生成AIを効果的に使いこなすために|ハルシネーションのメカニズムと付き合い方を解説

生成AIの業務活用が加速する中、AIが生成する誤情報(ハルシネーション)をどう扱い、コントロールするかが問われています。運用体制を整えてハルシネーションをコントロール下に置くことで、AIは信頼できる強力なビジネスパートナーへと進化します。


こうした取り組みはAIに限った特別なことではありません。新入社員を一人前の人材にするために業務に慣れるまで上司が適切にサポートし、徐々に自律的な判断を促していくように指導するのと同様のことで、安全かつ効果的にAIを活用するためには、適切なマネジメントが必要となります。


本ブログでは、ハルシネーションを技術とガバナンスの両面から正しくマネジメントし、AIを有効活用するための実践的なポイントを解説します。

AIのハルシネーションとは何か?

まず、AIのハルシネーションという言葉の意味と、ビジネス現場で起こりうる具体的な事象について解説します。

ハルシネーションとは、生成AIが誤った情報を、あたかも事実であるかのように生成してしまう現象を指します。

ビジネスシーンで想定される例としては、「商談履歴の要約をAIに依頼した際に、実際に発言した内容とは違った内容が追加されてしまった」、「競合分析のための調査において、存在しない企業の架空の業績データが生成された」といったものが挙げられます。


ハルシネーションには大きく分けて、次の2つのパターンがあります。

1.

事実誤認:日付、人物名、歴史的な事実、数値など、単純に事実を間違えるケース。

2.

出典・文脈の捏造:回答の根拠を求めた際に、実在しない論文名や架空のURLを挙げたり、他者の発言を捏造したりするケース。

特に後者は、もっともらしく見えるため、見抜きにくいパターンといえます。


しかし、こうした「もっともらしい誤り」は、決して生成AI特有のものではありません。人間であっても、うろ覚えの知識で話したり記憶が混同して事実と異なる発言をしたりすることは、日常的に起こります。

そのため、AIのハルシネーションを「排除すべきリスク」として捉えるのではなく、新入社員や部下への対応と同様に、「適切にマネジメントすべき対象」として捉える姿勢が重要です※1適切にAIをマネジメントすることが、AI活用の成功の鍵となります。


出典:
※1 pwc『AI hallucinations: what business leaders should know

ハルシネーションが起こるメカニズムと予防策

AIがハルシネーションを起こすメカニズムと、その予防策を解説します。


生成AIは、膨大なテキストデータから言語パターンを学習し、統計的に「次に来る確率が高い単語」を予測して文章を生成します※2。つまり、AIは人間のように事実を理解しているのではなく、正しそうに聞こえるものを予測していると考えられているのです※3

そのため、学習データに存在しないニッチな企業情報や個別案件などでは、AIが情報を推測で補完しようとし、結果として誤情報を生成してしまう可能性があることも、指摘されています※2, 4

またユーザーが、前提情報が不十分な「曖昧なプロンプト」で指示したり、AIが最新情報や社内の固有情報を学習していなかったりする場合も、ハルシネーションを引き起こす要因となることがあります。ただし、これらを要因とするハルシネーションについては、以下の手法でコントロールすることが可能です。

プロンプトエンジニアリング(具体的な指示をする)

前提情報が不足していると、AIはその特性から空白を推測で埋めようとする可能性があります。曖昧なプロンプトはハルシネーションの発生率が高まるため、効果的な対策は「明確で具体的な指示」を与えることであるとされています※5

以下の要素をプロンプトに含めることで、ハルシネーションの発生を抑制し、正確なレスポンスを引き出しやすくなります。

1.

制約(Constraints)
プロンプトの読み取りやレスポンスの生成に関する制約を指定します。例えば、「確実な情報のみを回答してください」「不明な点や情報源が特定できない場合は『不明』と回答してください」といった制約をプロンプトに含めることで、AIが推測で回答する可能性を抑制することができます。

2.

コンテキスト(Context)
AIが回答を生成するときに使用してもらいたい情報源を与えます。例えば、新入社員が業務フローを確認する際、「この社内マニュアルに基づいて回答してください」と指示し、マニュアルの内容をコピー&ペーストしてから質問すると、AIはその情報に基づいて回答できるため、存在しない情報を創作するリスクが減ります。

AIへ参照すべき情報(コンテキスト)と守るべきルール(制約)を「明確かつ具体的に」指示することで、AIは提供された情報を優先的に利用して処理します。そのためハルシネーションを抑制し、実務的に高品質な回答を安定して引き出せるようになります。

RAG(検索拡張生成)の活用

現在ハルシネーション予防策の主流技術とされるのが、RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)です。RAGとは、AI の学習データだけでなく、ユーザーが指定した外部データベースや文書を検索し、その結果を参照しながら回答を生成する技術です。

従来の生成AIが、学習済みデータのみを参照して回答を生成する状態であるのに対し、RAGを用いることで、ユーザーが指定した新たな情報を見ながら、回答することができる状態にします。


