社内のナレッジがなかなかうまくいかないと、と悩む企業経営者やマネジメントは少なくありません。特に知の継承を受ける立場の若手社員との協働もうまくいかないとの声もよくききます。
ここでは、若手エンジニアが中心となってナレッジ共有をリードしていくヒントをご紹介します。
若手エンジニアがナレッジ共有をリードできるのか?
ナレッジを一番欲しているのは、どの会社においても、新入社員を含めた若手であり、或いは転籍者や部門異動者ですよね。特に私たちのようなIT企業では、コロナ禍で在宅勤務が主体となっており、デジタルでナレッジを共有することの重要性は増してきています。そういった意味では、学びたい人達が率先して動き、その仕組み仕掛けを考える、それを教える諸先輩が期待に応えていく、これが一番自然なことです。うまく回る・早く実現できるコツそのものです。
会社全体の動きにすることを前提に進める
ありがちなのが、特定の部門で草の根的に限定的に始めることです。これはこれで重要なことで早期着手には有効なやり方ですが、共有というワードからわかるように多くの社員が参加し共有してこそ価値が高まるものなので、部門横断的に若手が集い、そのムーブメントを創り上げていくことが私は大切なことではないかと考えます。
弊社ではCS改善活動の一環として部門を超え自発的に発足しましたが、若手主体で取り組むプログラムやタスクなど企業では様々な形で推進されていると思いますので、その中で醸成させていけばよいのではないでしょうか?
肝心なのは、若手社員が自発的にはじめていくことです。指示では持続的な推進力が必ず弱くなります。後でも述べますが、やり続けることで価値はどんどん高まっていくからです。
会社側は支援に徹する、成果を急がない
一方、会社側がやるべく重要なことが2つあります。
非常にシンプルです。
一つ目は「介入しない」ことです。自主性に任せ、トライ&エラーを見届けることです。ふたつ目は、「定期的にその活動に関して公の場で触れる」ことです。関心をもって見ていますよ!期待していますよ!というメッセージを発信することです。
そして活動がある段階まで到達すると彼らからもっと加速させるための要望があがってきます。その時に、しっかりと手を差し伸べてあげてください。
仮にこの活動が10年続いた場合は、20代中心ではじまったメンバーは30代の中堅リーダーとなります。彼らがより質の高い経験のあるナレッジを能動的に共有していく形となり、相当なナレッジがたまるとともにどんどん良いサイクルになっていくことになるでしょう!
推進する上でのKPIの設定に関して
ゴールイメージの策定
ここでは6つの状態をすべて掲げることは割愛させて頂きますが、1番目の定義を代表的に紹介させて頂きます。「社員一人ひとりに自分の知識、経験を公開・共有する意識がある」です。これに加え他の5つも加味し、最終的にKPIは「社員全員が投稿していること」としました。従業員が1,200人だと1,200発信/投稿されている状況です。閲覧利用するユーザー登録数ということではなく、全員が発信するところに拘りをもって推進していこうということにしたのです。IT企業としてエンジニアにGive Back活動の重要性を大切にしてきている企業文化という背景もあったかと思いますが、切磋琢磨されている状況をKPIに設定したこと自身、若手エンジニアの志があらわれていると頼もしく感じています。
簡単ではないゴールへの道のりへ
ただ、そんなに簡単にはいかないものです。5年経過した今でこそエンジニアほぼ全員がユーザー登録し閲覧するところまでは到達しましたが、まだKPIである「社員全員が投稿していること」は現在進行形です。社内で利用しているGoogle Chatや、Slackなどの情報連携は、ある意味コミュニケーションツールとして積極的に活用し且つじっくり考えていく類いのものではありませんので日常となっていますが、ナレッジを投稿することはそれなりに時間を要しますので、ゴール到達にはもう少し時間はかかると思います。まさに地道にコツコツと前進をしているといった状態です。
実は、昨年後半より地殻変動が起き始めています。前述の通り、会社は自ら介入しない、するなと申し上げましたが、若手エンジニアのタスクチームより、「投稿のランキングを始めたところ、投稿数が増えるという効果がでてきたので、是非、その上位者に対してアワードを出して欲しい」という会社への要望が具体的にあがってきました。これを受けてさっそく会社ではその要望に応え、今年度の上半期に最初のアワードを授与する全社発表を行い、さらに投稿に加速がかかっています。恐らく、アワード賞金・商品がトリガーだと思いますが、会社がその人の活動を表彰するといったことが、エンジニア魂を揺さぶったのが一番の理由かと思います。ひとつギアチェンジした瞬間かと嬉しく感じております。今からその授賞式が楽しみです。
まとめ
匠の継承、知の継承、それを支えるAIというキーワードがここ数年いろんなところで話題にあがってきました。デジタル技術を駆使した仕組み(デジタルプラットフォーム)も重要ですが、ナレッジを保有している社員が企業の大切な知的財産として継承していく意識を持ち具体的に共有する行為をしていくこと、また、引き継ぐ社員がこのサイクルをリードしていき、未来に向けた企業文化を創り上げることが一番大切なのではないかと思います。
ツールや技術はどんどん進歩していきます。その時代に最適なものを利用していけばよいのであり、一方、文化は一日にしてならずです。今回のこのコラムが皆さんの一助になれば幸いです。
自社での取り組み状況を整理したものがホームページにて簡単ではありますが紹介しておりますので、ご高覧いただければと思います。
未来への挑戦:技術情報共有システム~Knowledge~のご紹介
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