活用事例2選

小売・流通業では、長年の課題であった「需要予測」や「食品ロス」の最適化、さらには「顧客体験(CX)の向上」にAIが活用されています。

大手小売グループ:AIによる需要予測と食品ロス削減

ある大手小売グループでは、大手IT企業と共同開発したAIにより、天候や客層、イベント情報など数百の変数に基づき需要予測精度を最大40%改善しました※8・9。このシステムでは、曜日や行事、商品価格といった要因ごとの販売実績を学習したAIが、日ごとの販売数を正確に予測します。特売時や気候により販売数が変動する商品について適時・適量で発注することで、突発的な品切れを防ぎます。


また、この高精度な予測に基づき発注を行うことで、平均3割の在庫削減を達成しています。さらに、発注数が適量になることで、入荷整理や品出し、在庫管理、値引き、発注修正などの業務負荷が減り、生産性向上にもつながっています。


これに先だってAIが適切な値引き率を提示するAIも導入しており、ロス率を1割以上削減する成果を上げています※8。このシステムは、販売実績や天候・客数などの環境条件をAIが学習し、売場の商品のバーコードを読み取り陳列数を入力するだけで、AIが提示した適切な割引率でシールが自動印刷されます。経験に依存せず作業を進めることができ、店舗スタッフの教育時間も低減しています。


利益率の改善とSDGsへの貢献を両立させる事例として注目されます。


出典:
※8 PR TIMES『イオンリテール、日本IBMと開発したAIが適切な割引価格を提示し食品ロスを削減する「AIカカク」と国内最大規模の需要予測・発注システム「AIオーダー」の適用範囲を拡大』(2024年5月7日発表)
※9 ロボスタ『イオンリテール、需要予測・発注システム「AIオーダー」を独自開発 380店に導入し、発注間5割削減と発注精度40%改善へ』(2023年4月21日)

大手コンビニエンスストア:AIによる新店舗の広告配分最適化

ある大手コンビニエンスストアでは、印刷会社と連携し、AIを活用して新店舗オープン時の広告配分の最適化を図るAIを導入しました※10


同システムは、広告予算、店舗情報、商圏情報をAIに入力すると、開店後7日間の売り上げを最大化する宣伝手法の予算配分を算出します。


2023年7月からの両社共同の検証を経て、AIが推奨した配分を実施した店舗では、1日あたりの売上が約1割増加する効果が確認されました。同社は2024年11月以降にオープンする新店舗から本格運用を開始する計画を発表しています。


出典:
※10 ローソン『<参考資料>AI活用により広告配分を最適化』(2024年10月11日)

【医療・ヘルスケア】生成AIの活用事例2選

医療・ヘルスケア分野では、医療従事者の業務負荷を軽減し、患者と向き合う時間を創出するため、「医療文書作成」の自動化などに生成AIが活用されています。

中核病院:医師の退院時サマリー作成時間を3分の1に短縮

ある地方の中核病院では、院内全体の業務効率化を目的に、生成AI活用の実証実験を開始しました。その結果、医師が担当する退院時サマリー作成業務や、看護師が担う退院時看護要約作成業務などの効率化に有効である可能性が示されました。


中でも医師の退院時サマリー作成業務においては、従来15分かかっていた作成時間が5分へと短縮され、最大3分の1にまで効率化されました。具体的には、あらかじめプロンプト(生成AIへの指示)を設定し、必要な情報を読み込ませ要約させることで、生成AIが指示に沿った形式でサマリーを作成します。医師はその情報に問題がないか確認し、必要に応じて修正を加えるという流れで作業を行います。これにより、年間の退院患者数から試算すると、年間約540時間の医師の作業時間削減が見込まれるとしています※11


出典:
※11 PR TIMES『恵寿総合病院とUbie、生成AIを活用した「医師の働き方改革」の実証実験を実施』(2024年1月30日発表)

医療系スタートアップ:生成AIによる医療文書作成の自動化

ある医療系スタートアップ企業は、生成AIによる「自動医療文書作成システム」を開発し、複数の大規模病院でトライアル導入を進めています※12


入院から退院までの診療に関する一連の情報から、診療情報提供書、退院サマリー、転科サマリーといった医療文書のドラフトをAIが自動生成します。これにより、医療従事者の「文書作成」という負担の大きい業務を効率化することで、コア業務である医療の質向上への貢献が期待されます。


出典:
※12 TXP Medical プレスリリース『生成AIによる自動医療文書作成システム『NEXT Stage Document Assistant』を新たに提供開始し、横須賀共済病院と亀田総合病院にてトライアル導入 〜計1,700床規模での導入により、医療従事者の業務効率化と医療現場の負担軽減へ〜』(2025年4月8日発表)

【サービス業】生成AIの活用事例2選

サービス業(店舗ビジネス・人材サービスなど)では、従来人手で行っていた来店予定の顧客対応やプランニング業務をAIが代替・支援することで、業務効率化と顧客体験(CX)の向上を両立させています。