例えば、従業員が社内の規定についてAIに質問した際、従来のAIのように過去の学習データから無理やり回答を生成するのではなく、社内の最新の就業規則などを「検索(Retrieval)」し、そこで得た新しい情報に基づいて回答を「作成(Generation)」する仕組みです※6

このため、古い情報や偏った情報など、学習データの品質を原因とするハルシネーションの予防策として期待できます。


出典:
※2 AWS (Amazon Web Services) 『生成 AI とは何ですか? - 生成 AI の説明 - AWS
※3 IBM『Smarter memory could help AI stop hallucinating
※4 OpenAI『言語モデルでハルシネーションがおきる理由』(2025年9月5日)
※5 Google『プロンプト設計戦略 | Gemini API | Google AI for Developers
※6 IBM『What is RAG (Retrieval Augmented Generation)?

ハルシネーションを検出する方法

ハルシネーションの予防策を紹介してきました。続いて発生したハルシネーションを検出するための方法を解説します。

人の目によるファクトチェック・クロスチェック

最も重要かつ基本的な対策です。
AIの回答を鵜呑みにせず、特に数字、固有名詞、専門的な内容(例:法律、医療、金融など)については、必ず一次情報源(例:公式サイト、専門家の論文など)で確認します。また、例えばChatGPTとGeminiなど、異なるAIに同じ質問をして回答を比較し、内容が一致するかを確認することも有効です。
上司が部下の成果物をチェックするのと同様に、AIの生成物に対してもユーザーが最終的な責任を持ち、品質を担保するという意識が不可欠です。

AIによるハルシネーション検出

AIで検出する手法として、別のAI(ChatGPT等)に評価させる方法が手軽で有効です。別の検証用チャットに対し「レポートの数値や主張に矛盾がないか」と指示し、客観的にチェックさせます。

例えば、生成AIが作成した「市場分析レポート」にハルシネーションが含まれていないかを確認するために、普段使用しているチャットとは別の検証用チャットに対し、「レポートの数値や主張が、参照資料と矛盾していないかチェックしてください」と指示を出します。


この手法は「LLM as a Judge(AIを評価者として活用する手法)」と呼ばれ、従来のシステム評価では難しかった文脈の把握と、人手による確認で課題となっていたコスト、この双方を同時に解決できるアプローチです。
AIが文脈を理解して評価するため、低コストかつ高精度なチェックが可能となります※7。人間が目視で行っていたレビュー工程をAIに代替させ、効率化と品質向上を同時に実現します。

最新のハルシネーション検出・自己修正の動向

チャットによる相互チェックは手軽ですが、膨大な文書を都度入力する運用は非効率で、組織的な限界があります。また、目視確認ではヒューマンエラーや知識差で見落とす可能性もあり、正確性が求められるビジネス環境では、より堅牢な品質管理を実現する新たな技術への期待が高まっています。

そこで近年注目されているのが、こうした確認作業をツールで自動化し、検証プロセスを補強するアプローチです。AIが作成した文章に対し、その根拠となる社内規定や信頼できる外部データを自動的に照らし合わせ、裏付けが取れない箇所を洗い出す技術の実用化が進んでいます。これにより、ハルシネーションの検出による可視化や、根拠箇所のハイライト表示が可能となります※8


実際にビジネスシーンでも活用されている事例として、富士通の「ハルシネーション検出技術」※9は生成された情報の信頼性をスコア化して可視化し、NTTデータが進める「回答根拠の可視化技術」※10は回答の根拠となったデータソースを明示することで、ユーザーが検証しやすい仕組みを提供しています。

このようにAIによる評価は単にハルシネーションを発見するだけでなく、人間と同等か、あるいはそれ以上の精度で高速のレビューを行うことができるパートナーになりつつあります。


出典:
※7 ARISE analytics『LLM評価の現実と対策:LLM as a Judge実践で学んだ課題解決法
※8 Expert Systems with Applications『HaluCheck: Explainable and verifiable automation for detecting hallucinations in LLM responses』(2025年5月5日)
※9 富士通『AIの間違いを見抜く技術~富士通のAIハルシネーション(幻覚)剣術技術~
※10 NTTデータ『LLMとナレッジグラフが切り拓く、情報検索の新時代

AIを安全に活用するためのガバナンス

組織全体でAIを安全に活用するためには、RAGやAI自身のハルシネーション検出のような、技術面からのアプローチだけでなく、運用面からのアプローチ、つまりガバナンスの構築も重要です。


総務省の「令和7年版 情報通信白書」※11によれば、「生成AIの活用方針を定めている」日本企業は49.7%にとどまり、米国(84.8%)やドイツ(76.4%)と比較して大きく遅れをとっています。日本企業において、AI利用におけるガバナンスの構築が進んでいない現状がうかがえます。