大手通信キャリア:AIによる電話応対業務の自動化

ある大手通信キャリアでは、自社の店舗や法人顧客向けに、AIが電話応対業務を代行する「AI電話サービス」を開発・提供しています※13


このサービスは、店舗にかかってきた予約や問い合わせの電話に対し、AIが自動で応対します。オペレーターやスタッフの対応時間を短縮し、電話応対業務の効率化を実現しています。同社の自社店舗(携帯ショップ)への導入事例では、全国約2,300店舗において、年間約700万件の電話予約のうち、AIによる自動応答で約50%の予約完結に成功しました※14


24時間365日の自動応答により、営業時間外の予約受付も可能となり、予約数の最大化と顧客満足度の向上につながっています。この技術は現在、飲食店や小売店など幅広い業種への展開も進んでいます。


出典:
※13 NTTドコモ プレスリリース『(お知らせ)AIが電話応対業務を代行する「AI電話サービス」の提供を開始-コールセンターの電話応対業務を自動化、コロナ禍での出社制限や高齢者の見守りにも活用-』(2020年12月10日発表)
※14 NTTドコモビジネス『AI電話サービス 導入事例株式会社NTTドコモ

大手人材サービス:AIによるアイデア創出(壁打ち)支援

ある大手人材サービスでは、社内向けに、従業員の壁打ち相手(ディスカッション相手)となるAIを開発・導入しました※15


企画立案や課題整理の際、AIが「聞き役」となり、「なぜそう思う?」「他には?」といった問いを投げかけることで、従業員の思考を深掘りし、アイデアの具体性や意思決定の質を高める効果が期待されます。課題整理や行き詰まりの解消に寄与したとの声もあり、利用者の満足度は総じて高い結果となっています。


出典:
※15 リクルート『新規事業、思いついたらいつでもサポート!リクルート「AIかべうち君」開発秘話』(2024年10月28日発表)

生成AI導入を成功させる4つのポイント

業種を問わず、生成AIの導入を成功させるためには共通のポイントが存在します。ここではAIの導入を成功させるためのポイントを解説します。

1. 明確な目的(解決したい課題)を設定する

AI導入自体を目的にするのではなく、「何を解決したいのか」を明確化することが重要です。例としては、「製造業のノウハウ継承」「金融業の事務手続き照会の時間短縮」「小売業の食品ロス削減」などです。


目的が定まることで、適切なツールの選定や学習データの準備が可能になります。

2. スモールスタートで効果を検証し、段階的に展開する

AI導入の成功には、実証と検証を重ねながら進めることが重要です。全社一斉導入ではなく、「特定の部門」の「特定の業務」(例:営業部門のロールプレイング研修や新人教育業務)に絞ってテスト導入を行います。そこで小さな成功体験(クイックウィン)を積み重ね、投資対効果(ROI)を測定・改善しながら、適用範囲を段階的に拡大する手法が確実です。


営業部門でのAIツールの導入に関して、詳しくはこちらの資料をご覧ください。

3. 効果測定の仕組みを構築(KPIを設定)する

導入効果を定量的・定性的に測定する仕組みを事前に設計します。


具体的には、「開発工数の〇%削減」や「通話時間の〇割短縮」、「食品ロス率の〇%改善」といった定性的KPIに加え、「従業員の業務負荷の軽減度」や「顧客満足度の向上」といった定性的KPIの両面から評価指標を設定することが望まれます。

4. セキュリティ対策と従業員教育を徹底する

主な対策として、無料AIサービスへの機密情報入力を禁止するガイドラインの策定、またはデータを学習に利用しない法人向けサービスの導入を検討します。加えて、ハルシネーション(誤情報生成)対策として、AIの生成内容は必ず人間がファクトチェックする業務フローの構築や、効果的なプロンプト作成など従業員へのAIリテラシー教育も重要です。


ハルシネーションについて詳しくは、以下の記事をご覧ください。
生成AIを効果的に使いこなすために|ハルシネーションのメカニズムと付き合い方を解説

生成AIを「戦略的パートナー」とし、企業の競争力向上へ

生成AIは、業種を問わず企業の競争力強化に貢献する強力なツールです。本記事で紹介したように、製造業のエンジニアノウハウ継承、金融業のコンタクトセンター効率化、小売業の需要予測、医療分野の診療記録作成支援など、各業界で成果を上げています。


また、今回は業種ごとの活用事例を紹介しましたが、企業における部門によっても、効果的な活用方法は異なってきます。例えば営業部門においては、人材育成と業務効率化を両立させるAI活用が、組織全体の競争力向上につながるでしょう。


営業部門におけるAI活用については、以下の記事で詳しく紹介しています。あわせてご覧ください。
営業におけるAI活用例8選|実際の活用シーンと合わせて解説

株式会社エクサは、業種や部門に応じた生成AI活用を支援しています。明確な課題設定から、適切なツール選定、スモールスタートでの効果検証、そしてセキュリティ対策とガバナンス体制の構築まで、段階的なAI導入をサポートします。提供サービス「ai with」は、RAG技術による社内ナレッジ検索やAIアバターによる実践的な研修を通じて、ハルシネーションやセキュリティ対策に配慮しながら、現場主導でAI活用を推進できる環境を提供します。貴社の業種・業務に最適なAI活用をお考えの際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

事例を「知る」から、自社で「実現する」フェーズへ
今回ご紹介した事例のような成果を自社でも実現いただくためのロードマップをご用意しました。
ぜひ、あわせてご参照ください。

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