現代は企業競争力強化のためにAI活用は必須とされており、多くの日本企業にとってAIガバナンスの確立は喫緊の課題でもあります※12


しかし、AI ガバナンスの構築は、特別な取り組みではありません。企業が従業員の業務品質を管理するために行ってきた「業務ルールの策定」「教育・研修の実施」「成果物のチェック体制」といったマネジメント手法と本質的に同じであり、「ルールを策定し、遵守させる」ことが基本となります。なお、AI「ガバナンス」というと、「リスク管理」の側面のみ着目しがちですが、あくまでも適切にリスク管理をしたうえで、最大限に「有効活用」することを目的※13とするものです。ここでは、有効活用するためのルール策定も含めて、ガバナンス構築への取り組みを紹介します。

AIの使いどころを見極める

すべての業務にAIを適用するのではなく、AIが得意な領域と苦手な領域を見極め、効率的にAIを利用することが肝要です。

アイデア出しやブレインストーミング、文章の下書き作成などはAIが得意とする分野です。一方、最新の法令解釈や確定的な数値データの提供など、正確性が求められるものは苦手な領域です。業務特性に応じて使い分けることで、パフォーマンスを最大化できます。
なお上述したAIの苦手な領域は、RAG技術を導入することで、ある程度の対応が可能になります。

用途に応じてAIモデルを使い分ける

業務内容に応じて、適切なAIモデルを選択することも重要です。

例えば、「複雑な契約書の論点整理」や「多角的な市場分析」といった高度な推論が必要な業務には高性能モデル、「定型メールの自動返信」や「簡単な FAQ 対応」といった定型的な業務には軽量モデルを使い分けるといった工夫で、コストと精度のバランスを最適化できます。

また、社内のルールに基づいた回答が必要な業務では、RAG技術を導入することで、最新の社内ルールやマニュアルに基づいた回答が可能になります。これにより、汎用的なAIを自社の業務に合ったツールとして活用しやすくなると同時に、ハルシネーションの低減にもつながります。

運用ルールを策定する

AIを安全に活用するには、ハルシネーションの発生だけでなく、情報漏洩や著作権侵害、コンプライアンス違反など、想定されるさまざまなリスクの可能性を念頭に置いておく必要があります。それらのリスクをコントロールするためには、AIを業務に利用する際の手続きや約束事など、運用ルールを確立することが大切です。

盛り込むべき内容は企業により異なりますが、例として以下が挙げられます。

  • 「機密情報や個人情報を扱う場合は、機密性が確保された法人専用環境を整備して安全にAIを活用する」

  • 「AIが生成した文章を顧客向け資料に利用する際は、必ず上長または関連部署の承認プロセスを経る」

  • 「外部に発信する際は、AIを利用したことを明示する」

  • 「インシデントが発生した場合は速やかに報告する」

「AI利用ガイドライン」の作成

AI活用に関しての運用ルールを策定するだけでは十分とはいえず、実行されてはじめてその効果を発揮します。従業員が現場で迷うことなく実行できるよう、それらを体系的に整理した「AI利用ガイドライン」作成し、いつでも従業員が確認できるようにすることも重要です。

ガイドラインに盛り込む内容も企業により異なってきますが、AIの利用が許可される業務範囲や禁止事項、情報の取り扱いに関する注意点、インシデント発生時の対応などを盛り込むのが一般的です。

完成したガイドラインは全社で共有し、関係する従業員へ周知徹底します。さらに、定期的な見直しや運用状況のモニタリングを行うことで、組織全体での安全かつ効果的なAI活用を継続的に推進していきます。


技術的な対策(RAG等)と運用(ガバナンス)を具体的にどう組み合わせて自社に定着させるか。
その全体像を整理したガイドブックをこちらからご覧いただけます。


出典:
※11 総務省『令和7年版 情報通信白書|企業におけるAI利用の現状』(2025年7月公表)
※12 EY『AIが進する社会において、企業に求められるガバナンス対応』(2025年10月29日公表)
※13 総務省『AI事業者ガイドライン』(2025年3月28日)

AIを効果的に活用するには「技術」と「運用」の両立が鍵

AIのハルシネーションをコントロールするのに有効な技術は急速に進化しています。本コラムで解説したように、プロンプトの工夫やRAG技術の導入、加えてAI活用のガバナンスを確立することで、安全かつ効果的にAIを活用することができます。

特に技術面では、導入するソリューションが、商品マニュアルや規定集など「信頼できる社内データ」のみを根拠として回答を生成するRAGのような仕組みを備えているかを確認することです。加えて、 RAGで参照する社内データは常に最新化するといった品質管理も重要となります。


株式会社エクサは、安全なAI活用の前提となるデータやガバナンス整備のご支援はもちろん、お客様の目的に対して、経験とノウハウを活かした提案を行います。

提供サービス「ai with」は、RAG技術による社内ナレッジ検索やAIアバターによる実践的な研修を通じて、ハルシネーションやセキュリティリスクに配慮しながら、現場主導でAI活用を推進できる環境を提供します。貴社の業種・業務に最適なAI活用をお考えの際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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